論点をすり替えて相手を言いくるめてしまう“詭弁”。SNSなどが普及してからは、議論の場で問題視される機会が多くなってきました。実は最近も、有名人のつぶやきから“ある論法”に注目が集まったようで…。
宇多田ヒカルさんの疑問がネットで大きな話題に!
事の発端は、宇多田ヒカルさんがつぶやいた「誰かがメディアでした話から別の誰かが一言だけ抜き取って、文脈から切り離してネットで持ち出して、そこから少数派を除いた多くの人がソースの文脈を参照しようとしないまま自己投影に基づいた批判や擁護(つまり妄想)のたたき台にして論争が繰り広げられる現象にまだ名前ないのかな」という疑問。
このツイートは5万件近い「リツイート」と13万件以上の「いいね」がつき、大きな話題を巻き起こしました。“真実を捻じ曲げる”とまで言ってしまうといささか強引ですが、宇多田さんと同じような疑問を抱えていた人は多いよう。
ネット上には、「今の世の中はこの現象が溢れてる。まさに“木を見て森を見ず”といった状況」「印象操作とか言葉狩りのことだよね? SNSの普及から歯止めがきかなくなった」「なぜか今まで当たり前のようにまかり通っていた不条理。宇多田さんほど影響力のある人がツッコんでくれて嬉しい」などの声が続出しています。
宇多田さんも感心していた“ストローマン”論法とは?
宇多田さんのツイートにも様々な意見が寄せられ、リプライ欄では「空中戦」「又聞きエボリューション」「集団被害妄想」「切り取りデマゴーグ」などユニークな表現が溢れます。しかしその中で最も注目を集めたのは、「“ストローマン”論法のことじゃないですかね?」というコメント。
ストローマンとは、意見を正しく引用しなかったり歪められた内容に基づいて反論するという誤った論法のこと。ちなみに日本語では、“藁人形論法”とも言います。まさに宇多田さんが指摘した現象にピッタリの言葉ですよね。
これには彼女も、「おお、ストローマン! まさにこれ! ウィキで調べて勉強になりました」と返信。さらに「ストローマン、または藁人形論法という言葉を初めて知ってスッキリした!」と新しく投稿していました。
宇多田さん以外にも、今回初めてストローマンという言葉を知った人は少なくありません。「そんな言葉があったのか。今後流行ってくれないかな」「最近はストローマン論法で語られることが本当に多い気がする」「『それはストローマン論法ですよね?』って誰かにツッコんでみたい!」「詳しく調べてみたけど、ストローマン論法って意図的にやってたらタチが悪すぎるでしょ」などの声が上がっています。
今年誕生した“ご飯論法”も話題を席巻!
今月発表された「2018ユーキャン新語・流行語大賞」には、“ご飯論法”という言葉がトップ10入りを果たしました。これは「朝ごはんは食べなかったんですか?」といった質問に対し、「ご飯は食べていません(パンは食べました)」と論点をずらして答える論法。朝食について問われたのに、あたかもご飯(白米)について問われているように周りを錯覚させます。
清々しいほどの屁理屈に思えますが、どことなくストローマン論法と似た手法ですよね。ここ最近話題になった2つの論法に対し、「ネットが普及してからは多かれ少なかれ誰もが詭弁を言うようになった」「SNSなんて、ご飯論法とストローマン論法のオンパレードだよ。今にはじまったことじゃないでしょ」「ある意味日本人らしいのでは?」「結局のところ、論法についてツッコんでも本質的な解決には繋がらない。話題のポイントがちょっとズレてるよね」と様々な意見が。
日本語の難しさを改めて実感させられます。巧みな論法で言いくるめられないよう、気をつけたいですね。
文/河井奈津