赤ちゃんが生まれてしばらくは、授乳と寝かしつけに必死の毎日。でも半年、1年も経つと、職場復帰をめざすママも増え、自分の身体のことにも少しずつ目がいくようになります。


そこで気になるのが、産後の月経再開のタイミング。いつになったら、もとの月経サイクルに戻るのか、不安を感じているママも多いのではないでしょうか。

shutterstock_1128373250

産婦人科医の八田真理子先生によると、


「授乳中は、プロラクチンというホルモンが出て、排卵が抑制されます。だから、本来は生理がこないもの。でも栄養状態がよくなり、食生活が欧米化した現在では、授乳中から生理が再開する女性も増えています。 ただし生理不順になりやすく、2週間おきだったり、逆に23か月なかったりで、“無排卵”のことが多いのが特徴です。またそのような状況でも、たまに排卵が起きることがあり、すぐに妊娠を考えていない人は注意が必要。きちんと避妊し、基礎体温をつけて排卵の有無を確認すると安心です。わからないことがあれば、産婦人科を受診してみましょう」 なお、生理再開の時期は人によって異なり、明確なめやすはないのだそう。早く断乳すれば生理の再開も早く、23歳まで授乳していれば、生理もそのぶん遅れます。年齢が若いほど女性ホルモンの分泌量が多く、生理が早く再開しやすいという傾向も。“いつになったら戻るのか”に、あまり過敏になる必要はないようです。

生理再開後に、PMSの症状が出ることも!

授乳期間が終わり、排卵をともなう生理が再開すると、PMS(月経前症候群)に悩まされることもあります。生理の310日前くらいに、腹痛や胸のハリ、イライラ、気分の落ち込みなどの不快症状が起こるもので、生理が始まると、症状がスッと消えるのが特徴。PMSに悩まされたことがある女性は約8割ともいわれ、女性にとっては身近な不調です。

shutterstock_1181373580
PMSの原因そのものは明確になっていませんが、八田先生のお話によると、 「排卵後に出る黄体ホルモン(プロゲステロン)が悪さをするといわれています。黄体ホルモンと連動して、脳内のセロトニンが減ることもわかっています。セロトニンは“ハッピーホルモン”ともよばれる神経伝達物質で、これが減ると、気分が落ち込みやすいんです」 PMSの改善には薬もありますが、日常生活の工夫でラクになることもあります。「食生活」「睡眠」「運動」の3つに、まずは気を配ってみましょう。食事ではビタミンB群、カルシウムが豊富な食品がおすすめ。身体がエネルギーを欲しているので、炭水化物も制限せずに、しっかりとりましょう。 生理前に眠くなるのも、身体の本能なので、睡眠時間は十分に確保して。ウォーキングなどの有酸素運動も、自律神経を整え、PMSの症状を軽くしてくれます。できる範囲で身体を動かすようにしてください。

PMSは女性の本能。ネガティブに捉えすぎないで

PMSをつらく感じる女性は多いのですが、あまり後ろ向きに捉えないでほしいと、八田先生は指摘します。 「体内に新しい命が宿っているかもしれない生理前の時期に、外界をシャットアウトし、小さな命を守ろうとするのは、動物としての原始的な反応だと思うんです。あって当たり前の反応だし、母性そのものだといってもいい。

私自身もPMS症状がありました。でも、こんなときこそ、逆に想像力が豊かになったり、自分のことに集中できるというプラスの面もあると思うんです。だから、あまりネガティブに考えず、そういう時期なのだと理解して、過ごしてほしいなと思います」

PMSのことを身近な人に伝えておくのも、ひとつの方法。「生理前だから、イライラしているんだ」と理解してもらえれば、お互いに気がラクになり、関係が悪化するのも防げます。
shutterstock_532203136

症状が強く、日常生活に支障が出るようなら、迷わず専門家に相談を。漢方薬や抗うつ薬、サプリメントなどの力を借りてもよいでしょう。次の妊娠をすぐに希望していないなら、低用量ピルも試す価値があります。 なお、PMS症状がひどくなると、周囲の人に攻撃的な物言いをしてしまったり、職場でも周囲とうまくいかず、孤立感からミスをくり返してしまうことも。このような状態はPMDD(月経前不快気分障害)といい、精神科か心療内科での治療が必要です。 子育てに仕事にと、多忙な日々を乗り切るためにも、ひとりで悩まず、専門家に相談するようにしましょう。

shutterstock_388560322 (1)

取材協力/八田真理子先生(聖順会ジュノ・ヴェスタクリニック八田 院長)
1990年聖マリアンナ医科大学卒業。順天堂大学、千葉大学、松戸市立病院産婦人科勤務を経て、1998年より現職。思春期の女の子への性教育から、成人女性の不妊治療、更年期治療まで、幅広い年代の女性の幸せを願い、治療にあたっている。 

取材・文 川西雅子