今回は大都市圏で多く見られる複々線を取り上げます。複々線には鉄道ファンでも楽しめるポイントがいろいろ詰まっています。子どもはもちろん、大人の人も複々線の持つ魅力にとりつかれるはず。さっそくチェックしていきましょう。

そもそも複々線とはなにか

複線は2つの線路があるわけですから、複々線は4つの線路が敷かれていることになります。複々線において4つの線路は並行しており、上り下りそれぞれ2線ずつ使います。

 

「複線ならわかるけど、2線をどのように使うの」と疑問に思うはず。多くの複々線では、急行用と普通用に分けられています。文章にすると少しわかりにくいので、下の京阪の写真をご覧ください。

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京阪の場合、基本的に内側の線路には特急や急行などの優等列車、外側の線路には普通列車が走ります。複々線には多くのメリットがあります。まず、優等列車は普通列車が走らないため、思いっきりスピードを出すことが可能になります。ざっくり書くならば、内側の線路が「高速道路」、外側の線路が「一般道」だと思ってください。複々線を採用すると、優等列車を中心に大幅な時間短縮につながります。

 

2つ目は列車の本数を増やせることです。これは単純に線路が1線から2線になるわけですから、容量が大きくなる、と考えてください。まあ、スマートフォンの料金プランが大容量になる、感覚に近いですね。

 

この2つのメリットだけでも、鉄道会社にとっては大助かり!そのため、超混雑路線を持つ鉄道会社は複々線にしたがるわけです。ところが、複線から複々線にするのは単純な話ではありません。複々線に広げるにはそれなりのスペースが必要。そのため、地道な用地買収から話がはじまるので、全体の工事は長期間にわたる場合が多いです。都会で「複々線が完成した」というニュースを聞いたら、「相当、鉄道会社は苦労したのだろうな」と思ってください。

複々線にもいくつか種類がある

実は一言で「複々線」と言ってもいくつか種類があります。まず、ザックリと「方向別複々線」と「線路別複々線」に分けられます。とは言っても、言葉だけではわけがわからないはず。下の図をご覧ください。

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方向別複々線(青上り、赤下り) 
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線路別複々線(青上り、赤下り)

方向別複々線は隣り合う列車が同じ方向に向かって走ります。そのため、ホーム上で優等列車と普通列車との間で簡単に相互乗り換えができます。一方、線路別複々線は隣り合う列車は上下逆になって走ります。この場合、優等列車と普通列車との間で乗り換える際はいちいち別のホームに移動しなければなりません。利用客の利便性を考えると方向別複々線のほうが圧倒的に便利です。方向別複々線、線路別複々線を採用している主な路線は以下のとおりです。

 

方向別複々線

JR東日本:田端~品川
JR西日本:草津~新長田
東武鉄道:とうきょうスカイツリー・押上~曳舟
     北千住~北越谷
     和光市~志木
西武鉄道:練馬~石神井公園
東京急行電鉄:田園調布~日吉、二子玉川~溝の口
小田急電鉄:代々木上原~登戸
京阪電気鉄道:寝屋川信号所~天満橋

 

線路別複々線 

JR東日本:東京~大船
     御茶ノ水~三鷹
     北千住~取手
     両国~千葉
JR西日本:新長田~西明石

 

このように見ていくと、関東大手私鉄は方向別複々線を採用しています。一方、JR東日本の多くの複々線は線路別複々線です。実は旧国鉄時代後期に複々線化された路線の多くは線路別複々線を採用しています。線路別複々線は方向別複々線と比べ線路移設にかかるコストを軽減することができます。

 

また、方向別複々線において優等列車が走る線路を外側線にするか、内側線にするか、これも会社によって異なります。たとえば、JR西日本の複々線区間では新快速は外側線を走ります。一方、先ほど書いたとおり、京阪では特急は内側線を走ります。複々線区間に乗り慣れている人はご注意を。日頃の路線が全国共通ではありません。

個人的な複々線の楽しみ方

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プラレールで遊んでいた子どもが複々線に興味を持ったら、方向別複々線を採用している路線に乗りに行きましょう。最初は特急などの優等列車をおすすめします。なぜなら、方向別複々線を走る優等列車ですと、普通列車を追い抜く迫力満点のシーンが展開されます。思わず、自分の乗っている列車がレースに参加しているような気分になるのでは。優等列車から降りたら、ホームの最後尾まで行ってみましょう。運がよければ優等列車と普通列車が同時に駅に進入するシーンが見られるかもしれません。

 

また、複々線ならではのイレギュラーな列車に乗ることも楽しいです。先ほども書いたとおり、基本的に京阪本線の複々線は内側線に優等列車、外側線に普通列車が走ります。しかし、一部の区間急行は外側線を走ります。京阪の複々線区間に乗り慣れたら、区間急行のようなレア列車に乗ると楽しいですよ。

 

逆にJR西日本の東海道・山陽本線の一部の快速は外側線を走り、須磨駅、垂水駅、舞子駅には止まりません。 秋の連休や年末年始の休暇で鉄道を利用する際は、子供と一緒に「複々線」に注目してみてください!

 

取材・文・撮影/新田浩之