仕事の時の常識なんて、子育てには1ミリも通用しない


 

夫婦はどちらも命を育てる責任者

 

──育児のフェーズが乳児から幼児に変化し、今後は就学という階段も視界に入ってきたかと思いますが、子どもの年齢の変化を実感することはありますか?

 

先日、子どもが虫を踏んでしまった話題をブログに書いたんですが、それには「うちと同じです」というコメントをたくさん頂きました。息子は昆虫好きなんですが、ある日、てんとう虫を踏んで、動かなくしてしまったんです。「あれ? 今踏んだよね?」と聞いたら、「踏んでない、動かなくなった」と言って泣き出し、後ずさりを始めて。目の前のものが動かなくなったことが急に怖くなったんでしょうね。そりゃ、僕も小学生の頃に蟻を踏んづけたことはありますよ。だけど親である今の自分は、「それはやってはいけないことだ」と言わないといけない。今後、子育てもモラルやメンタルの教育に心を割くことになるんだろうなと思いますね。

鈴木おさむ

 

──公立小学校に通わせるために学校近くに引っ越したという話題もネット上で注目を集めていました。

 

あれは大きなリアクションを頂きましたね。一番の理由は、地震が怖いから。それを言うと、わりとみんな「?」という感じだったんですが、先日の大阪地震はまさに通学の時間に起きたじゃないですか。そんな時間に、自分の子どもがひとりで電車に乗っていたらと考えると、気が気じゃないですし、親として出来る限りの危機管理はやはりやってあげたいんですよ。日本に住んでいる限り、地震はいつ起きても不思議はない…そう考えています。

 

──世の共働き家庭では、「緊急時のお迎え要請はお母さんが対応」のような暗黙のルールがママの首を絞めていますが、鈴木家はお互いの仕事をどのように調整していますか?

 

日々、話し合いです。二人ともが命を育てる責任者ですから、「この日の会議は外せない」とか「一旦帰宅してお迎えする」とか、何週間も前から二人の予定をすり合わせ、スケジュールを常に組み直しています。それでも、どうしても二人とも予定がつかないときは、近所のご家族にお願いしたりもしていますね。行かせたい小学校の近くに構えた新居は、同じような考えを持つ年次の近い子どもや同じ保育園に通う子を持つご家庭も多く、地元の助け合いが出来ていることにはすごく感謝しています。まあ、延長保育をお願いした日は1815分にお煎餅が出るのを子どもも楽しみにしていて、お迎えに行くとまた嬉しそうに煎餅を食べてたりしてるんですけどね()

鈴木おさむ

 

子どもはお父さんが頑張る姿をしっかり見ている

 

──ご家庭での鈴木さんの家事分担はどのようになってますか?

 

掃除と洗濯は妻自身にこだわりがあるので、基本的に食事作りが僕の仕事でした。夜中に飲んで帰って来ても、深夜3時からカボチャの煮物を作るのも全然苦じゃないし、寝る前に火を消せば朝になるといい感じに味が染みていたりするんですよね。ただ自分も仕事が立て込んで食事を作れなくなったりすると、それで夫婦が揉めるというよりは、「子どもに見向きされなくなっちゃうよ」と言われるのが一番効き目を感じます。男って、すぐに油断する生き物なので…。

 

──それを言われると、働き方も考え直さざるを得ない?

 

そうですね。3歳になってみると、息子と二人で遊びに行くとやはり楽しさを感じるのと同時に、また新たな発見もあります。この間も池袋のサンシャイン水族館に行ったんですが、チケットを買うだけで一時間も並んで、その間息子をずっと抱っこして腰が爆発しそうになったり、同じ館内の餃子スタジアムに入っても、親子二人だとどれほど席を確保するのが大変なのかも思い知らされました。こういうときって、仕事の常識なんて1ミリも通用しない。だけどその経験がいい。それに子どもは、お父さんが四苦八苦している姿を意外とちゃんと見てる気がするんですよね。                                                           (つづく)

  

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鈴木おさむ

鈴木おさむ

1972年生まれ、千葉県出身。高校時代に放送作家を志し、19歳で放送作家デビュー。バラエティーを中心に多くのヒット番組の構成を担当するとともに、映画・ドラマの脚本や舞台の作演出、小説の執筆等さまざまなジャンルで活躍。200210月には、交際期間0日で森三中 大島美幸さんと結婚。「『いい夫婦の日』パートナー・オブ・ザ・イヤー 2009」「第9回ペアレンティングアワード カップル部門」を受賞。『ママにはなれないパパたちへ』(マガジンハウス刊)が好評発売中。

 

取材・文/井上佳子 撮影/藤沢大祐