監督もプロ棋士を目指していた一人

 

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(C)2018「泣き虫しょったんの奇跡」製作委員会 (C)瀬川晶司/講談社

 

将棋映画に欠かせないのは、緊張感あふれる対局シーンです。将棋を指す手つき、駒を打つ音、ピンと張り詰めた空気感にグッと引き込まれます。実はメガホンを取った豊田利晃監督自身も、奨励会に所属しプロ棋士を目指していたという経歴の持ち主で、対局シーンには特にこだわりがあったそうです。対局シーンだけでなく、物語にリアルを感じるのは、プロ棋士になることを諦めた監督自身の経験が活かされているからかもしれません。

 

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(C)2018「泣き虫しょったんの奇跡」製作委員会 (C)瀬川晶司/講談社

 

一度は諦めた夢を再び追いかけ、プロ棋士となる。結果的にはサクセスストーリーですが、辿ってきた道は平坦ではありません。だからこそ、「負ける」シーンがなんども描かれているのが印象的です。将棋では、どんなに強いプロ棋士であっても、勝負に負けた時には「負けました」と頭を下げて“負け”を認めなければなりません。

 

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(C)2018「泣き虫しょったんの奇跡」製作委員会 (C)瀬川晶司/講談社

 

負けたらそこで終わり!とならないのも将棋の魅力。負けは素直に認め、負けた理由を検証する。それが次の「勝ち」へと繋がっていくのです。負けても大丈夫、負けることでまた強くなれる。その積み重ねが、強いプロ棋士を育てているのかもしれません。

 

負けることは決して楽しいことではありません。しかし、負けても諦めない気持ちがしょったんに奇跡をもたらしたのです。ちょっと遠回りしたけど夢を叶えたしょったんの物語。飄々としたイメージの松田龍平の“泣き”のシーンにも注目してください。

 

文/タナカシノブ