都市部の列車に乗っていると、子供が親に「快速と急行はどちらが速いの」と質問する場面を見かけます。実際、どちらが速いのでしょうか。そもそも、日本にはどれだけの種別があるのでしょうか。今回は身近にある列車種別で遊んでみたいと思います。遊びながら、ちょっとした漢字の練習にもなりますよ。
日本にはどれだけの種別があるの?
そもそも「種別」とは特急や急行といった停車駅をベースに列車を分類したものを指します。それでは、日本にはどれだけの種別があるのでしょうか。種別が多い路線を中心に書き出してみました。
西武池袋線
特急、S-TRAIN、快速急行、急行、通勤急行、快速、通勤準急、準急、普通
京成本線
スカイライナー、快速特急、アクセス特急、特急、通勤特急、快速、普通
京王線
京王ライナー、特急、準特急、急行、区間急行、快速、普通
小田急小田原線
特急、快速急行、通勤急行、急行、通勤準急、準急、普通
名古屋鉄道名古屋本線
ミュースカイ、快速特急、特急、快速急行、急行、準急、普通
京阪本線
ライナー、快速特急、特急、快速急行、通勤快急、急行、深夜急行、準急、通勤準急、区間急行、普通
阪急京都線
快速特急、特急、通勤特急、快速急行、快速、準急、普通
阪神本線
直通特急、特急、区間特急、快速急行、急行、区間急行、普通
いかがでしょうか、思ったよりも多いでしょうか。この中で列車種別が多いのは京阪本線の11種類となっています。京阪本線では停車駅が1駅異なるだけで種別を変えています。いっぽう、小田急小田原線のように、時間帯により1駅異なっても、同じ種別で突き通しているケースもあります(急行の一部は経堂駅通過)。
このように見ていくと、会社ごとの種別に対する考え方がわかって、おもしろいですね。以前は「通勤○○」は関東、「区間○○」は関西に多かったですが、現在は地域に関係なく使われています。
結局、「快速」と「急行」はどちらが速いの?
それではタイトルの問題を見ていきましょう。先に答えを書くと「会社によって違う」が正解になります。まず、「急行」が「快速」よりも速い例を書き出します。
急行>快速
京王線
急行停車駅:笹塚、明大前、桜上水、千歳烏山、つつじヶ丘、調布、東府中、府中、分倍河原、聖蹟桜ヶ丘、高旗不動、北野 快速停車駅:笹塚、明大前、下高井戸、桜上水、八幡山、千歳烏山、仙川、つつじヶ丘、調布からの各駅
西武池袋線
急行:石神井公園、ひばりヶ丘、所沢からの各駅 快速:練馬、石神井公園、ひばりヶ丘からの各駅
このように見ると、確かに急行が快速よりも速いですが、停車駅は似ているように感じられます。次に快速が急行よりも速いケースを見ていきましょう。
快速>急行
神戸電鉄粟生線
快速:湊川、鈴蘭台、鈴蘭台西口、西鈴蘭台、押部谷からの各駅 急行:湊川、鈴蘭台、鈴蘭台西口、西鈴蘭台、木幡からの各駅
全国的に見ると、急行>快速が多いです。また、近年は混乱を避ける意味か、快速と急行が重複しないケースが見られます。たとえば、阪急京都線は「快速急行」と「快速」があるにも関わらず、急行は運転されていません。くれぐれも、初めて乗る路線は鉄道会社のホームページで種別を確認することを忘れずに。
「普通」と「各停」は違う?
普段の生活において「普通」と「各停」を厳密に区別している方は少ないと思います。ところが、全国には「普通」と「各停」を厳密に区別しないと大変な路線があります。それが大阪府と和歌山県を結ぶ南海本線と南海高野線です。南海本線はなんば駅から和歌山市駅まで、高野線はなんばから極楽橋駅(高野山)まで走りますが、なんば駅~岸里玉出駅間は並走します。
南海本線は「普通」ですが、高野線は「各停」を名乗ります。実は高野線の「各停」は今宮戎駅と萩ノ茶屋駅に止まりますが、南海本線の「普通」は両駅には止まりません。なぜなら、今宮戎駅と萩ノ茶屋駅には南海線のホームがないからです。この両駅に行く際は「普通」と「各停」に気をつけることを忘れずに!
全国ここだけしかない!オリジナル種別
全国にはここだけしかないオリジナル種別があります。特別料金不要のオリジナル種別ですと、関東では京王の「準特急」が代表的ですね。いっぽう、関西私鉄にはオリジナル種別がいくつかあります。少しだけ書き出してみましょう。なお、オンシーズンのみ運行される臨時列車は除きます。
京阪:通勤快急、深夜急行 阪神:直通特急 山陽:S特急 神戸電鉄:特快速
京阪の深夜急行は平日淀屋橋駅発樟葉行きの1日1本のみ。急行が停車する守口市駅、枚方公園駅には止まりません。阪神の直通特急は(大阪)梅田から神戸高速鉄道、山陽電気鉄道に乗り入れ、姫路まで走ります。「姫路まで直通運転するよ」という意味合いから「直通特急」と名乗っているわけですね。
この中で最も目立つのは山陽電気鉄道のS特急ではないでしょうか。「S特急」の「S」には「Serviceをお客さまにお届けする特急」という意味が込められています。神戸電鉄の特快速は神戸電鉄線内で最も速い種別。そのかわり、神戸電鉄では特急は運行されていません。
いかがでしたか。このように見ると、種別は奥が深く、いろいろと遊べます。子供と路線図を見ながら、いろいろ話すのもおもしろいかもしれません。
取材・文・撮影/新田浩之