コロナ入院を経て、「好きなことをして一度きりの人生を生きたい」と一大決心し、芸人に転身したCRAZY COCOさん。無名ながらエントリーした「女芸人No.1決定戦 THE W 2021」では準決勝に進出しました。初舞台での出来事や、ネタにも影響を与えているというCA時代のお話を伺いました。
「フライトデビューに比べたら…」初舞台の様子
──芸人としての初舞台、「女芸人No.1決定戦 THE W 2021」はいかがでしたか。
CRAZY COCOさん:
緊張しなかったと言ったら嘘になりますが、CA時代に訓練が終わってフライトデビューした時の緊張感に比べたら、なんともなかったと思います。
あの時は、周りのお客さんも知らない人で、私も英語で話さなくてはならなくて。芸人としては日本語でネタをしているし、会場にはお笑い好きの方が見に来てくれている。実際に会場でネタを披露する2回戦では、普段友達を笑わせている感じでいこうと思いました。
──余裕が伺えますね。
CRAZY COCOさん:
2回戦はそうだったのですが、でも準決勝では様子が変わりました。周りにはテレビで見ている芸人さんもたくさんいましたし、私はピン芸人なのですが、コンビやトリオの方も多くて。
会場は東京の「新宿ルミネtheよしもと」でした。ここでネタをするとなると緊張感がありました。
2日間の日程で行われたのですが、1日目にはピンマイクが外れるトラブルに焦ってしまったり、2回戦でウケたところがウケなかったりして、なんか違うと思ってから棒読みになってしまい…。完全に雰囲気に飲まれました。
2日目は、泣いても笑ってもこれで最後だと思って、力を出し切れた感じはあります。
──準決勝まで進んだとのことですが、終わってみてどう思いましたか。
CRAZY COCOさん:
燃え尽きたわけではないですが、この楽しかった2か月が終わっちゃうと思ってなんだか寂しかったです。
憧れの吉本興業からのスカウト
──今は吉本興業に所属していると伺いました。
CRAZY COCOさん:
NSC(吉本興業が設立した養成所)には通わず、所属させてもらっています。実は2回スカウトされていまして、「The W 2021」準決勝の1日目が終わってすぐ、今のマネージャーから名刺をもらいました。
そこでは返事をしていなかったのですが、1か月ほど経って知らない番号から電話がかかってきたんです。番組関係の方から「準決勝で話題に上がって、吉本興業の方から会いたいと連絡が来ています」という内容でした。
「すでに吉本の〜さん(今のマネージャー)から名刺をもらっています」と言ったら、「彼はすでに目をつけていたのか。でも上層部の方が直接会いたいそうなので来てくれませんか」と。
──2回もアプローチされたわけですね。
CRAZY COCOさん:
小学生のとき、山田花子さんが吉本新喜劇で人気があって、友達からは「こんなおもろいなら、山田花子みたいに吉本に入ったらええねん」と言われていました。
大阪で吉本新喜劇を見て育って、所属するなら吉本興業と思っていたので、話をいただいたときには「キター!」と思いました。
声をかけていただいて感謝しているので、行動で返していきたいなと思っています。
―─CAのネタは、実話を元にしているのですか。
CRAZY COCOさん:
実話といえば実話なんですが、実際にCA時代に嫌な女上司がいたわけではないんです。これまでのキャリアで出会った癖がある女性というのをネタにしています。今までの芸人さんと同じネタをしたら面白みがないので、オリジナリティを出そうとCAのお局ネタを始めました。
──芸風にも反映されているエミレーツ航空のCAとして4年半働いて、得たことはなんですか。
CRAZY COCOさん:
他者を尊重できるようになったことが大きいです。日本にいたときも、目上の方や初めて会う方には尊敬の念を持って接してきましたが、海外では自分が常識と思っていたことが覆されることが多くあります。
フライトは毎回メンバーが違って、1回のフライトで大体15カ国くらいの方がいます。色々なバックグラウンドを持つ人がいる環境で働いているのだから、他者を尊重していかないとうまくいかないんです。もちろん、主張すべきところはちゃんと言うのですが、やり方が違うからといってそれは違うとは言わなくなりました。
英語ネタの原点「いい意味での適当さも必要」
──流暢な英語でのネタも披露されていますね。
CRAZY COCOさん:
大学時代、自分には他の人に就活で勝てる要素がないと思っていて、英語も好きだったので、留学したいと親に相談して1年間大学を休学してオーストラリアでホームステイしながら語学学校に通いました。
親戚に国際結婚をした方が多く、親戚がアメリカからお正月とお盆に来ていて。年齢の近いはとこがいることもあり、しっかり英語を話せたらかっこいいなと思っていました。
よく、「どうやって英語を勉強するのですか」と聞かれるので、英語学習のコンサルタントをしていた経験を活かして、アドバイス動画をYouTubeにあげたり、具体的にこうした方がいいというのもコメントで返したりもしています。
英語が使えることで人脈も広がりますし、取り入れられる情報も格段に増えます。通訳を介してもいいのですが、今ここで言ったジョークが数秒後に伝わるのでは、笑いの鮮度が落ちます。
日本人は性格的に失敗を恐れて間違えてはいけないと思いがちですが、海外の方は、「日本語めちゃめちゃ話せるよ!」と言っても実は「こんにちは」しか言えないなんてこともしょっちゅうです。いい意味での適当さが日本人にもあれば、コミュニケーションが取れるようになると思いますね。
これからなりたい芸人像
──CAと芸人、どちらが大変ですか?
CRAZY COCOさん:
体力的なこともトータルで含めるとCAの方が大変だと思います。仕事柄、時差もありますし、航空会社によっても違いますが、昼夜逆転する日もありました。疲れが取れなくて頭が回らないということもあったのですが、今は生活リズムが整っているのでそれだけでまったく違います。
一方で、ネタも自分で考えなくてはならないし、売れるかどうか確約されたものもないのですが、私はそれをしんどいと思っていなくて、何が起きるかワクワクするという方が大きいです。
──目標にしている方はいますか。
CRAZY COCOさん:
島田珠代さんです。ずっとブレずに芸をしていて、本当にかっこいいと思います。同性からも好かれていて憧れます。
どうしても出たい番組は「しゃべくり007」です。みなさんすごく楽しそうで、ゲストだけではなくみんなで笑いを作り上げている雰囲気があると思っています。それまでは禁酒すると決めていまして、この番組に出演できたらお酒を解禁します!
──どんな芸人になりたいですか。
CRAZY COCOさん:
ただおもしろいだけではなく、皆さんが何かに挑戦する時に背中を押したり、きっかけを届けたりできるような芸人になりたいです。何のバックアップもキャリアもなく芸人の世界に飛び込んだ私だからこそ発信できる、説得力のあるメッセージを届けたいです。
──これからの人生で実現したいことを教えてください。
CRAZY COCOさん:
まずは芸人として活動して、最終目標は自分の番組を持ってMCをするのが夢です。また、どんな形であれ海外進出をしたいという思いもあります。世界中に友達もいますので英語を使った芸もしたいと思っています。
それといずれは自分の家族を作りたいです。私自身がひとりっ子で寂しい思いをしたこともあって、子どもを3〜4人産みたいんです。具体的な予定は全然ないですし、相手もいないのですが(笑)。お笑いの英才教育をして楽しい家庭を築くのも叶えたいことのひとつです。
PROFILE CRAZY COCOさん
取材・文/内橋明日香 写真提供/CRAZY COCO