夫婦なんだから何でも言いたいことを言い合ったほうがいい。そういう話はよく聞きます。一方で、夫婦だからこそ親しき仲にも礼儀ありだと言う人もいます。少なくとも、相手を不快にさせたり傷つけたりするのは、決していいことではありません。

モテモテだった友人が選んだ頼りない男

「学生時代からの友人は、結婚するときから夫に対して強気だったんです。彼女は美人だし、異性からモテたんですよね。

 

でも選んだパートナーは、なんだか頼りない男性。周りはびっくりしたんですが、『彼は私のために人生すべてを捧げると言ってくれたの。だから結婚してあげたのよ』と言い放っていました(笑)」

 

そう話すのはタカミさん(40歳、仮名=以下同)です。友人であるユリさんは、学生時代から「お姫様気質」の女性。いつも自分を信奉する女友だちを従えてキャンパスを闊歩していたそうです。

 

「私は彼女の信奉者ではなかったし、いつも客観的に見ていただけですが、一度、彼女とふたりきりで話したときに、『私は嫌われるのが怖いの』と涙ぐんでいたことがあるんです。

 

両親が離婚して、親戚をたらい回しにされた時期があるらしくて。だからいつも強気でいないとバカにされる、貶められると恐怖感があったみたい。それを聞いてから、彼女の言動を納得して見ていました」

 

なんとなく気が合ったのでしょう。ふたりはそれ以降も友人関係が続きました。社会人になったユリさんは協調性も養われ、友人を大事にするようにもなりました。

 

10年前、私が結婚したときもユリが真っ先に『二次会の幹事をやる』と言ってくれたんです。実際は他の友人たちが動いてくれて、ユリはお姫様のように眺めている場面もありましたが、それでもユリは変わったとみんな言っていました」

 

ところが最近になって、ユリさんの悪癖がぶり返すようにひどくなってきたそう。

「このハゲー」と夫を人前で怒鳴りつける様子に

ユリさんが結婚したのは32歳のとき。相手は5歳年上で、ユリさんによれば「冴えない男」です。ただ、タカミさんは「まれに見る優しさというか、弱いダンナさんで」と言います。

 

「数年前から、ときどき学生時代の仲間たちで集まるように。ユリは必ずダンナさんと一緒に来るんですが、夫を顎で使うんですよ」

 

食事に行っても、夫は末席。お酒や料理のオーダーをとらせたり、空いたお皿を片づけさせたり。お店の人がやる前に夫にやらせる様子。

 

「誰かのお酒が来るのが遅れると、『あんたが取りに行きなさいよ』と。オーダーした本人が大丈夫、待ってるからと言っても夫に『早く行きなさいよ、グズ』って」

 

言葉が過ぎるのでみんなドキッとするものの、夫本人がさほど苦にしていないようなので、見て見ぬふりをしていたそうです。

 

つい先日も「夫がいかにグズで失敗ばかりするか」をおかしく話していたユリさんですが、さすがに夫も不快そう。

 

誰かが「そこまで言わなくても」と言い、夫が「そうだよ」と言った瞬間、酔っていたユリさんが大炎上。いきなり怒鳴り始めたのです。

 

「あんたのせいで、私まで恥ずかしい思いをしているんだからね、このハゲが!」

いくら友人とはいえ度が過ぎる行為にドン引き

これにはみんなびっくり。たしかに40代後半の夫の頭髪は若干薄くなっていますが、それを言えばユリさんも結婚後、10キロ近く太って、見た目は誰もが変化するもの。

 

年をとればお互いの変化も受け入れていくのが当然なのですが。さすがの夫も顔を赤くして怒りをこらえているようでした。

 

「さらにユリは、『ああ、大阪のおいしいお店に行きたい』と突然言い始め、『今からレンタカー借りてきてよ。大阪行こう』とダンナさんに言ったんです。

 

『ムリだよ』という夫に、『拒絶する権利はないんだからね!』とユリ。誰が結婚してやったのよ、とまで言っていました」

 

周りはすっかりドン引き。もうユリさんとは関わりたくないと言い出しています。場の雰囲気を壊し、夫いじめにしか見えない状況にタカミさんも呆然

 

「絶対的な味方のダンナさんにチヤホヤされるなかで、昔の強気がよみがえって度が過ぎる感じになったのかも。でも、さすがに今後は彼女との関係を考え直そうと私も思っています」 

 

人前でパートナーを罵倒する行為は、許されるものではありません。ユリさんの夫の心は大丈夫なのかな、とタカミさんは心配そうに言いました。

文/亀山早苗 イラスト/前山三都里 ※この連載はライターの亀山早苗さんがこれまで4000件に及ぶ取材を通じて知った、夫婦や家族などの事情やエピソードを元に執筆しています。