暖かい陽気にぐっと背伸びをしたくなるこの季節。転勤や部署異動、育休からの復職、子どもの進学…様々な形でスタートした新生活に疲れや悩みが見えてくる頃です。

 

「頑張れ!」という言葉に桜を散らす前向きなメッセージがバンバン流れてくるなか、SNS総フォロワー数17万を超え、旦那さんとの日常漫画が人気のB.B軍曹さんが、あえて「上手くいかなかった人」への漫画を描いたその理由とは。

「お先真っ暗です」のDMが始まりだった     

──インスタに投稿されている夫婦のお話はすごい人気ですね!現役の薬剤師でもあるとのことですが、絵はいつから描いているのですか?

 

B.B軍曹さん:

小さい頃から絵を描くのは好きだったので物心ついたときから絵をかいていました。

 

漫画を本格的に描くようになったのは社会人になってからです。

 

病院薬剤師になり毎日怒られて辛かったことからの現実逃避みたいなものでした。     

     

うちの夫は日本と海外を行き来する仕事をしていまして。今でこそ笑えますが、当時は夫と日常を共にすることもほとんどなく、本当に寂しかったんです。

 

コロナ禍の今は夫もリモートでずっと家にいるのでやかましいですが!

──でも、おふたりのやりとりにキュンとしている読者は多いと思います!ただ、今年の3月31日に公開された漫画は普段とは少し違ったテイストでしたよね。新生活が始まる方へ向けた応援メッセージでしたが、「上手くいかなかった方へ」とネガティブなことも含んでいました。

 

B.B軍曹さん:

その時期にフォロワーさんから「新生活がツラい、お先真っ暗です(泣)」といった相談のDMをたくさんいただいたことがこの作品を描いたきっかけです。

 

私も自分の経験から「思うように事が運ばなかった」ときの苦しみが痛いほど理解できて。悩んでいる人の気持ちに寄り添い、少しでも気持ちをやわらげることができないかと悩んでいました。

 

それを夫に相談したところ、「同じ経験をした人の言葉は効くよ」というひと言から、「ツラい新生活を迎えた過去の私の実体験」を物語のベースにし、「私の思い」を作品に乗せてみるという新しい試みにチャレンジしました。

過去の自分もあと押ししたかった     

──他の作品も拝見しているのですが、メッセージ性の強い漫画はあまり描かれていませんでしたね。

 

B.B軍曹さん:

はい。私の漫画は、薬剤師のかたわら漫画制作に勤しむアラサー女性、B.B軍曹(私)と外資戦略コンサル会社に勤める髭の夫との「日常生活を切り取ったコミックエッセイ」で比較的ライトな話題が多いです。

 

実は自分の思いを人に話すこと自体、あまり得意ではなくて…。

 

「メッセージ性が強い=ときとして独りよがりな視点になりやすい」こともあるので普段は避けるようにしています。いろいろな価値観の方がいるので、自分の気持ちを押しつけるような漫画だと読む方も疲れてしまうのかな…と。

 

──それでも、今回の漫画はご自身の経験と同じ境遇にいる方にしっかりとお気持ちが届いたのではないかと思います。反響も大きかったですか?

 

B.B軍曹さん:

ありがとうございます。

 

当時の自分の気持ちは描写しつつも、読者の視点を常に考え、新生活に向けて動き出す皆さん、そして過去の自分自身へのあと押しとなるように描きました。

 

反響はさまざまでした。

 

「これからの生活に希望が持てた」というコメントや、私と同じように「ツラい新生活の先には幸せがあった」と教えてくれる方もいました!

 

私の過去の実体験が無事供養されたと胸を撫でおろしました(笑)。

最後まで何が成功かなんて分からない

──第一志望校にも、第二志望校にも落ち、まったく志望していなかった大学での新生活が暗いものであったとありましたが、どう乗り越えたのでしょうか?すぐに前向きに捉えるのは難しいですよね。

 

B.B軍曹さん:

すごくツラかったです。最初は「私の人生こんなはずではなかった」と納得ができず、少しでも華をつけたいといろいろなバイトをして出会いを広げました。

 

そうして出会った人や周りの友人に恵まれたこともあり、次第に後ろ向きな気持ちや劣等感が薄れていきました。

 

夫とも大学在学中に出会いましたし、気の合う友人もできました。きっと、ずっと後ろ向きなままでいたらあり得なかった出会いだし、今でも皆大切な存在です。

 

全力で取り組んだ方向が学業ではなかったので単位を落としそうになりましたが!

 

就職してからも薬剤師の仕事が向いていないのかもと落ち込むことは多々あります。でも当時と同じで今はとにかくやってみようと思っています!

 

人を傷つける作品は絶対に描かない

──現在も薬剤師と漫画制作などお忙し日々かと思いますが、今後の展望や目標などお聞かせください。

 

B.B軍曹さん:

ここ最近は丸一日休みの日というものがなくなってしまい、正直ツラくなってしまうことが多かったです。ただ夫や、フォロワーさん、仕事関係者…たくさんの方々に支えていただいているので、漫画を通して感謝の気持ちをカタチにしていきたいです!

 

今の自分があるのも、インスタグラムがここまで続けられているのも夫のアドバイスや視点があったからこそです。私自身はまだまだひよっこなので精進していきます。

 

また、いつも念頭に置いていることがあって、「人を傷つける作品は絶対に描かない」と決めてます。描いてる私自身も心が寂しくなりますし、見て頂いているフォロワーさんも悲しくなる。この点だけは絶対に避けるように毎回細心の注意を払ってます。

 

漫画業だけでなく、薬剤師の仕事を活かして将来やりたいこともあるのでどちらも全力で取り組んでいきたいです!

 

PROFILE B.B軍曹さん

薬科大学への進学を機に上京。大学就学中に出会った通称・髭と卒業後すぐに結婚。薬剤師として働きながら、クリエーター、インフルエンサーとしても活躍中。Instagram、twitterだけでなく、NAPBIZ公式ブログ『CALL OF 軍曹』では二人の出会いを赤裸々に漫画にしている。

取材・文/村上順子