タレント・紗栄子さんが栃木県大田原市の牧場の経営を委託され、運営を始めてから約1年半が経ちました。どんな思いで牧場の運営を引き受けたのか。その姿をそばで見てきたマネージャーの万太郎さんに話を聞きました。

「この場所を残したい」その思いで始めた牧場運営

── 紗栄子さんが牧場を運営することになった理由を教えてください。

 

万太郎さん:現在、運営している牧場は元々紗栄子さんが趣味の乗馬で訪れていた場所です。その牧場の経営母体が変わることで、牧場の存続が危ぶまれていると知った紗栄子さんが、「保護馬や地元の雇用を守りたい、どうしてもこの場所を残したい」という思いから運営を決意。2020年の夏からNASU FARM VILLAGEと名称を変えて運営しています。

 

私は、紗栄子さんが決断するタイミングでちょうどマネージャーとして採用されました。

 

牧場を運営するのであれば、腰を据えて取り組みたいとの思いがあり、紗栄子さんと一緒に東京からファームのある栃木県大田原市に住民票を移して引っ越してきています。

 

実は私も紗栄子さんと同じ宮崎県の出身なんですが、それまで動物に触れることはほとんどなくて。でも、牧場の運営話が出たときは、できるかどうか考える暇もないくらいのスピード感で話が決まっていきました。気がついたらもう、栃木に移住していた感じですね。

紗栄子さんが運営を委託されているNASU FARM VILLAGE

「深夜2時に駆けつけた」紗栄子さんの馬に対する思い

── こちらでは本来、殺処分の対象となってしまう引退した元競走馬や元競技馬などを引き取っていると伺いましたが、そうなるとさまざまな場面に遭遇することもありますよね。

 

万太郎さん:はい。馬の体調が悪くなったりすると、専門のスタッフが交代で看病をします。

 

ただ、リーガルという馬が夜、体調を崩し、このまま起き上がれなくなったら命が危ういということがありました。

 

そのとき、紗栄子さんは仕事で東京にいたのですが、状況を伝えたら、深夜2時にひとりで車を運転して東京から牧場に帰ってきてくれて。みんなで一緒に付き添って看病したんです。

 

専門のスタッフがいるので本来は任せられるんですが、馬もスタッフのことも大切にしたいという気持ちの表れだと思います。紗栄子さんの行動から学ぶことはたくさんあります。

 

その後、リーガルは一時的に回復したのですが、残念ながら数か月後に天国に行くことになりました。

「馬も一緒にファームを盛り上げていく仲間」紗栄子さんの姿勢から影響を受けている

── 実際に万太郎さんが馬のお世話をすることはありますか。

 

万太郎さん:基本的には馬部にいる専門のスタッフが馬のお世話を担当していますが、どんな風にお世話をしているのか知りたくて、実際に仕事をさせていただいたこともありました。働いているスタッフの業務もわかりましたし、馬との距離も縮まったと思います。

 

馬も人の気持ちを察しているようで、本当に馬が好きな人には不思議と攻撃的にならないんです。

 

私もスタッフもそうですが、馬たちも一緒に働いているという連帯意識を持っています。一頭ずつ、一緒にファームを盛り上げていく仲間、そして家族のような存在だと思っています。

 

一頭一頭、性格が違うのも愛らしいです。おっとりしている子もいますし、若くて人に興味がある馬は、顔を出して積極的に人に触れ合いに行く子もいます。

一頭一頭が仲間と感じるといったのは、紗栄子さんの馬に対する接し方や、スタッフへの気配りの様子を見てのことだと思っています。紗栄子さんはきっと、誰かスタッフが深夜にケガをして倒れたら、リーガルのときと一緒の行動を取ると思うんです。そういう姿を見て、私自身も大きく影響を受けていると思います。

「寂しい思いをしたことがない」移住先の栃木県での生活

── 移住先での生活はいかがですか。

 

万太郎さん:勤務先であるNASU FARM VILLAGEには、元々7、80代の方々が働かれていて。最初は栃木弁で話されると正直、何を言っているのかわからなかったです。でも、相手の方からしても突然、こんな青い髪の人が来て、もう宇宙人がやってきたみたいな感じじゃないですか(笑)。そういう意味では、お互いにポカーンとしていたかもしれません。

 

でも、みなさんすごく優しくて。紗栄子さんも私も、縁もゆかりもないところに来たので、地元の方にどう思われるかなというのが不安だったのですが、寂しさや不安を感じたことがないくらいです。

 

来てくださるお客様も、地元に住んでいらっしゃる方も優しくて、本当に幸せだな、恵まれているなと感じています。

 

── 地元の方からはどんな反応がありましたか。

 

万太郎さん:街を歩いていて声を掛けられたりすることもありますし、YouTubeのコメント欄でも、栃木県や地元の大田原市の方から「引っ越して来てくれてありがとう」という温かいコメントをいただいたりします。

 

実際に足を運んでくださる方は、遠方の方も地元の方もいらっしゃいますが、皆さんに喜んでいただけているのかなと思います。ファームの周りには何もないので、ここを目掛けて来てくださっていると思うと本当にありがたいです。

── 万太郎さんにとって、働かれているNASU FARM VILLAGEの魅力はどんなところですか。

 

万太郎さん:大自然を堪能できる、広大な景色が本当に綺麗なところです。日々感じていらっしゃる忙しさや日常を忘れることができると思います。乗馬体験などで馬と触れ合うことができますし、癒しの時間を提供できる場所だと思っています。

ファームのアクティビティとして人気の乗馬体験

PROFILE 万太郎

宮崎県出身。学生時代にオーストラリアでカフェ店員として働いた後、上京して青山/原宿のカフェで店長を務める。その後、2020年6月にThink FUTURE社に入社、紗栄子の担当マネージャーに。現在は栃木県大田原市に移住し、NASU FARM VILLAGEの運営や商品企画・SNS運用などにも携わっている。紗栄子公式YouTubeチャンネル <Sae Channel>にも出演中。

文/内橋明日香