夫と夫の兄弟の談笑する姿にイライラする女性

 どんなに親しい間柄でも、当事者が嫌悪感を抱くなら、それはハラスメントになります。特に下ネタなどを振られたら、笑ってすませられないこともありますよね。

 

義兄のねちっこいセクハラにたまらず…

アリサさん(38歳・仮名)は、結婚して10年になる夫と8歳のひとり娘の3人暮らし。数年前、近所に夫の兄一家が越してきて以来、ときどき行くようになりました。

 

「義兄は4人きょうだいの長男で、うちの夫は末っ子。10歳の歳が離れています。夫は私より4歳年上の42歳だから、義兄は52歳。夫はそんな長兄が好きなようで、月に1、2回は行きたがるんですが、私は義兄が苦手なんです」

 

引越してきてすぐ、家族で義兄宅を訪ねたときのこと。義兄はアリサさんをねちっこい目で見ながら、「相変わらずスタイルもよくて美人だねえ。若いし」と言ったそう。アリサさんは「嫌な感じがしたし、そばで聞いていた義姉のことを思っても腹が立った」そうです。

 

「夕食をごちそうになったんですが、義姉の料理はとてもおいしかった。思わず褒めると義兄はフッと笑って、『これでプロポーションがよければ最高の妻なんだけどね』って。夫もつられたように笑ったんですよ。

 

私、ついカッとなって『それ、パワハラでセクハラですよ』と言っちゃいました。義姉はチラちらと私を見て、虚しそうに微笑んでいました。いつもああいう言われ方をしているんでしょうね。とはいえ、義兄と義姉は仲が悪いわけでもなさそう。なんだかよくわかりませんでした、ああいう関係」

 

家に帰ってから、アリサさんは夫に、「お義兄さんって、いつもああなの?」と聞いてみました。すると夫は「ざっくばらんというか、気を遣わないタイプ?気のいい兄貴なんだよ」と。

 

「気のいい人が、久々に会う義妹に、スタイルがいいだの美人だのって、今どき御法度な言葉を言うんですかねえ。自分の妻のことだって嫌な言い方をしていたし。夫に『あなたは私のことを、どう他人に紹介するの? 

 

うちの妻はプロポーションがよければ最高なんだけどねって言う?』と聞いたら、『いや、オレは言わないけど、兄貴はああいうタイプだから』って。ああいうタイプなら妻や義妹にセクハラまがいの言葉を投げてもいいんでしょうか」

 

夫は「適当にかわしておけばいいんだよ」と面倒くさそうに言ったそうです。

度重なるセクハラ発言に私が始めたある行動

すでに両親が他界している夫は、何かにつけて義兄に会いたがります。

 

「義兄のところは子どもがいないんですよ。だからうちの娘をかわいがってはくれていた。だけど、そのうち娘にもセクハラ発言をするのではないかと思うと、夫と娘だけを行かせるのは気が進まないから渋々私も行くしかない。

 

あるとき娘の前で、少子化の話の流れから夫婦の性の話になって、『おまえたちは、まだまだ現役だろ?』と義兄がまた下ネタトーク。夫は笑いながら、『うちは仲がいいから』と。義兄は『へぇ~』といいながら私をじっと見つめる。『いい加減にしてください。気持ちが悪すぎます』と怒鳴って、娘の手をつかんで帰りました」

 

帰宅後も、腹立ちはおさまりませんでした。“もう、義兄の家には一生行かない”と夫に宣言しようと決めました。

 

「義姉から電話がありました。携帯で外からかけているようで、『ごめんなさいね。嫌な思いをさせて。ああいう人だから許してあげて』って。『周りが甘やかすからいけないんですよ』と思わず言ってしまいました。

 

そういうとき女が笑ってやり過ごすから、男は言ってもいいと勘違いする。『直らないかもしれないけど、怒るべきときは怒らないと何も変わらないですよ』、義姉にはそう言いました」

 

ますますカッとなったアリサさん。そのとき夫が帰宅しました。

 

「兄貴から。走り書きだけど、と渡された紙には『ごめんなさい』とだけ書かれていました。夫は“これで許してやれよ”という感じでしたが、私は義兄が何について謝っているのかがわからないから、許しようがないと言いました」

 

それ以降、アリサさんは義兄宅には行っていません。夫は「兄貴のところに行く」とは言わず、こっそり訪ねている様子。こういう事態になりましたが、今のところは他に方法がないと彼女は言います。近しい間柄でのセクハラ発言、対処は難しいようです。

夫と夫の兄弟の談笑する姿にイライラする女性
外出する夫にモヤモヤする女性
文/亀山早苗 イラスト/前山三都里 ※この連載はライターの亀山早苗さんがこれまで4000件に及ぶ取材を通じて知った、夫婦や家族などの事情やエピソードを元に執筆しています。