料理家の河瀬璃菜さん

「『自分らしく生きる』ってよく聞きますけど、そのためにはまず、自分を知らなきゃ。

 

すごく難しいんですけど、私もやっと20代半ばくらいから『自分に無理をさせず、自分を大切に生きる』ことが、できるようになってきました」

 

そう話すのは、料理家、フードコーディネーターなど食の世界でマルチに活躍する河瀬璃菜さん。Twitterのフォロワーは5万人超え、多様な食の発信で人気を博している。

 

一見とてもポジティブに見える彼女だが、過去にはつらさを抱えて笑顔を浮かべ、体を壊しかけたことも。体によい栄養素を知り尽くす、河瀬さんならではの元気の秘密を聞いてみた。

「笑って耐える」場面に自分を置かない

「どこからこんな声が出てくるのだろう?」と、華奢な体からは想像がつかないほどに、河瀬さんの声は大きく力づよい。声を聞いているだけで楽しい気分になってくるから不思議だ。

 

「声が大きいのでピンマイクいらずってよく言われます(笑)。そして喜怒哀楽がすぐに顔に出ちゃうんです。

 

だけど、20代半ばくらいまでは嫌だと思うことがあっても、愛想笑いで受け流すことが多くて。そしてその当時は月に一度必ず高熱を出してダウンしていました。

 

『笑って耐える』って、その場はそれでよくても、後から自分をじわじわ悪化させちゃうんですね。嫌なことを嫌と言えない自分も嫌いになりそうでしたし、働きすぎによる肉体的な疲労も相まって、発熱サイクルになってたんだと思います」

発熱という体の悲鳴によって無理はいけないと気づいた

自分に無理をさせてはいけないこと、もっと自分を大切にする必要があることに気づいた河瀬さん。サウナに行ったり海を眺めたり、意識的に何もしない時間をつくり、自分に向き合うことで、心の声に耳を傾けることを大切にしている。

 

「嫌なことは嫌だとしっかり意思表示をする、それができないなら、そういう場面に自分を置かない。自分に無理をさせず、物事に対処できるようになってきたら自然と生きやすくなりました」

体が資本!睡眠と栄養、プラスαのサウナでデトックス

「疲れているときには自分に向き合えないので、まずは身体を元気にしなくちゃいけません。睡眠時間は、なるべく8時間と決めて眠るようにしてます。

 

そうでないときも多くありますが、睡眠時間が確保できない状況のときは、お断りする場合もあります。

 

食事は、体が欲するものを食べるようにしていて。私の場合、疲れたときにはおかゆが多いですね。身体と心の元気はつながっているので、メンタル不調のときには、まずは自分に足りない栄養素、足りている栄養素を知ることが大切。

 

そのために自分に必要な栄養素を教えてくれる栄養解析を受けています」

健康が何においても1番大事だと話す河瀬さん

今の時代、自分に合ったSNSとのつき合い方を見つけることも、元気な毎日を過ごすためには欠かせない。

 

「デジタル社会の今、便利になった分、人は情報につながりすぎているとも思います。SNSは便利だし、楽しいから私もやってますけど、フォロワー数に囚われないことも大事ですよね。

 

フォロワー数を気にして自分の生活や自分自身をコンテンツ化しちゃうと、キリがないですし、どんどんしんどくなってしまうと思っています。

 

私がサウナ好きなのは、デジタルデトックスとしても利用しているからなのかもしれません。サウナの中でメールを打ったり、SNSを見たりはできないので、すっごくくつろげるんです」

趣味のサウナはかけがえのないものに(写真提供/河瀬さん)

元気があってこそ“プラススパイラル”に乗れる

自分に元気があると、心に余裕が出てくるし、幸運も訪れやすくなると河瀬さんは笑う。

 

「ゴミの捨て方をいつもチェックしている、おっかないおばちゃんがゴミ集積場にいるんです。

 

ちょっと怖いなって思いながらいつもゴミ出しをしていたんですが、先日思い切ってあいさつしてみたら、おばちゃんに、おまんじゅうをもらっちゃいました。

河瀬さんのたくましさを感じるとともに笑顔の絶えない取材だった

その日も『ゴミの分別してくださいね』って、セオリー通りの声をかけられたのですが、気持ちのよい朝だったし、すごくいい気分だったので、『いつも掃除してくださってありがとうございます。分別してます』って言ってみたんです。

 

そうしたらおばちゃん、とたんにやさしくなって、わざわざおまんじゅう持ってきてくれて。これってすっごい幸運じゃないですか?しかも、いただいたの大福なんです(笑)。

 

自分の心がけ、行動次第で、物事ってよくも悪くもなる。自分が元気なら、周りを元気にすることができるし、プラススパイラルに乗れるって思います」

失敗も成功も自分を成長させていくための栄養素

過去の嫌なことは覚えていない、と明るく話す河瀬さんだが、人間関係のトラブルに悩むこともある。

 

「苦しいとき、どん底に落ちた時にこそ、その人の本質が出ると思っています。苦しい時をどうやって乗り越えるか、そしてどうやってその経験を次に活かしていくかで、人は成長していくのだと思います。

自分の成長について振り返る河瀬さん

だからこそ、これからもトライ&エラーを繰り返し、自分に向かい合い、自分を成長させていきたいですね。何事にも無駄はありません。失敗も成功もすべて自分を成長させていくための必要な栄養素。

 

自分を知るほどに成長し、強くなります。失敗した時には、『これも神が私をより素晴らしい人間にさせるために与えたもうた試練だ』と笑いとばせる元気を、これからも自分の中に培っていきたいです」

 

PROFILE 河瀬璃菜(かわせりな/りな助)

1988年福岡県生まれ。料理家。フードプロデューサー。レシピ開発、商品開発、イベント・メディア出演、食品企業のコンサルティングなど食に関する様々なプロジェクトに携わる。最近では地方と連携したプロダクトに注力している。

取材・文/林ぶんこ 撮影/瀧川 寛