これからの働き方はどう変わるのか、何に適応するのが成功のヒントになるのか。『ワークスタイル・アフターコロナ』の著者で関西大学の松下慶太教授は3つのSが方向性の鍵を握ると言います。

テレワーク自体の新たな刺激が日常を豊かにする

── 3つのSがニューノーマルの方向性と決めると著書でも書かれていましたが、具体的には何を指していますか?

 

松下先生:

新しい働き方では、自分のワークスタイルのデザインは活動の組み合わせだけでは不十分です。それに加えて、どのような価値観に基づいて、どこに向かっていくのかという方向性が重要になります。自分の方向性に合ったワークスタイルをどのようにデザインするかチェックしたり、指針を作ったりするうえでのヒントになるものとして3つのSをあげたいと思います。

まず1つ目はStimulate、刺激です。これまでも刺激はあったと思いますが、テレワークするなかでも新たな発見があるかもしれません。また、ワーケーションを行うことで、普段体験しない非日常の刺激を受けることも。

 

これらを組み合わせていくことで、普段味わったことのない刺激を感じて、日常を豊かにしていくことができます。

共感が今後の働き方において重要に

松下先生:

2つ目はStory、共感です。自分のワークスタイルがどんな共感から成り立っているか、改めて考えてみてください。家族や地域の人からの「助かったよ」という共感、顧客や所属企業から評価される「自己有用感」、あるいは取り組む仕事の内容から得られる「やりがい」、環境問題、社会貢献から感じる「社会の一員としての感覚」など、さまざまな共感から成り立っています。

松下慶太
松下先生

自分が仕事の何にやりがいを感じているのか、ということはこれからの働き方を考えるうえで重要な方向性となります。

 

あなたは、どんな働き方がしたいのか、前例にとらわれず、誰かのストーリーや考えに合わせるのではなく、自分自身がどうなったらハッピーかを考えてください。

3つ目は持続性、続けられる形を作る

── 「刺激」「共感」の次、最後のSは何を指しますか?

 

松下先生:

3つ目はSustainable、持続性です。

 

大雪でも通勤する、夜遅くまで残業する、そういう働き方は持続可能ではないですよね。どこで、どのように働くことが自分にとって持続可能性がある働き方なのか考える必要があります。

人生を楽しめる働き方で、発展していく社会に

この3つのSは相互に影響しあいます。そして、働く人が人生を楽しむための基礎要素に、企業が発展するための基礎要素になっていきます。

 

偉人伝を読んで真似しなくてもいいんです。偉人伝に出てくるような努力、根性、成功のど根性型から、キャンプをして、焚き火を楽しむような、そんなゆるい活動や繋がりの中でそれぞれが楽しむ。そして、それが没頭、熱中、夢中になる形に変わっていくと思います。

 

PROFILE 松下慶太

松下慶太
関西大学社会学部教授。1977年神戸市生まれ。博士(文学)。京都大学文学研究科、フィンランド・タンペレ大学ハイパーメディア研究所研究員、実践女子大学人間社会学部専任講師・准教授、ベルリン工科大学訪問研究員などを経て現職。専門はメディア論、コミュニケーション・デザイン。近年はワーケーション、デジタル・ノマド、コワーキング・スペースなど新しい働き方・働く場所と若者、都市・地域との関連を研究。近著に『ワークスタイル・アフターコロナ』など。

取材・文/天野佳代子 写真・資料提供/松下慶太