質問したときに、詰問したような雰囲気になって、場がしらけてしまうことはないでしょうか。そんなとき、質問の意図を事前に伝えると、相手が話したいことをスムーズに聞けると言います。話し方教室を運営する『話すより10倍ラク!新 聞く会話術』の著者、西任暁子さんから学びます。

質問する前に意図を伝える

── 「質問するのが怖い」と話す友人がいます。質問することで、相手の聞かれたくないプライベートに踏み込みすぎてしまうのではないかと思ったり、責めているように感じさせたりするのではないかと思っているそうです。どんな風に聞いたら良いでしょうか。

 

西任さん:

質問は、基本的には、相手へのプレゼントです。質問のベースにある「あなたという人をもっと知りたい」という気持ちは嬉しいものだからです。
ぜひ「相手を知りたい」という純粋な興味や、「話すきっかけを作ってあげたい」という気持ちで質問してみてください。プライベートな領域に踏み込みすぎているかなと思ったら、質問する前に「こんなことが浮かんだのだけれど、気に障ったら答えなくていいからね」などと前置きするのも良いと思います。

 

 

ビジネスシーンなどで、以前聞いたことと同じ質問をする時などは「本来なら理解しているべきことだと思うのですが」や「以前、教えていただいたかもしれないのですが、もう一度教えてください」と言った言葉を前に置くと良いと思います。

 

聞いていいのかなと思ったら、「こんなことをおたずねするのは、失礼かもしれませんが」と伝えてみてください。不安を感じたら、その気持ちを言葉にして伝えるということです。

 

また、質問するときは、意図を伝えると安心してもらえるでしょう。

 

急に「日曜日、空いていますか」と聞かれて答えに迷ったことはありませんか。もし空いていると答えて、行きたくないイベントに誘われると断りづらいですよね。「服を買うのにつき合って欲しいのですが、今度の日曜日空いていますか」など、質問の意図を先に伝えると相手は安心して答えられるでしょう。

 

そのほか、質問する前に自分の答えを言うこともおすすめです。

 

例えば、「ここに来たことありますか」と突然聞くのと、「私はここに来るのは今日が初めてなのですが、来られたことはありますか」と聞くのとでは、答えやすさが変わります。
あなたが答えを先に自己開示すると、質問された人は安心するからです。「これって、覚えているか試されているのかな?」などと余計な心配をしなくてすみます。

 

西任さん

質問されたら短く答えて、相手に質問を返す

── どこまで質問に答えたらいいか、と迷うこともあります。


西任さん:
その場合は、相手をよく観察してみるといいと思います。相手が、会話のきっかけを作りたくて質問してきた場合は、「話したいことがある」という相手の勢いが感じられます。表情がいきいきしているなど、熱量を感じられることも多いでしょう。

 

そういうとき、自分が長く答えると、相手がうわの空になるのを感じるかもしれません。相手の頭の中には話したいことがいっぱいで、あなたの答えを受け取るスペースがないからです。それに気づいたら、自分の話を切りあげて、相手に話を振るといいですね。

 

質問されると嬉しくなって、自分の話をたくさんしたくなることもありますが、それは「お先にどうぞ」と勧めてもらった料理をひとりで丸ごと平らげてしまうことに似ています。質問という会話の料理もみんなで一緒に楽しめるといいですね。

 

PROFILE 西任暁子

ニシトアキコ学校主宰、スピーチコンサルタント、ラジオDJ、アメリカへ高校留学後、慶應義塾大学在学中にラジオDJデビュー。東京FMなど全国32のラジオ局で番組を担当。15年間でインタビューした国内外の著名人は5000人を超える。スピーチやコミュニケーションについて伝えながら心理学や哲学などを探求。著書に『話すより10倍ラク!新 聞く会話術』など。

取材・文/天野佳代子 写真提供/ニシトアキコ学校事務局