子どもの部屋を覗く保護者

「中学受験の正体」を“イロハ”から進学塾VAMOSの代表・富永雄輔さんに教えていただきます。

 

多くの受験生を見てきた富永さんによると、子どもの嘘は珍しいものではないそう。子どもが嘘をつくパターン、保護者の対応について伺いました。

嘘をつくのはズルイのではなく幼いから

子どもの嘘は、幼さの現れです。特に低学年から中学年は、嘘をつくこと自体に罪悪感もありません。

 

その場しのぎで適当なことを言っているだけなので、保護者も真剣に悩まず、見つけたらその場で明るくガツンと叱ればいい。

 

そのうちに、「嘘は悪い」という感覚が身についていきます。

 

高学年になっても単純な嘘はつきます。宿題をやっていないのに「やった」。塾をさぼったのに行ったふり。テストが返却されたのに「先生がまだ返してくれない」など。

 

低学年のころに比べて多少の罪悪感は出てきますが、すぐにバレる嘘をつくのは幼さが残っているだけなので、保護者は深刻にならないようにしましょう。

受験を意識した嘘やカンニングは要注意

ただ、受験が差し迫っている段階での嘘は見過ごせないことがあります。特に5年生の後半、6年生になってからの嘘は、精神的に追い込まれている場合も。

 

一般的には、上位クラスの子のほうが精神的に追い込まれる時期が早く、夏ごろに嘘やカンニングが発覚します。それ以外だと受験本番が迫ってきた秋以降にやることが多いですね。

 

塾でも気をつけてはいますが、それでもやってしまう子はとても多いです。

カンニング対処法

カンニングについては、単純にテキストの解答を親が管理するなどして、「カンニングできない」環境を作ることが大事です。

 

子ども自身が「こんなことをしていても意味がない」「カンニングしていい点を取っても合格が近づくわけではない」と気づくことができれば、自然とやらなくなります。

子どものSOSにどう対応するか

受験のプレッシャーによる嘘は、子どもが受験を意識している証拠です。

 

受験生には、必ずそういう時期があります。

 

子どもが自分で嘘の無意味さに気づける場合はよいのですが、このSOSのサインを保護者が見逃し続けていると、子どもは髪の毛を抜いたり、シャープペンで自分を刺したりする自傷行為に至ることもあります。

怒りにまかせた「受験やめなさい!」は禁句

子どもの嘘が発覚したとき、いちばんやってはいけないのは、「この子はおかしいのでは」「自分の接し方が悪いのか」などとパニックになって子どもや自分自身を責めること。

 

本人も悪いことをしている自覚は多少なりともあるので、改めてくどくどきれいごとでお説教をするのも意味がありません。

 

怒りにまかせて「受験なんてやめちゃいなさい」と言うのも禁句です。逆に「かわいそうだから」とやめさせてしまうのもおすすめしません。

 

中学受験を安易にやめても、高校受験や大学受験でまた同じことを繰り返す可能性が高いからです。

志望校や塾のクラスを見直そう

子どものSOSは、わが子のストレス耐性や頑張りの容量を見極めるチャンスです。まずは子どもにとって何が負担になっているのか理解して、それを取り除くことを考えましょう。

 

具体的には、通っている塾のクラス、狙っている志望校が本人の学力に合っていないということが多いです。

 

塾の先生に相談して、クラスを変えてもらう、宿題の量を調整してもらう、志望校の難易度を少し下げてみるといったことを検討してみてください。実際そうして回復する子どもは多いです。

 

ただし子どもにもプライドがありますから、「あなたがダメだからランクを落とす」という言い方はよくありません。

 

「最終的に受かるためにこうした方がいい」という方向で説明しましょう。クラスやレベルを「落とす」のではなく、「できるようになるために変更する」「こちらの方が合っている」という表現がいいでしょう。

 

また、それを告げる大人も、父親がいいのか母親がいいのか、塾の先生がいいのか。誰が話すと本人が納得できるのか、慎重に進めるようにしましょう。

 

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受験生活の中で、子どもが嘘をついたりカンニングをするのは、SOSのサイン。

 

感情的に叱りつけるのではなく、子どもが何を負担に感じているのか見極めて、その負担を軽減するようにしましょう。

中学受験の正体バナー
監修/富永雄輔 取材・構成/鷺島鈴香 イラスト/サヌキナオヤ