作者と家族のリアルな日常を描いた『プリンセスお母さん』。ごく普通の家族漫画かと思いきや、お母さんをはじめとする家族全員が超濃厚なキャラクター。Twitterで投稿した漫画が「お母さんの予想外の行動に思わず笑ってしまう」と話題に!

 

今では19.8万人ものフォロワーが親子のやりとりを見守り、さまざまな反響が寄せられています。

 

作者の並庭マチコさんは、今までを振り返って「家族がいたからここまで仕事を続けてこられた」と話します。家族との距離の取り方に悩む人も多いなか、並庭さんが今も実家の家族と良好な関係を保てている理由は何なのでしょうか?

大人になってからも良好な家族関係を築けている秘訣は?

── 大人になると実家の母と付き合う難しさを感じてしまうこともあります。並庭さん親子はすごく仲が良さそうですよね。普段からお母さんとは本当に漫画のようなやりとりを…?

 

並庭さん:

あれがリアルなんですよ。いきなり赤ちゃん言葉で話しかけてきたり、家の階段でばったり会ったときに母から謎のとおせんぼをされたり…。リアクションに困るようなことを急にしてくるので、私も突っ込まずにはいられません。母とは普段からそんな感じでやりとりしていますね。

 

母は小さな子どもをあやしているつもりなのか…。それが逆に微笑ましかったりもしますが。

並庭さん漫画P4

── ツッコミどころが多いからこそ、親子の会話が途切れることなく、今も仲の良い家族関係が築けているのかも…と思いました。

 

並庭さん:

確かに、それはあるかもしれませんね(笑)。

 

── お母さんもそうですが、お父さんともフラットな関係が築けているのでは?その理由は何なのでしょう。

 

並庭さん:

そうですねえ。漫画には描いていませんが、実際はすれ違いや小さなケンカもよくあります。

 

でも、両親は昔から子どものやりたいことを否定しないタイプでした。私が美大に行きたいと言ったときも受け入れてくれましたし。だから私も家族に対して反感を抱くことがなかったんだと思います。両親は、距離は近いけれど干渉しすぎないように気づかってくれていたのかもしれません。

 

あとは父の企画で昔からよく家族旅行にも行きました。20代半ばにはヨーロッパ旅行に連れて行ってくれたり、大人になっても家族の時間をつくってくれていましたね。それも、良い関係を保ち続けることができた理由のひとつだと思います。

実家で暮らすこと自体が「ネタ探し」に

── 並庭さんは実家暮らしだからこそ、創作活動に集中できている部分もあるのでしょうか。

 

並庭さん:

そうですね。そもそも漫画のテーマが「家族との日常」なので、ネタ探しの場でもありますし。それに、家事の部分ではやっぱり実家暮らしはメリットが大きいです。忙しい時期は両親がサポートしてくれるので、本当に助かっています。

 

とはいえ、自分の部屋が仕事部屋で、仕事と寝るスペースが一緒になっているのはけっこう辛いですね。生活にメリハリがつかなくて悩んでいます。私も城に住みたいです…(笑)。

 

── 確かに仕事部屋と寝室が一緒だと頭の切り替えが難しいかもしれませんね。ひとり暮らしをしたいと考えることもありますか?

 

並庭さん:

母の漫画を続けていくには一緒に暮らすのがベストな選択だと思いますし、ひとりで暮らすのは寂しい気も…。ずっと家族がそばにいるのが当たり前だったので。

 

でも最近は、機会があれば他人と暮らして、そこで起こる新たなエピソードを漫画にしてもおもしろいかも、と思うこともありますね。環境の変化も必要ですし…。

 

なので実は最近、交際相手と同棲を始めることを決めたのですが、慣れないことの連続でメンタルがやられています…(笑)。でも家族も応援してくれているので、がんばります!

今後の『プリンセスお母さん』の行方は…?

── 今年4月に3冊目の単行本が発売になったそうですね。お母さんのキャラはたくさんの人に愛されていると思いますが、並庭さんご自身が特に気に入っているエピソードというと?

 

並庭さん:

個人的には「コーヒーぜんざい」の話がお気に入りです。

並庭さん漫画P5
並庭さん漫画P6

予想を遥かに超えた展開に「なぜ!?」と思いましたが、純粋な反応すぎて笑いました(笑)。

 

母は胃が小さくてたくさん食べられないので、独特な食へのこだわりがあるみたいで興味深いです。行動が不思議に見えても、自分の世界や価値観をしっかり持っている人なので、母なりの理由があるんですよね。

 

── 編集部では「“G”の脅威から国民を守る姫の話も最高だった!」と盛り上がっていました(笑)。

並庭さん:

ありがとうございます(笑)。まさに「母は強し」という感じですよね。

 

── もともと乙女なお母さんだったのに、子どものためにたくましくなったんだろうなと思うと、胸が熱くなってしまいました。今後の「プリンセスお母さん」の展開も気になります!

 

並庭さん:

少し先にはなりそうですが、コロナが落ち着いたら、母が生涯をかけて愛する(笑)ポール・マッカートニーの出身地であるイギリスに連れて行ってあげたくて。そこでのエピソードもいつか漫画にできたらと考えています。

 

母をはじめ、家族にはいつも支えてもらっているので、ちゃんと感謝の気持ちを形にしたいなと思っています。 並庭マチコさん(Twitter@manga_m)

取材・文/望月琴海