陰キャ嫁_たくましい嫁25

それぞれ別の人間の集合である家族。一緒に暮らしていれば、お互いにどうしても嫌なこと、許せないことは出てくるもの。

 

三世代同居を始めるにあたり、どうしても我慢できないことがあったらお互いにきちんと伝えましょう、と約束をした私と義母ですが、前回は義母の宗教勧誘と、それによってかえって鍛えられた嫁姑の関係性についてのお話をしました。

 

義母からの宗教勧誘と、それに対する一応の線引きに成功した我が家ですが、それ以降も義理の両親と私との間で、ちょっとした食い違いはよくありました。

誰が先に入浴したっていいじゃないの

義母からの要求は、大抵は私のだらしなさによるもので、はい申し訳ありません、おっしゃる通りでございます!としか言いようのないものだったのですが、そんな中でも忘れられない、どうしても納得のいかない義母のこだわりがありました。

 

一つ目は、「お風呂に入る時、他の家族に『お先に失礼します』と必ず声をかけてほしい」というもの。

 

なるほど風呂は本来、年長者から順に入るべし、という価値観かまあ年代も違うし、そんな感覚もあるかもねと納得し、それならばいっそ、お風呂はいつも義父母に先に入ってもらうルールにしようとしました。

 

しかし義父母にそう提案しても、「21時から見たいテレビがあるから誰か先に入ってよ」「野球中継が終わらないから」と、結局一番風呂には誰も入りたがらないのです。

 

じゃあ誰が先に入ったっていいじゃないのむしろさっさと先に入る人の方がえらいじゃないのと納得いかないものを感じつつ、ひと言つけ加えるだけで義母が満足するならと自分に言い聞かせる日々です。

まとめ買いの荷物運びにNG

そしてもう一つ納得がいかない、義母の私への「どうしてもやめてほしい」リクエストがあります。

 

ある日、いつものように私は食料品の買い物に出かけました。

 

6人家族の食料のまとめ買いとなると、なかなかの量です。その日も大量の肉や魚や野菜、加工食品に加え、お米を20㎏(10㎏入り袋×2)を買いこんだ私は、せっせと車から買ったものを家に運び込んでいました。

 

車と玄関を何度も往復するのに閉口した私は、最後の荷物、米袋2つを一度に運ぼうと、10㎏の袋を両肩に一つずつ担ぎ上げ、我ながら力強いなぁと感心しながら玄関へと向かうところで、帰宅した義母と行き会いました。

 

ちょうどよかった、玄関のドアを開けてもらおう、と声をかけると振り返った義母は、両肩に米袋を担いだ私の姿を目にして「ギャッ」と叫び、「それはやめてちょうだい!」といつになく強い調子で言うのです。

 

私はといえば訳もわからず、「えっ何をやめるんですか?」とうろたえるばかり。

 

「ご近所の方に見られたらみっともないからやめて」と言われてはじめて、アマゾネス的な自分の米袋の持ち方にクレームをつけられているのだと気づきました。

 

えっそう?みっともない?そうですか?そんなに野性的だった

 

「どうしても嫌なことはきちんとお互いに伝える、そして言われたら素直にやめる」というルールがある以上、その場では素直に米袋を下ろして一つずつ運び入れましたが、一抹の納得のいかなさは残ります。

米袋アマゾネス事件をこっそり検証

「ならばどこまでなら義母の中でOKで、一体なにがNGなのか重さなのかポーズなのか運ぶものなのか、そのラインをハッキリさせたい!」と謎の探求心がむくむくと頭をもたげてきました。

 

この「米袋アマゾネス事件(勝手に命名)」以降、ほとぼりが冷めたころを見計らい、私は義母の前でこっそりと、様々な実験を重ねてきました。

 

<実験1> 両手で20㎏の米を抱えて運ぶ(肩に担ぎ上げない)

力持ちねえ、と感心されるが特にクレームはなし

 

<実験2> 片方の肩にだけ10㎏の米袋を担ぎ上げ、両手で支えて運ぶ

ちょっと眉をひそめられたが表立ったクレームはなし

 

<実験3> バーベキューをする際に木炭の入った箱×2(合計10㎏ほど)を両肩に担ぎ上げる

それはやめて!と叱られる

 

これらの実験の結果、おそらくは「両肩に担ぎ上げる」といういかにも強そうなポーズを嫁がすることが義母のNGラインに触れるのだ、ということが判明しました。

 

今でも心から納得はしていませんが、しかし嫌がられることをあえてするのは良くないので、それ以降は自重しています。個人的には強そうでいいと思うんですけれども。

義母と嫁が似てきたような

ちなみに、同居を始めて私から義母にお願いした「どうしても嫌なこと」は、「皮を剝いたにんじんや大根の使いかけをそのまま野菜室にしまう」です。

 

必要な分を切ってから皮を剝けばこんなことにはならないのですが、義母の持ち前の合理性(?)で、とにかく先に一本丸ごと皮を剝いてしまうのです。当然、にんじんも大根もすぐにしなっしなに

 

それだけはやめてください、とお願いしてやめていただいたのはいいんですが、先日は3本束になったままの長ねぎの1本が使う分だけ真ん中を切り取られ、根元と葉の部分だけ残った無残な姿になっていました。多分ハサミで結束テープを切るのがめんどうだったのだと思うのですが

 

私に負けず劣らず、義母もめんどうくさがりなのでは一緒に暮らすうち、嫁と姑が似た者同士になってきたのではと末恐ろしくなる今日このごろです。

 

文/甘木サカヱ イラスト/ホリナルミ