2017年の人口動態調査によると、婚姻件数の総数60万6866組のうち、夫婦とも、または、夫か妻どちらかが再婚している件数は16万1243組で約27%を占めます。つまり、4組に1組以上は再婚なのです。そのうち再婚同士は9.6%というデータもあります。
「再婚するつもりはないの」そこで彼がとった行動が…
男性は再婚時、「前の妻に似ている」と女性と結婚することが多いと言われます。一方、女性は「前の夫と違うタイプ」と結婚するケースが多いよう。男性は「理想とする女性像」から離れられないのかもしれません。「生活をともにする」ことを考えて、現実を注視する女性とは気持ちが乖離しがちです。
再婚時に夫婦で、「長い時間をかけていろいろなことを話し合った」と言うのは、富沢佐智子さん(44歳・仮名=以下同)です。
「20代で1度結婚し、離婚しています。子どもはいませんでしたが、私はもう結婚するつもりはなかったんです。誰かと一緒に暮らすストレスは私には大きくて。でも恋愛はしたかったし、パートナーがいるのはいいなと思っていました」
離婚が成立したのは30歳のとき。友だちとの飲み会で、史郎さん(47歳)と知り合ったのが35歳でした。気が合って、一緒に美術館や映画館に行くような関係になりましたが、佐智子さんとしては「あくまでも友だち」の感覚。それでも毎日のように電話で話し、週に2回は会うようになり、彼女はだんだん彼に惹かれていきます。
「知り合って半年後、彼から『好きだ。結婚を前提につきあいたい』と言われて、私は引いてしまいました。彼が再婚を考えているなら、私とはつきあわないほうがいいと思ったから、連絡をとるのをやめて…。そうしたら電話がかかってきて、『嫌なら嫌と言ってほしい』と。だから私は『再婚は考えていない』と、ハッキリ言いました。でも、『つきあっていくのは望んでいる』と」
すると彼は、彼女の一人暮らしの部屋を訪ねてきました。どうしてもじっくりと話をしたいというのです。
「彼が言うには、『オレたち、35歳と38歳でしょ。まだまだ、お互いのことを知らない。20歳同士の恋愛とは違うと思う。だから、もっとお互いを知ろうよ』って。言われてみれば“そうだなあ”と、思ったんですよね」
自分をさらけ出し話し合った1週間。心は動き始めた
そこからふたりは年末年始の時間を利用して、1週間、お互いのことをしゃべり続けたそうです。
「子どもの頃、親から言われて嬉しかったことや悲しかったこと、親との関係、幼稚園や小学校のときにあったこととか。彼のことをいいなと思ったのは、何か経験したとき、それについて自分がどう思ったかをきちんと言語化してくれること。私がそれまで知っていた男性は、経験は話せても、自分の気持ちを言葉にするのが苦手な人が多かったんですね」
むしろ佐智子さんのほうが言葉にするのが苦手だったそうです。それでも、佐智子さんも自分の過去を振り返り、少しずつ言葉にしていった。誰にも言えなかった中学時代のいじめのことも、彼には素直に話すことができた。
「もう少し自己主張をしてもいい場面で、『どこか遠慮がちなところがあると思っていたけど、それはいじめの後遺症なのかな』と彼に言われて、“ああ、そうかもしれない”と気づきました」
過去を正直に話すことで、自分の人生を見つめ直すことにもなったそうです。お互いの前の結婚についても、オープンに話しました。離婚に至った些細な原因を話しているうちに、自分の狭量さにも気づいたそうです。
「彼も、自分は家庭を作ることに熱心ではなかったと反省していました。彼には子どもがひとりいるんですが、私たちが知り合った当時10歳で、前妻と暮らしていたので、これからの子どもとの関わり方についても彼の希望を話してくれた。正直で誠実な人だなと実感しました」
休暇中、ひたすらお互いの過去を話し続け、明日からそれぞれ仕事という日、彼は「そろそろまとめにはいろうか」と笑って言ったそうです。
「ここまで自分をさらけ出せたのは初めてだという思いがありました。彼に正直にそう言って、『こういう関係をさらに続けていけたら、いつか結婚もあると思う』って。それは自然に任せたいと本音を言いました。彼は『わかった』と」
他人でいたくないと思った、彼のひと言
ふたりの家は歩いて30分ほどの距離。それからも週に2回は会い、まめに連絡を取り合っているうちに、佐智子さんは「徐々に、片時も離れたくないと思うようになっていった」そうです。
それから1年後、ふたりは結婚しました。きっかけは海外旅行の計画を話していたとき、彼女が「もし飛行機が落ちたり事故があったとき、“他人”として報道されるんだね」と言ったひと言でした。
「ふたりして、『それは嫌だね』と。そのまま婚姻届をもらいに行き、友だちに証人になってもらい提出しました。他人でいたくない—— 、その思いは強かった」
知らない過去の時間が長いからこそ、充分すぎるほど話して相手を知る。お互いにそう思うことが再婚に踏み切れるかどうかのポイントかもしれない、と佐智子さんは満たされた笑みを浮かべて話してくれました。