初めての挨拶は、自分の印象が決まる大切な場面のため、相手に少しでも好印象を与えたいもの。初対面の場面は「初めまして」という挨拶が用いられることが多いですが、顔をあわせずメールで初めての挨拶をする場合は、どのような挨拶文がふさわしいのでしょうか。
ビジネスメールで「初めまして」は使わない?
ビジネスメールを初めてやりとりする相手に送るとき、日常的によく使っている「初めまして」という挨拶をメールでも使ってよいのか、迷うこともあるでしょう。
「初めまして」は、初めて会った人にいう挨拶の言葉です。初めてメールを送るという場面にはあっている言葉ですが、使う際は、次の2つの理由から注意が必要です。
1つ目の理由は、ビジネスシーンにおいて「初めまして」はカジュアルな印象を与えることがあるということ。
社内の同僚や部下など、同等または目下の相手へ送る場合は親しみがあってよいかもしれませんが、社外の取引先や上司など目上の相手へ送る場合はくだけた感じを与えるかもしれません。
気どらないで親しみやすいという印象を与えることが適した場面か、相手かを考えて、言葉を選びます。「初めまして」は「初めてメールをお送りいたします」などの挨拶に言い換え、そのあとに「〇〇社の〇〇と申します」と丁寧に名乗るとよいでしょう。
2つ目の理由は、「初めまして」がスパムメールの件名や挨拶として用いられることがあるということです。
忙しく働いている相手が件名や本文の冒頭だけを見てスパムメールだと判断してしまうと、開封されない、最後まで読んでもらえない可能性は高くなります。
相手への敬意や配慮を言葉に表すのが挨拶です。メールを読んでもらい、良好な関係を築くというゴールに向かうためにも、ビジネスメールにおける「初めての挨拶文」を押さえておきましょう。
初めて送るメールの挨拶文の例
初めて送るビジネスメールに使える挨拶文について、4つのフレーズを紹介します。
「初めてご連絡いたします」
シンプルですが、さまざまなシーンのメールに使いやすい基本の挨拶文。「ご連絡」を「メールをお送り」に言い換えることもできます。
過去に対面や別の連絡方法でやりとりがあった場合は、相手に思い出してもらいやすいよう「初めてメールをお送りいたします。以前〇〇の件でお電話した〇〇です」などと接点を明記するとよいでしょう。
「します」より「いたします」の方が丁寧な印象になります。
「突然のメールにて失礼いたします」
過去にまったく接点のない相手に初めてメールを送るときは、前触れなくメールが送られてくると相手が驚くこともあるのではないでしょうか。
それを防ぐためのクッションとして、「突然のメールにて失礼いたします」と書く方法もあります。
初めて関わる社外や目上の相手には、対面や電話にて挨拶ができると丁寧ですが、メールを使わざるを得ないということも少なくありません。
「本来であれば貴社に伺うべきところ、突然のメールで失礼いたします」などと、望ましい形での挨拶ができないことについて申し訳ない気持ちを伝えると、礼儀正しい印象を与えることができます。
「〇〇様の紹介でメールを送らせていただきました」
相手の警戒心を解くための方法として、初めての相手へメールを送るときは、相手と自分の間にどのような接点があるのか、どのような経緯でメールアドレスを入手したかなどがわかるように書くのもポイントのひとつ。
接点が社外のひとの場合は「〇〇様にメールアドレスを伺い連絡させていただきました」、社内のひとの場合は「弊社の〇〇からご連絡先を聞きメールを送らせていただきました」というように、状況にあわせて敬語の使い方に気をつけることも忘れないようにしたいですね。
「お世話になります」
初めての挨拶に加えて今後の関わりに対する期待を込めたい場合は、「お世話になります」という挨拶でもよいでしょう。
「お世話になります。〇〇社の〇〇と申します。このたびは〇〇の件でご連絡しました」というのも、これからお世話になりますというニュアンスが伝わるので、初めてメールを送る場面に適した挨拶のひとつです。
メールの挨拶文によく使われる「お世話になっております」をそのまま使うと、すでに関りがある印象を与えてしまう場合もあります。初めてメールを送る相手には「お世話になります」として、関係が築けたら「お世話になっております」と使い分けてもよいですね。
メールの件名と用件はわかりやすさが鍵
初めて送るメールを相手に確実に読んでもらうためには、挨拶文だけでなく、件名や、本文に書く用件のわかりやすさも重要です。
ここからは、件名と用件の例をいくつか紹介します。
初めて送るメールの件名の例
- 新製品〇〇〇のご提案
- 〇〇社様担当引き継ぎのご報告
- 〇月〇日ビジネスセミナーに関する問い合わせ
初めて送るメールだからといって特別なことをする必要はありません。メールの件名を書くときに大切なポイントは、本文を読まなくても用件がわかるよう、相手が読んでパッと内容をイメージできる言葉を入れること。
「〇〇のお願い」「〇〇のご報告」など、相手に伝えたいことやしてほしいことを明記し、日時や期日などが決まっている場合はあわせて書くとより伝わりやすい件名になります。
また、自分がわかっていても相手が知らない言葉を使うのでは意図が伝わりません。受け取った相手の理解や気持ちをイメージしながら書いてみると、コツがつかみやすいのではないでしょうか。
初めて送るメールの用件の例
- 新製品について、ご紹介の機会を頂戴したくご連絡いたしました。
- 〇月〇日より〇〇の後任として貴社を担当させていただくことになり、ご挨拶をさせていただきたくメールをお送りいたしました。
- 〇月〇日に貴社が開催されるビジネスセミナーの詳細を伺いたくご連絡いたしました。
メール本文の冒頭で挨拶と自己紹介を済ませたら、メールを送った理由や目的を簡潔にのべるとよいでしょう。
用件について初めから長々と説明してしまうと、メールの内容がかえってわかりにくくなり、相手が読む行為を負担に感じて最後まで読んでもらえない可能性も。
詳細を説明したい場合は、用件を書いたあとで再度詳しく記述したり、資料を別途添付したりするなど工夫して、初めに書くメールの用件はあくまでも短い文を意識することが大切です。
初めてのメールの挨拶でよい印象を与えよう
ビジネスメールにおいて、初めての挨拶は自分の印象を左右する重要な場面です。
「初めまして」を使えるかどうかは相手との関係性にもよりますが、「初めてメールをお送りいたします」「〇〇様の紹介でメールを送らせていただきました」などとする方がカジュアルな印象を避けられます。
顔が見えないからこそ丁寧な挨拶文を心がけ、相手がメールの内容を理解し最後まで読んでもらいやすいよう、件名や用件の書き方にも気を配りましょう。
ビジネスを円滑に進めるためにも、初めてのメールで好印象を与えられるとよいですね。
PROFILE 直井章子(なおいしょうこ)
ビジネスメール教育の専門家。一般社団法人日本ビジネスメール協会専任講師。同協会にて、ビジネスメールの教育研修プログラムの開発、実態調査や検定試験に携わり、研修やセミナーでの講演、執筆など活動は多岐に渡る。著書・監修本に『このフレーズが決め手! 伝わるモノの書き方のコツ』(ナツメ社)、『カリスマ講師に学ぶ!実践ビジネスメール教室』(日経BP社)、『ビジネスメールの常識・非常識』(日経BP社)がある。
取材・構成/岸本優子