必要なものや欲しいものがいつでも購入できて、いつでも飲みに行けてどこでもすぐ食事ができる。そんな便利な都会で生活していると、なんでも揃っている環境が当たり前のようになってしまい、地方での生活がまるで「不便」かのように思えてきます。しかしそんな便利な生活は、私たちの生きやすさやにつながっているのでしょうか? 

「便利」とはかけ離れた生活にも幸せはたくさんある、とおっしゃるのはご夫婦2人で脱サラし、現在は都会から離れて移住生活をしている、さいとう夫婦です。都会から郊外へ引っ越し、現在は相模湖に引越しをされ、ご夫婦で移住生活を満喫されているといいます。今回はそんなさいとう夫婦の奥さまのはるぴんさんに、地方移住についてのお話を伺いました。

 

PROFILE 脱サラさいとう夫婦のタロー(夫)とはるぴん(妻)

ご夫婦ともに在宅ワーカーで、西海岸の通販サイトを経営している。キャンプが好きすぎて、現在は毎週キャンプができる田舎へ移住。キャンプやアウトドアの魅力をYouTube・Instagramで発信中!

4月オピニオンスライダー

自然の中でキャンプをしているかのような生活が理想でした

── 2018年にご夫婦2人で脱サラし、現在は移動をしながらお仕事をされているといいます。このような生活を選んだきっかけはなんでしょうか?

 

はるぴんさん:

夫婦ともに自然が好きだったのが1番の理由です。とにかく自然が好きで、毎週のようにキャンプをしていたので、キャンプ場にすぐいけるような環境が理想でした。「都会の人混みだらけの場所よりも自然がいっぱいある方がいいね」と意見が合ったんです。とくに私は、もともと学校が秋田で田舎暮らしだったので、主人よりも抵抗は少なかったです。


── 実際にお仕事に関して、何か不便なことはなかったのでしょうか?

 

はるぴんさん:

さいわい夫婦ともにパソコンがあればできる仕事をしていたので、特に不便なことはありません。車で生活するバンライファーのように移動しながら仕事をしているわけでもなく、基本的には地方であっても居住地を決め、自宅で仕事をしています。商談や接待なども少なく、あったとしても出張と言う形で対応できるため、問題とは感じていないです。
 

── 地方移住をするにあたって、どのような準備をされましたか?

 

はるぴんさん:

実はそこまでの準備はしていないんです。住む前に調べたこととして、プライベートではペットを飼っていたので動物病院があるかどうか、私が女性特有の病気をもっているので病院があるのかです。仕事に関しては、ネットショップをやっているので近くに配送業者があるのかは重要でした。


── 印象的な土地はどこでしたか?

 

はるぴんさん:

石川県の千里浜と青森県の十和田湖ですね。とにかく今まで見たことがない自然がありました。もともと海が好きなので、千里浜は長いビーチの砂浜を車で走り、十和田湖は透き通った外国のような水辺に癒されました。

石川県千里浜

青森県の十和田湖

「自分たちに不要な情報」が入ってこないことの生きやすさ

── 実際に移住をしてみて、どんなメリットがありましたか?

 

はるぴんさん:

物理的に人との距離が離れてしまったので、都会に比べて圧倒的に人と会う機会が減りました。人混みもないため、今まで当たり前のように入ってきていた情報が入ってこなくなったんですよね。
そのせいか、余計な情報に影響されて、悩んだり、ストレスを感じたりすることがなくなりました。必要な情報は自分でネットで調べますが、知りたいと思っていない情報はいっさい入ってこない。「自分たちに不要な情報」が入ってこないのはストレスフリーの生きやすさに直結していると感じています。
 

夫婦で移住した古民家での暮らしをYoutubeやInstagramを通して発信する2人。キャンプに出かけたり畑を作ったり、「田舎暮らし」ならではの日常を覗くことができる。

 

── 人間関係なども変わりましたか?

 

はるぴんさん:

変わりましたね。人と会うことが減ったので、人と比較したり悩んだりしなくなりました。疲れてこもりたいときはこもれるし、気晴らしも自然でできる、ゆったりとした時間の中で過ごせています。


── お話を聞いているといいことづくめのような気がしますね。デメリットがあるのでしょうか?

 

はるぴんさん:

それが本当にないんです。唯一あげるとしたら、虫が家に入ってくるくらいですかね(笑)。自然の虫は大きいですし、最初は驚きます。

「オンラインで解決できる力」があれば移住しながら仕事はできる

── 移住しながら仕事をする生活が向いている人はどんな人でしょうか?

 

はるぴんさん:

パソコンやネット環境で解決できると人、解決しようと思える人ですね。当然ですが、知り合いは近くにいないですし、田舎になればなるほど御近所さんとの距離も遠くなります。すぐに頼れる人もいないですし。よって、困ったときや必要なことがあったときは、オフラインではなくオンラインで解決することが必要になります。ネットで調べたり、解決したりする力は必須ですね。

 

あとは細かいことを気にしない方には向いていると思います(笑)。
 

── 「移住」に必要なものはなんでしょうか?

 

はるぴんさん:

車や自転車、バイクなどの移動手段ですね。あとはパソコンやスマホ、タブレットなどの通信手段。私たち夫婦の場合は、冬は灯油のストーブを完備しています、自然環境に合わせた温度調節家電も重要です。

「誰でも挨拶をする」「距離感が近い」のは地方ならでは

── 地方ならではの常識や慣習などに戸惑ったことはありましたか?

 

はるぴんさん:

よく聞かれるのですが、今のところはないんです。強いて言うなら、知らない人でもすれ違うと必ず挨拶をするのが驚きました。挨拶は子どもから大人まで誰でもされますね。それは大変良いことだなと感じています。

 

一方で同じ地域の方と話す機会は都会よりも多く、プライベートなことを知られてしまう、ご近所付き合いも多いです。そういったことが苦手な方はいるかもしれませんが、私たち夫婦はいろいろ教えてくださって感謝しているくらいです。

 

── 地方のタブーを犯してしまったと感じた出来事はありますか?

 

はるぴんさん:

今のところはないですが…知らなかったという点でいうと、虫対策をまったく知らなかったことですね。あとは雑草を放っておくと、大変なことになります。自然の成長は恐ろしく早いですよ。

好きなことができて安心感のある”生きやすさ”を手に入れられた

── お二人が感じる地方ならではの「生きやすさ」はなんでしょうか?

 

はるぴんさん:

人々の温かさに触れられることです。こちらに引っ越してきて、1度大きな台風があったのですが、その際も近所の人が避難のタイミングや避難場所を教えてくれて、いざというときの結束力も大きいなぁと感じました。地方だからこその安心感はあります。

 

あとは時間の使い方が自由になりました。余計なことに時間を使うこともなくなったので、仕事以外の時間は自分が以前からやりたかったことや好きなことに時間を使えています。目の前が山や畑なので、気軽にリフレッシュできるのもいいですね。


── 今後はどのような場所に移住をしたいと考えていますか?

 

はるぴんさん:

どこという場所は、今のところはありません。本来は山ではなくて、海が近いところがいいんです。ただ塩害が心配だったり、家賃も高かったりで諦めていました。ただ海の近くに一度は住んでみたいなぁと思っています。あと、いつかは海外移住もしたいです。アメリカ西海岸の雑貨を販売する仕事をしているため、西海岸への移住も憧れです。
 

── 地方移住を悩んでいる方がいたら、どんな風に声をかけたいですか?

 

はるぴんさん:

生活していくうえで環境は大切です。ただ環境は実際に住んでみないと、分からないと思います。私たちはたまたま良い場所に移住できたのですが、風習までは見抜けなかったと思います。

 

もしも仕事の環境やご家族のライフスタイルが地方移住に問題ない環境が作れるのであれば、まずは深く考えずに行ってみてその土地の人たちに聞いてみる、少し住んでみて学ぶしかないです。ネットで出てくるのは限界があると思います。天候も自然の多い場所だと、変化も多くネット情報とは異なることが多いです。 …

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都会的な便利な環境は生活のしやすさにつながっています。しかしいくら便利な環境があっても、人間関係やストレスを感じていては、そこには生きづらさを感じてしまうものです。今回のさいとう夫婦の取材を通して、「生きやすさ」は便利な環境だけではなく、気持ちの安心やリフレッシュ、好きなことに没頭する時間が影響していることに気付かされました。新たな生活環境が求められる昨今。今一度、自分の「生きやすさとはなにか」、考えてみてもいいのかもしれませんね。
取材・文/ひなたきこ