20201218日にCHANTO総研のオンラインイベント「働き方フェス2020」が開催されました。 イベント前半では2020年を振り返るCHANTO総研白書を、相模女子大学特任教授の白河桃子さんと一緒に深堀り。後半では特別ゲストに犬山紙子さんと田村亮さんを招いたトークセッションを実施しました。

CHANTO総研白書から見えた2020年の「生きやすさ」

2020年は新型コロナウイルスによって、生活にも仕事にも大きな変化が生じた一年でした。CHANTO総研では調査結果を働き方白書としてまとめました。詳細な解説は、以下からご確認ください。

 

白河さんは2020年の働き方について「働き方のパラダイムシフト」が起こったと解説。これまで「働き方改革」が声高に叫ばれながらも「朝早くから夜遅くまで職場にいないと仕事をしていないように見える」というような意識が根強く、なかなか働き方を変えられないという現実がありました。しかし、テレワークを導入せざるを得ない事態になったことで、その意識が大きく変わったそうです。

 

「やはり、実際に体験するということは大きいですね。今回テレワークを体験したことで、今後ますます働き方の多様化が進むでしょう」と、2021年以降の展望を語りました。

 

前向きな変化が見える一方で、白河さんはもともと弱い立場にある人に皺寄せがいっている事態についても指摘。特にコロナで男性は約26万人、女性は約74万人の女性が失職したというデータを挙げ、非正規雇用者が多い女性が仕事を失っている厳しい現実を明らかにしています。 

生き方の多様性が見えてきた一年

ハイブリットな働き方がメジャーに?

CHANTO総研白書では、仕事と家庭の変化についてそれぞれ6つのテーマをピックアップして解説。そのなかでも特に白河さんは「サビ残ハラスメント」に注目していました。

白河さんはとくに「サビ残ハラスメント」に注目。テレワークが進んでも、企業は労働時間を客観的に管理すべきとの見解を示した。

 

テレワークの浸透によって働く姿が見えにくくなり、慣れない働き方によって効率性も落ちたためにサービス残業が増えたという生活者の声に驚きつつも「サービス残業は法的に禁止され、企業は従業員の労働時間を客観的に管理しなくてはいけない。働く側もきちんと声をあげていくことが大事」とコメントしていました。

 

また、リモートワークのメリットに多くの人が気づいたと同時に、対面の価値も見直されてきています。「実はコロナ禍以前からIT系のスタートアップ企業などではオフィスを持たずにフルリモートというところもありました。しかし、そういう企業でも年に数回は一箇所に集まってミーティングなどを行っていたんです。今はオフィスの新しい在り方が模索されている時代。リモートワークと出社を組み合わせたハイブリットな働き方が増えていくでしょう」と白河さん。

 

 一人の時間の確保が課題に

家族と過ごす時間が増えたからこそ「ファミリーディスタンス」という発想が重要に。

 

CHANTO総研の調査では、家族の在宅時間が増えたことに対して前向きな声が多く寄せられましたが、同時に家族間のトラブルやストレスが増えたという意見も散見されました。白河さんはフランス在住の友人の話を例に出し、「在宅時間が増えて家事分担などが進むのはいい傾向。それでも家族それぞれが一人で過ごす時間はとても重要」と話し、CHANTO総研が提案した「一畳リノベーション」というアイデアがひとり時間を生み出すきっかけになる可能性を指摘していました。

 

ジェンダーギャップの解消には男性の意識改善が不可欠

毎年日本が非常に低い順位にランクインしていることで話題になるジェンダーギャップ指数。CHANTO総研では、生活者に職場と家庭のジェンダーギャップの意識について調査を実施しました。

その結果、職場においてジェンダーギャップを感じていない・わからないと答える人が7割という数字が見えてきました。この数字について白河先生は「ギャップがあることが当たり前になりすぎている」と指摘。女性が活躍できるように努力するだけではなく、男性の家事参加が進めば女性も仕事に時間をかけられるようになるのではないかという見解を示しました。とくに、今年家事分担が進んだと答えている人は、テレワークが浸透して男性が家庭で過ごす時間が増えたことが大きく関係しているようです。

 

男性が家事や育児を自分ごととしてとらえ、具体的に行動に移すことがジェンダーギャップを解消していく上で重要だと言えるでしょう。

 

犬山紙子さん・田村亮さんと考える「生きやすい社会」

 働き方フェス2020の第二部では白河さんに加え、私生活でママ・パパである犬山紙子さん、田村亮さんをお招きして、生きやすい社会になるヒントを探るトークセッションを実施しました。

リモートワークは最高!でも…

コロナ禍によってオンライン出演が増えている犬山さんは当初「正直、リモートって最高すぎる!」と思ったそう。自宅からスタジオへの移動時間がなくなり、その分を子どもと過ごす時間に当てられることに喜びを感じたと声を弾ませていました。

 

しかし時間が経つにつれ、出演者と同じ空間にいるからこそ作り出せる空気感などが懐かしくなることもあるとのこと。今後の働き方については「リモートと出社、どっちがいい悪いではなく、好きな方を選べるようになるといいですね」とコメント。

 

田村さんはこの一年の仕事の変化について「去年から色々ありまして…謹慎が明けて地上波での仕事を再開するというタイミングでコロナ禍に直撃したんです。だから、復帰したらあまりに変わり過ぎていて、戸惑いつつもその変化に流されたという感じですね」と苦笑い。 

 

男性が家事をメインでやると「ヒモ」?

白河さんは日本の家事分担事情について数字を出した。それは「日本は女性が家事育児に男性の5倍時間をかけている国」だということ。衝撃的な数字ですが、最近では前向きな変化も生まれてきているようです。とくに若い世代を中心に「家事・育児=女性の仕事」という認識が変わりつつあり、家事や育児は夫婦というチームでやるものになってきています。

 

犬山さんはもともと夫が家事をメインに行うという体制でしたが、ときには心ない言葉をかけられることもあったんだとか。「当時は夫が家事をやっていると言うと周りから『ヒモ』と呼ばれることもありました。専業主夫・主婦に失礼ですよね。男とか女ではなく、夫婦でバランスを取ることが大事だと思います」と語ると、田村さんは男性目線で「僕は48歳ですが、同年代の男性は家事をやらないという人が多いと思います。僕もそうでした。ですから、今回の在宅時間が増えたことで、男性等も家事について気づいたことがあったんじゃないかと思いますね」と、2020年の家事分担の変化について語りました。

 

また、家事をやるようになったことのきっかけについては「コロナ禍でステイホームをしたという人が多いと思いますが、僕はそれよりも10ヶ月早くステイホームしていたのでね…。奥さんに心労をかけないために今までやっていなかった家事を率先してやっていたんですよ。そこからコロナが理由のステイホームになったので、その後も家事をやるようにしていました」と苦笑い。

 

イベント参加者からの「ステイホームの先輩として、家事をやってくれない夫にはどうしたらいいか教えてほしい」という質問に対しては「『もっと夫を褒めてあげましょう』みたいな話はよくありますけど、そういうことじゃないんですよね。自分自身で気付けって話なんですよ」と、男性が家事を他人事として捉えている現状に苦言を呈していました。 

 

テレワークがジェンダーギャップを解消する

ジェンダーギャップについてもゲスト2人に聞いたところ、犬山さんは女性閣僚の人数が減ったことに「ジェンダーギャップの解消が後退してしまった気も…」と一言。「これまでは『女性活躍』という形で、女性が家事をメインでこなしつつ、仕事でも活躍をしてという『スーパーウーマン』であることを求められていました。でも、2020年は男性の家事参加も必要だということが浸透してきている。格差をひとつひとつ見直していくことが必要ですよね」と、ジェンダーギャップ解消に向けての課題感を語ってくれました。

 

田村さんは正直なところジェンダーギャップについては実感がないとしつつも、白河さんの「テレビに出演している人などが積極的に発信していくことで、ジェンダーギャップについての意識も変わっていく」という言葉に大きくうなずいていました。

CHANTO総研アワード受賞企業5社が発表 

最後はCHANTO総研が取材した約100社の企業の中から、 今年らしい施策を選んで表彰するCHANTO総研アワードの発表が行われました。今年は以下の5つの施策が受賞。

 

・MSクラウドソーシング(三井住友海上火災保険株式会社)

・家族時短(株式会社ZOZO)

・働き方宣言(サイボウズ株式会社)

・ワークライフシフト(富士通株式会社)

・ワークライフブレンド(株式会社キャスター)

 

詳しくはこちら:CHANTO総研アワード2020結果発表!今年の働き方の課題に解決に結びつく企業施策を選出

 

働き方の多様化が求められている今、自分らしく生きられるような働き方をバックアップしている5つの施策が選出されました。

 

 

仕事も生活も変化が多かった2020年。CHANTO総研は生きやすい社会の実現につながる新しい働き方について、今後も調査と発信を続けていきます。