2030年までにすべてのイケア製品と包装材を、再生可能素材またはリサイクル素材に変更
── 2つ目の項目の、「サーキュラーおよびクライメットポジティブになる」ための具体的な取り組みについて教えてください。
平山さん:
「サーキュラーおよびクライメットポジティブ」とは、つまり「循環型ビジネスへの転換と環境負荷の軽減」ということですが、イケアが目標とするのは、再生可能素材とリサイクル素材をもっと利用すること、事業運営における廃棄物をなくすこと、そして製品のデザイン方法やお客さまに提供するサービスを変えて、製品寿命を伸ばし、製品自体を未来のための資源と考えることです。
具体的な取り組みとしては、2030年までにすべてのイケア製品と包装材を、再生可能素材、またはリサイクル素材にすることで、バリューチェーン(※)で排出する量よりも多くの温室効果ガスの削減を目指しています。
また、イケアでお買い上げいただいた家具の買い取りサービスを提供する事で、製品の寿命を延ばす努力にも取り組んでいます。お引き取りした家具は、メンテナンスを施した上で、イケアのアウトレットで販売しています。
※バリューチェーン:原材料を調達してから商品やサービスが顧客に届くまでの一連の活動のこと
── 限られた資源の中でも、快適な毎日を送れるようにする取り組みですね。イケアの照明製品がすべてLEDで提供していることも、「製品寿命を延ばすための取り組み」の一つですね。
平山さん:
そうですね。LEDは白熱電球に比べてはるかに長寿命な上、消費電力を85%カットできるんです。
また、イケアの全ての商品が、高品質で低価格、デザイン性と機能性にあふれ、そしてサステナビリティを意識して開発されています。この5つの要素を、イケアでは「デモクラティックデザイン」と呼んでいて、使う人にも地球にも優しい哲学といえます。
ここでいうサステナビリティとは、木材や綿など多く使用する資源の責任ある調達や、消費者自身が組み立てを行う「フラットパック」の導入による物流コストおよび輸送中に排出されるCO2排出量の低減などを含みます。
さらに「使い捨てプラスチック」を段階的に廃止し、2030年までにイケア製品および包装材に使用するすべてのプラスチックを、再生可能な素材か、リサイクル素材にするという目標を立てています。コーンやテンサイ、サトウキビ由来のPLAプラスチックの製品開発もその取り組みの一つ。
今年1月には、世界中のイケアで取り扱う、プレートやカップ、ストローなどのホームファニッシング製品への使い捨てプラスチックの使用を廃止しました。現在、イケア製品の60%以上が再生可能な素材を使用しています。2030年までには、イケア製品に使用するプラスチックを再生可能な素材とリサイクル素材のみにすることを目標にしています。
── 「廃棄物を減らす」ための取り組みから生まれた製品は、他にどのようなものがありますか?
平山さん:
「TOMATスプレーボトル」と「SKRUTTデスクパッド」は、リサイクルプラスチック包装から作られており、「KUNGSBACKAキッチン」の扉部分も、リサイクルペットボトルと再生木から作られています。「SKYNKEスキンケ エコバッグ」もリサイクルポリエステルから作られています。
また、今冬には、「MUSSELBLOMMA/ムッセルブロマ」という、海洋プラスチックでつくられた新しいコレクションも発売予定です。
── 世界を代表する家具メーカーのイケアが、リサイクル素材や再生可能な素材を使用した製品を品ぞろえに加えることで、他社もそれを追いかける流れが作られそうですね。
平山さん:
サステナビリティの問題には業界全体で取り組んでいく必要があります。現在の課題は、より多くの人に、「サステナブルな暮らし」を身近に感じていただき、興味を持っていただくために、私たちにできることは何かを追求していくこと。
たとえば、今年9月に「IKEA Better Living」というアプリをリリースしたのですが、このアプリを活用することで、電気を消したり、ごみをきちんと分別したり、プラントベースの食品を選んだりと、毎日のさりげない行動が、サステナブルな暮らしにつながっているという意識を持っていただけます。
「みんなで取り組めば、自宅からのワンアクションが大きな変化を生む」ということを実感してもらえたら嬉しいです。