2015年の国連サミットで採択された「SDGs※」とは、貧困や飢餓、地球環境、経済など、2030年までに達成するべき持続可能な開発目標のこと。採択から5年経った今、企業における自然環境や人間社会の持続可能性を意識した「サステナビリティな経営」が、より一層求められています。
その取り組みは各企業により異なりますが、家具メーカーのイケアでは、2011年に、Chief Sustainability Office(CSO - 最高サステナビリティ責任者)というポジションを設置し 、「できたらいいね」ではなく「やるべきこと」として高い目標を掲げてきました。そしてその取り組みは、私たち消費者に対してサステナブルな暮らしの提案へと確実に繋がっています。
今回はカントリーサステナビリティマネジャーの平山絵梨さんに、イケアのSDGsの現在の取り組みについて伺いました。
PROFILE 平山絵梨さん
※SDGsの17項目
- 1.貧困をなくそう
- 2.飢餓をゼロに
- 3.すべての人に健康と福祉を
- 4.質の高い教育をみんなに
- 5.ジェンダー平等を実現しよう
- 6.安全な水とトイレを世界中に
- 7.エネルギーをみんなに そしてクリーンに
- 8.働きがいも経済成長も
- 9.産業と技術革新の基盤をつくろう
- 10.人や国の不平等をなくそう
- 11.住み続けられるまちづくりを
- 12.つくる責任 つかう責任
- 13.気候変動に具体的な対策を
- 14.海の豊かさを守ろう
- 15.陸の豊かさも守ろう
- 16.平和と公正をすべての人に
- 17.パートナーシップで目標を達成しよう
大人気「ミートボール」を見直し!消費者のサステナブルな選択を可能にした新商品「プラントボール」
── 2011年という早い段階でCSOのポジションを新設して以降、明確な数値設定を掲げた経営で、消費者目線でのサステナビリティの意識を高めているイケアですが、特に注力して取り組んでいる項目について教えてください。
平山さん:
いま、世界中の人々が「より健康的で、よりサステナブルな暮らし」に大きな関心を示しています。特に、家で過ごす時間が増えて、自分の行動が地球に与える影響について、改めて考える機会も増えています。そのような中で、イケアはできる限り多くの人々にとって、より持続可能な暮らしが実現するよう、ゴミの削減や省エネを通したCO2削減をサポートする商品やサービスを紹介したり、気軽に取り入れられるソリューションを提案しています。
SDGsに関連した取り組みで、イケアが具体的に注力しているのは、「健康的でサステナブルな暮らしを届けること」、「サーキュラーおよびクライメットポジティブになること(循環型ビジネスへの転換と環境負荷の軽減)」、「公平性とインクルーシブ」の3つ。
まず「健康的でサステナブルな暮らしを届けること」について。サステナビリティに注力するイケア製品をより多くの人に選択してもらうことで、地球に優しい暮らしにつながっていくと考えています。そのためイケア製品はお手頃な商品価格を保つよう努めています。中には、マイボトルやエコバッグ、LED電球、節水機能のある水栓などの「節約」につながるものも数多くあります。
食品においては、「プラントベースフード」と呼ばれる植物由来の食品の割合を増やしていく予定です。日本では、今年の10月に「プラントボール」という、植物由来の原料のみでつくられた商品を発売しました。この商品は人気商品のミートボールと比較すると、クライメートフットプリント※はたったの4%。製造過程での温室効果ガス(GHG)の排出量を大幅に減少することができました。地球環境を視野に入れた新商品と言えます。
※クライメートフットプリント…カーボンフットプリントと同義で、製品やサービスの原材料調達から生産、流通、排気、リサイクルまで、ライフサイクル全体を通して換算されるCO2の排出量のこと。
── ファンが多いイケアのミートボールをベースにしたプラントボールは、消費者にとっても身近なサステナブルフードと言えそうですね。
平山さん:
そうですね。お肉が好きな人でも、ヴィーガンの人でも美味しく召し上がっていただけるよう、味や食感にもこだわりました。原材料にエンドウ豆のタンパク質、オート麦、ジャガイモ、リンゴを使用しています。肉のような味わいは、マッシュルーム、ジャガイモ、ローストした野菜などのうまみをプラスすることで出しています。
毎年世界中で10億個販売されるミートボールの販売規模を考えると、この内の数パーセントでも代わりにプラントボールを選んでいただくことにより、大きなインパクトとなることを期待しています。