キャリアは「オープンイケア制度」を使って、自分の意志で選択する

イベントでメディアを前にプレゼンする志村さん

 

――イケアでは、働き方の選択は自身に委ねられるとのことですが、社内公募のような制度があるのでしょうか?

 

志村さん:

「オープンイケア」という社内公募制度があり、異動や配属のほとんどがこの制度の活用によって決まります。社員がアクセスできるポータルサイト上で新設部署や欠員のある部署が応募可能枠として公開されるので、希望があれば応募することができます。

 

私はこれまで2回の異動を経験していますが、いずれもオープンイケア制度を利用しました。ストア勤務はシフト制、サービスオフィスはフレックスタイム制になるので、ライフスタイルに合わせた働き方の選択や、自分の意思で新しい業務に挑戦することができるのも、イケアの働き方の魅力の一つです。

 

――まったくの未経験の分野でも、新しい部署での挑戦ができる体制があるという部分から、「長く自分らしく働いてほしい」という会社側のメッセージを感じますね。

 

志村さん:

そうですね。たとえば、今まで商品を取り扱うセリング部門で働いていた人が、人事や物流の部署に異動することも珍しくありません。イケアでは「自分らしく働くことが大切」とする理念があり、キャリア形成も「自身の選択」で築いていくことを推奨されます。

 

辞令が出て異動するのではなく「自分のキャリアを自分で決める」ことで、仕事に対するコミットメントや情熱が変わってきますし、一つの部署においても、さまざまなキャリアを持つ人が集まってチームを作っているので、多彩な才能と個性を知ることができます。

 

働くコワーカー全員に平等な機会が提供されていることもオープンイケア制度のメリットの一つだと思います。

 

――オープンイケア制度についてのデメリットや課題感はありますか?

 

志村さん: 現状、課題として感じていることは特にないです。時には募集先のマネジャーから声をかけられることもありますが、それを受けるかどうかも自分次第。同じ場所に留まりたいという人は異動せずにいますし、もっとこんなことをやりたいという希望がある方は、いろいろな部署を経験していくことができます。イケアの社員としての知識があれば、どこの部署に行っても働けるのがイケアの特徴です。

 

――転職せずともキャリアチェンジができるのは社員にとっても大きなメリットですね。

 

志村さん:

オープンイケア制度は、働くお母さんにとっても良い制度です。ストア勤務は土日勤務が多いのですが、サービスオフィス勤務だと基本的に土日が休みになります。

 

「夫の仕事の休みに自分も合わせたい」という理由で、土日休みの部署を選ぶ人もいれば、土日に子どものことを旦那さんに見てもらって、平日は自分の休みを使って学校行事に参加している人もいます。

 

「こんな仕事に挑戦したい」という希望と、「こんな風に家族との時間を持ちたい」という希望両方を叶えることができるので、自分自身と家族が幸せでいられる働き方を考えた上で、キャリアを選択している人が多いですね。

 

――志村さんはオープンイケア制度を使って、ストア勤務から現在のサービスオフィスに異動したそうですね。

 

志村さん:

2019年の秋に、オープンイケア制度を使って異動しました。現在はフレックスタイム制で働いています。グローバルオフィスとのミーティングが夕方や夜中に入ることもあるので、日中の業務を一時中断して「中抜け時間」を作ったり、昼頃に出勤して夜まで勤務するなど、柔軟に対応しています。

 

――グローバルオフィスとのやり取りは、主に英語で行われているんですか?

 

志村さん:

イケアでの仕事は、グローバルオフィスとのミーティングや、プレゼンなどで英語を使う機会も多いので、入社してから独学で学びました。幸いにも、同じ部署に外国人の同僚がいるという環境だったので、語学学校に通わず、仕事中に積極的に英語でのやり取りをすることで身についていきました。語学などのスキルアップのための学びも、キャリア形成と同様に自発的に行動することが求められます。

 

先日、9日間のリーダーシップ研修を受けてきたのですが、そこでは「どのようなマネジメントが望ましいか」ではなく、「自分のリーダーシップはどのような状態か」についてを掘り下げていく内容でした。自分の特徴や強みを認識して、どのように仕事に活かして成長していくかを考えさせられました。

 

――チームを引っ張っていく立場として、「どのように」のハウツーではなく「どうあるべきか」を考える研修だったということですね。こういった研修内容にも、イケアらしさが見られますね。

 

志村さん:

イケアでは「自分らしくあること」が尊重されます。イケアバリューを理解し、共感した上で、自分自身が長けているところはどこかを考えて働くことが大切なんです。

 

私の場合は、「人に対して正直でオープンであること」。お客さまに対しても形式的な接客をするのではなく、オープンマインドで相手に寄り添った対応を心がけていますし、一緒に働いていく仲間との協調も大切にしています。

 

「自分がどうありたいか」を考えることが生き生きと働くためのマインド

 

 

「自分らしく働きたい」と望む人が多い現代で、会社側から「自分らしく働いて」と呼びかけるイケア・ジャパン。キャリアチェンジを自分の選択で行う「オープンイケア制度」や、スキルアップのための自発的な学びの推奨など、自由度が高い分、その選択は自己責任。「指示されたから仕方なく」という依存心ではなく、自立心を養う社員の育成も「自分らしく働く」を叶えるポイントなのかもしれません。

 

取材・文/佐藤有香