多様性が低い、同列主義の日本では「最初の一歩」が難しい

「ダイバーシティ&インクルージョン・ウィーク」期間中に開催されたP&G社内イベント「ダイバーシティ&インクルージョン・デイ」では、US本社の社長による講演が行われた

 

──P&Gは外資系企業ですが、海外と比べて日本での働き方や文化で目立つ傾向はありますか?

 

今瀬さん:

日本人は控えめな性格の人が多いですよね。プライベートなことや困っていることを「(他人と)共有してもいいのかな?」と遠慮してしまう人が多いように感じます。一方でヨーロッパやアメリカでは移民が多いので、多様性がある社会が当たり前となっています。日本は島国という立地的な条件もあり、文化や人種が混ざり合う環境が他国と比べると少なく、「出る杭は打たれる」ということわざがあるように、規格からはみ出している人に対して厳しい面があります。そもそもの「違いを認める」という最初の一歩が、難しいのかなとは感じます。

 

──それは思い当たります。専業主婦期間などキャリアの空白があると就職しにくい、転職回数が多いことがマイナスに見られる、未経験業務での就職のハードルが高いなど、確かに「異質なものを認めづらい」面はありますね…。

 

今瀬さん:

弊社だけが変わっていっても、日本社会全体が変わっていかなければ意味がありません。例えば弊社で社内婚している夫婦ならうまくいくかも知れませんが、パートナーの片方が残業が当たり前の会社で働いていれば、子育ての抜本的な解決にはなりません。

 

そのためにも、知識やノウハウはシェアしてシステム化した方がいいと考えています。これまでP&Gでは約400の企業・団体に研修プログラムなどを無償提供してきましたが、それは大半のトレーニングを自社の人事部主体で行ってきたからこそできたことです。今後も多様性の受容と活用を推進するために、ダイレクトに働きかけていきたいと思っています。

 

 

「制度」「文化」「スキル」の3つが多様性の尊重には必要だと考えるP&G。多様性を受け入れて活用するまでには時間がかかりますが、働きやすい環境づくりはもちろん、採用活動や新規のビジネスアイデアなど多方面への活用もできます。より大きな視野で問題を見据えていくことが、社会概念全体のアップデートにつながるのではないでしょうか。

 

取材・文/秋元沙織