効果は期待しない。子どもを知るきっかけになればいい
──小さな頃から読み聞かせをするなど、読書習慣を身につけると本が好きな子どもが育つと言われますが、甘木さんは特にそうしたことは意識してこなかったそうですね。
甘木さん:
小さな頃は毎日読み聞かせをしていましたが、今年中学2年生になった息子は大のSF好き、小学5年生の娘の将来の夢はパティシエで、2人とも本が大好きというわけではありません。絵本によって何か特別な能力が開花したというわけでもないですが、それで全然いいと思っています。
そもそも私の読み聞かせは、教育や教養のためではなく、それによって子どもとの距離が近づくのがうれしくてやっていたもの。絵本はお勉強じゃないですし、ましてやお薬でもありません。これを飲んだらこの能力が伸びるという類のものではないんです。
子どもと自分が一緒に楽しめればそれでいいという感じで、皆さんにももっと気楽に絵本を楽しんでもらいたいですね。
──どんな絵本を読み聞かせたらいいか悩む親御さんも多いと思うのですが、絵本選びのポイントはありますか?
甘木さん:
自分が小さい頃に好きだった絵本を読んでみるといいと思いますよ。久しぶりに読むと、すごく細かい部分まで鮮明に覚えていて驚いたり、反対に全然違う風に覚えていてびっくりするようなこともあって、新鮮な気持ちで読むことができます。
最初は興味を示さなくても、大人が楽しそうに読んでいると近寄ってきて、チラっと見てきたり、「読んで〜」って言ってきたりすることもありますよ。まぁまったく興味を示さないことも多々あるんですけど(笑)。
いずれにしろ、期待しすぎないことですかね。大切なのは子どもと大人が同じ時間を生きていること。別々の本を読んでいても、同じ空間にいるだけでいい。一緒に過ごすこと自体を楽しめれば、それだけで子どもとの大切なコミュニケーションの時間になっているのだと思います。
──絵本は子どもの知的教育のためだけにあるものではなく、私たち大人が童心に立ち返り、子どもの心を理解する手助けをしてくれるものなのかもしれません。皆さんも、時にはお子さんのためではなく、自分のために絵本を手に取り、幼い頃の遠い記憶に思いを馳せてみてはいかがでしょうか?
次回は甘木さんに、おすすめの絵本を紹介していただきます。8/1(土)公開です。
取材・文/上野真依 撮影/河内 彩 撮影協力/くわのみ書房