絵本は総合芸術、デザインの自由さを堪能してほしい
──絵本の魅力を語る上でもうひとつ忘れてはならないのが、デザインの美しさなのだそう。
甘木さん:
本の形や大きさ、紙の材質、文字のフォントやその配置など、大人向けの本よりもずっと自由度が高いのが絵本。制約がない分、そうしたひとつひとつに作家やブッククリエイターの意図があると思うので、そこを深読みするのが楽しいですね。
いい本に出会うと、「やっぱりこの紙じゃないとだめよね」とか、「インクの匂いがいいな〜」なんて考えながら、本をスリスリしたり匂いを嗅いだりしているので、かなり気持ち悪い人になっていると思います(笑)。物語の構成や文章、イラストらすべてが組み合わさってひとつの作品が生まれるという点で、絵本は素晴らしい総合芸術だと思っています。
──さすが1000冊以上の蔵書を持つ甘木さんらしい、なんともマニアックな楽しみ方!さきほど紹介した『しろねことくろねこ』も、その美しさで甘木さんを魅了した作品のひとつなのだそう。
甘木さん:
まず最初に手に取った理由が、「変わった絵本があるな」と思ったからなんです。本に箱型のケースがついていたり、背が布になっていて表紙に箔押しが使われていたり、作者の熱意のようなものが伝わってきました。
──遂には絵本への探究心が抑えきれず、製本をされている工場を見学に行ったこともあるんだとか。
甘木さん:
実際に作業工程を見てみると、こんなに手作りなんだ!と思ったのが第一の感想。
思ったより手作業が多くて、そこからまた格段に絵本に対して愛おしい気持ちが増していきました。
最近は、電子絵本も人気ですが、私は断然紙派。電子絵本も触ると音が鳴ったりして楽しいよねとは思うんですけど、紙に印刷された後、製本されて絵本になるという一連の工程を経て作られた、紙の絵本が大好きなんです。