女性ホルモン「エストロゲン」は、女性の若さと美しさの要。エストロゲンの分泌量が正常なら、外陰部や膣も若く保たれます。

 

それに大きく関係するのは、やはり「セックス」。「もういい歳だし」なんて思わず、いくつになっても良いセックスを楽しめるのが理想です。

 

女性の性機能改善に特に力を入れている女性泌尿器科医の関口由紀先生に、40代からの女性のセックスについて伺いました。

 

<取材協力>関口由紀先生
女性泌尿器科専門医、女性医療クリニックLUNAグループ理事長。横浜市立大学医学部泌尿器科客員教授。世界標準の女性医療をめざし、女性医療クリニックLUNAグループを展開。女性泌尿器科、女性内科、婦人科、乳腺外科、美容皮膚科と、幅広い診療科を設けている。女性の性機能、性の悩みも専門とし、FSD(女性性機能障害)外来も開設。

 

年齢とともに「性欲がなくなる」わけじゃない

「女性の性機能にかかわるのは女性ホルモンのエストロゲンですが、性欲にかかわるのはテストステロンという男性ホルモン。

 

女性だから男性ホルモンがないわけじゃなく、誰にでも存在するものです。

 

ただその量に違いがあって、テストステロンが多い女性は性的意欲が高く、少ない女性は性欲が低いことがわかっています。

 

女性の性行動は、女性ホルモンと男性ホルモンのバランス次第なんです」と関口先生。

 

そのため、更年期以降の女性の性的意欲や性生活には、かなり個人差があるのだそう。多くは3パターンに分けられるといいます。

 

<パターン1>
エストロゲンの減少で膣が潤いにくくなり、痛みで性的意欲が減る
→痛みを感じることは、誰だってしたくないはず。性交痛を感じると、性的意欲が自然と落ちてしまいます。

 

<パターン2>
エストロゲンの減少で相対的に男性ホルモン優位になり、性的意欲がアップする
→男性ホルモン優位になると、快感にかかわる脳内神経伝達物質の「ドパミン」が増えます。これまでよりセックスを気持ちよく感じたり、意欲が高まることもあります。

 

<パターン3>
性ホルモン変動の影響をあまり受けず、これまで通りに楽しめる
→更年期以降もこれまでと変わらずセックスを楽しめます。また更年期前後に卵巣が〝最後のがんばり〟を見せ、エストロゲンが増加する人も一定数います。肌がツヤツヤして女性としての魅力が高まることも。

 

iStock.com/takasuu

 

このうち、セックスについて問題を抱えることになるのが<パターン1>の女性。 ではどうすれば、セックスを無理なく楽しめるようになるか、見ていきましょう。

 

痛みを感じるなら潤滑剤を試してみて

女性の閉経年齢は、4555歳頃。そして閉経女性の2人に1人は

「GSM(閉経関連尿路生殖器症候群)を発症するといわれています。 GSMとは、エストロゲンの減少によって起こる、陰部と泌尿器、性的機能のトラブルのことです。

 

関口先生によると「GSMは、40歳くらいの女性でも発症します。

これまでちゃんとセックスできていたのに〝最近なんとなく痛い〟と感じるようになったら、まず外陰部と膣の保湿、そして「ちつトレ」を試してください。

 

それでも症状が改善しない場合は、GSMの疑いがあります。まずは女性外来や婦人科で診てもらいましょう。

 

GSMとわかったら、治療法はいろいろ。ホルモン治療やレーザー治療など、選択肢はいくつもあるので、自分に合った方法、望む方法を選んで治療できます。

 

日常的なケアとしては、保湿に加え、セックスのときに潤滑剤を使いましょう」

 

iStock.com/Irina Shatilova

 

GSMやその予備軍になると、外陰部や膣が徐々に萎縮してきます。結果として、〝ぬれにくい〟状態に。これが性交痛の原因です。

 

そもそも、セックスのときに出る分泌液(愛液)とは、膣壁の血管からしみ出る組織液のこと。挿入前の十分な前戯によって分泌され、ペニスをスムーズに挿入できる状態になります。

 

年齢とともにぬれなくなると思われがちですが、いくつになっても、セックスのときにしっかりぬれる女性は多いのです。

 

しかしGSMを発症したり、疲れやストレスでホルモンバランスが乱れてしまうと、女性の身体はたちまちぬれにくくなります。

 

これを改善するには、まず無理のない生活を送り、心身をいたわること。そのうえで、潤滑剤をたっぷり使って、痛みのないセックスを楽しみましょう。

 

潤滑剤はカップルで楽しむ時代

「かつては、ぬれにくいということが女性としての衰えと思われていたんです。

 

だから女性たちは人目を忍んで、婦人科でリューブゼリーという潤滑剤をもらって、こっそり使うという感覚でした。

 

でも、いまは違います。〝カップルで選んで楽しむ〟のが、いまどきの潤滑剤の使い方なんです。

 

セックスを生殖のみに限定せず、コミュニケーションやプレイの意味でとらえるならば、たくさん使ったほうが楽しいですよ」と、関口先生。

 

iStock.com/RyanKing999

 

おもな種類としては、ジェルとオイルが定番だそう。香りのいいもの、お菓子のような味がついているもの、フランス製のすてきなパッケージのものなど、バリエーションは本当に豊富。

 

最近ではネット通販でも気軽に購入できたり、女性誌で〝ラブコスメ〟としてとり上げられるなど、トレンドの分野といってもいいかもしれません。

 

使いかたは簡単で、セックスの前にたっぷり塗るだけ。コミュニケーションとして楽しむ意味でも、パートナーに塗ってもらうといいでしょう。オイルなどを、お互いの体に塗りあって楽しむこともできます。

 

パートナーに言えないとき「女性外来」を活用

「潤滑剤を使いたいけれど、はずかしくて相手に言えない……」そんな女性も、なかにはいるのではないでしょうか。

 

でも、痛みを感じたままで、パートナーとのセックスを無理に続けるのは、ストレスにしかなりません。

 

かといって、セックスを拒み続けるのも問題。〝互いにふれあう〟ことは、男女間のコミュニケーションとしてとても大切な要素だからです。

 

どうしても言い出せないときは、関口先生のような女性外来の医師を頼ってみましょう。

 

女性外来や婦人科で性交痛があることを伝えて診てもらい、そのうえで潤滑剤についてのアドバイスをもらいます。


関口先生いわく「私の患者さんでも、潤滑剤について、パートナーに言い出せないという女性が少なくありません。

 

そんなときは〝これが私のいち押し! 素晴らしいからぜひ使って!〟と明るくプッシュします。

 

パートナーにも〝先生にこれを使うように言われた〟と話してもらいます。一度使ってみれば、男性としても違和感なく楽しめるようになると思いますよ」

 

iStock.com/Pornpak Khunatorn

 

「人生100年」とまで言われる時代。年齢を重ねても女性として美しく、楽しく生きていくために、いくつになってもセックスを楽しめるといいですね。

 

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文:川西雅子