子どもが野菜を食べてくれない…。親なら誰もが直面するこの問題。

 

「野菜も食べないと大きくなれないよ」なんて口では言ってみるものの、そもそも自分がよくわかっていないものだから、そりゃ説得力もないわけで。今日も我が子はお皿の端にちょこんと野菜を残してく。

 

そもそも、野菜の栄養って…何!?

 

そんなギモンに切り込んだ回答をしてくれるのが35年間“八百屋のオヤジ”として野菜と向き合ってきた内田悟さん。

 

現在では、レストラン専門青果店「築地御厨(つきじみくりや)」から旬の野菜を届けつつ、定期的に開催する野菜塾などを通じて、野菜の選び方を提唱しています。

 

1記事目は「まずママが知ろう。間違いだらけの野菜の常識」。

「子どもに野菜を食べさせたい」と漠然と感じているママは多いかと思いますが、それはなぜなのか?原点に立ち返って考えてみましょう。そこには、じつは間違っている野菜の常識があるかもしれません。

目次

野菜で一番大切なことは「旬を食べること」

 

「野菜の正しい知識」について内田悟さんにお話を伺ったところ、「まず理解しなければいけないこと」についてお話しいただきました。

 

「現代では、ほとんどの野菜が一年中食べられるようになっていますよね。これは、実は、とても危機的な状況です。『野菜が体にいい』なんていう表現を安易にしてしまうことが、そもそも間違ったこと。野菜自身が一番栄養を蓄えるのは、『旬』の時期。野菜は、季節によって状態を変えるんです。だから野菜は野菜でも、『旬の野菜を食べること』が大切です。旬の野菜を1年を通じてゆったりとしたサイクルで食べることで、人間の体にとって素晴らしいサプリメントになります」

 

戦後の農業事情で野菜が品種改良されて、「いつがその野菜の旬なのか」が分かりづらくなっている現代…。

 

「とはいえ、昔からその野菜の持っている旬の時期は変わりません。だから、そこに準じて、旬をいただくことが大切です。そこを抜きにして、『野菜が体にいい』と語ることは、意味がないと思います」

「緑が濃い野菜ほど栄養価が高い」は間違っている

 

野菜を選ぶときに、緑が濃いものほど栄養価が高いと思いがちですが、実はそれは間違った常識なのだそうです。

 

「緑黄色野菜は、鮮やかな緑をしているほうが健康的に見えるという人が多いかと思いますが、じつは間違っています。緑が薄い野菜のほうがいい理由は、『クチクラ層』と呼ばれる野菜の表面を覆う膜が作られている証拠だから。クチクラ層は、野菜自体を乾燥や紫外線、病害などから守ってくれるもの。加熱することでこの膜はとれて、本来の鮮やかな緑色になります」

 

例えば冬の季節に旬を迎える春菊。春菊といえば緑が濃いというイメージを持つ人も多いかと思いますが、旬を迎えると、写真のような淡くて美しい緑色になるそうです。「旬の春菊は、サラダなどにして、生で食べることもできるんですよ」

 

「虫がつく野菜は安心」は間違っている

葉野菜に虫がついているのは「おいしい野菜の証拠」という説をちらほら聞くことがありますが、じつはこれも間違っているそうです。

 

「病害虫は野菜を食べているのではなく、肥料に集まってきています。その対策をすべく農薬が使われることも多いため、『虫がついている野菜は、農薬が使われた環境で育っている』という可能性も高いのです」

「酵素が豊富な生野菜を多く食べるべき」は間違っている

とにかく野菜を食べなきゃ!と生野菜のサラダを食べることもありますが、じつはこれもオススメできないそうです。

 

「生野菜には酵素が豊富に含まれてるからといって、生野菜を中心に摂取している人も見受けられます。じつは生野菜は消化に時間がかかってしまい、胃腸への負担もあります。酵素が含まれているのは野菜だけではなく、肉や魚、そして醤油や味噌などの発酵調味料にも含まれていることは研究によって明らかにされています。酵素を取るために『生野菜』にこだわらずとも、肉や魚、醤油や味噌をバランスよく食べることが大切です」

「スムージーは体にいい」は間違っている


野菜を効率的に摂取する目的で、毎朝スムージーや野菜ジュースを飲むことを定番にしているというママも多いのではないでしょうか。じつはこれはオススメできないそうです。

「旬以外の野菜を食べてはいけないということでは決してないですが、やはり野菜の栄養を摂取する大前提は『旬の野菜を食べる』ということです。旬の野菜のスムージならまだしも、これを無視していろいろな野菜をミックスした状態でスムージーで摂取しているのが、いいとは思えません。『体のために』という理由でスムージを摂取しているなら、いまいちど、考えてみてください」

 

「新タマネギが旬」は間違っている


例えば、タマネギ。「新タマネギ」と呼ばれるものが出回って、あたかもそれが旬であるもののような伝えられかたをしていますが、じつはこれも間違っているそうです。

「野菜には、1年に1度しか旬はありません。タマネギの旬は、一年を通して晩秋から初冬にかけての『寒露』と呼ばれる時期です。肥料によって栽培される春の新タマネギは、本当の『旬のタマネギ』ではないのです」

 

次の記事では、「子どもが野菜を食べない問題」について、伺いました。

 

PROFILE 内田悟さん

1955年北海道生まれ。フランス料理店で修業中に野菜への関心を深め、26歳より23年間青果納品業に勤務。その後築地場内の仲卸店で有機無農薬野菜のコーナーを立ち上げたのち、2005年東京中央区にレストラン専門青果店『築地御厨』を創業。信頼できる青果店として評判を呼ぶ。2007年からは、一般消費者にもきちんと野菜と向き合ってほしいと、本業のかたわら、無料で「やさい塾」を開講。安全安心な野菜の選び方や扱い方を独自の視点でわかりやすく伝え、幅広い支持を得ている。野菜の目利きとしても、テレビ、雑誌などで活躍中。『間違いだらけの野菜選び(KADOKAWA)』、『子どもと大人のやさいの本 やさいのことがよくわかる、やさいの味方(芸文社)』など、著書多数。

取材・文/松崎愛香 撮影/斉藤純平 取材協力/築地御厨