妊娠したら必ず1人に1冊は手渡される「母子手帳(母子健康手帳)」。でも、妻の出産を経て親になるのは男性だって同じですよね。

 

実は、日本全国には母子手帳だけでなく「父子手帳」が発行される自治体もあるんです。

 

今回は、各地の父子手帳はどんな内容なのか、どうやったらもらえるのか、自分の市町村にない場合はどこかで購入できるのか…といった疑問にお答えします。

「父子手帳」とは。誰でももらえる?


母子手帳は全国的に様式が決まっていて、妊娠の経過や子どもの成長・検診の記録など記載すべき内容も法的に定められ共通になっています。

 

一方、父子手帳は各自治体が独自に発行しているもので、発行者によって内容はさまざま。

 

母子手帳は赤ちゃん1人につき1冊必要ですが、父子手帳は第1子の妊娠時のみということも多く、基本的には男性が妊娠・出産・育児についての知識を深め、夫婦が協力して赤ちゃんを迎えられる助けとなるような内容になっています。

 

全国で最初に父子手帳が発行されたのは1995年で、東京都と石川県で配布されました。現在では全国共通版のほか、16都府県の父子手帳が公開されています。

現役パパとママに聞いた「こんな父子手帳が欲しい」


今回は、0歳から14歳のお子さんを持つパパ・ママに、「父子手帳」を知っていますか?とたずねてみたところ、回答は

 

・知っていた…42% ・知らなかった…58%

 

となり、約半数の人が父子手帳の存在を知っていました。

 

しかし実際に配布された人は25%と、4人に1人にとどまっています。

 

実際に父子手帳を受け取った人からは次のような感想が寄せられました。

 

「夫にすぐ渡しちゃいましたが、基本的なことがきちんと書かれていた印象です。ありがたいなーと思いましたが、夫は活用できないだろうなーとも思いました」(Hさん・33歳・4歳児のママ)

 

「長男の生まれたときにはまだ父子手帳はなく、次男の出産時に始めて手にしました。時代が変わってきたんだなあと印象深かったです」(Sさん・6歳児と1歳児のパパ)

 

「夫に渡された父子手帳を私から見ると、フリースペースの記入欄が多くて、夫に使いこなせるのかな?と思ってしまいました。妊婦の身体の変化についても書かれていたので、その点については読んでしっかり意識してくれたらうれしいなと思いました」(Yさん・3歳児と0歳児のママ)

 

一方、父子手帳がなかった人に「もらってみたかったですか?」と聞くと、71%と多くの人が「はい」と答えました。

 

「父子手帳はどんな内容がいいですか?」という質問には次のような答えが。

 

「妻と違って、妊娠出産向けの雑誌やサイトをあまり見なかったので、基本的な子どもの発達やお世話の仕方などが父子手帳にまとまっていると助かりますね」(Kさん・.37歳・5歳児と2歳児のパパ)

 

「産後はできるだけ妻をサポートしたいと思っていたので、妊娠出産で母体にどのくらいのダメージや負担がかかるのか、身体の変化などがわかりやすく書かれているといいと思います」(Dさん・33歳・1歳児のパパ)

 

「女性と違って、子どもの顔を見るまではなかなか父親の実感がわかないので、妊娠中から父親としてできることを知りたかったです。また、子供へのかかわり方について、叱り方やどういうことをすると虐待になるのかといった具体例も欲しいです」(Tさん・35歳・2歳児のパパ)

 

「子どものことを記録しておけるような手帳だといいですね。初めて喋った言葉、初めてパパと呼んでくれた日にちなど」(Eさん・31歳・0歳児のパパ)

 

「妻や子どもと幸せに暮らすために具体的に何をしたらいいのか」というヒントがまとまった父子手帳が求められていることがわかります。

全国の父子手帳には工夫がいっぱい

インターネットで見られる各自治体の父子手帳には、パパになる男性に役立つヒントや、ママになる女性から見てうれしいアドバイスもいっぱいです。

 

大分県の発行している『お父さんのための子育てガイドブック「楽しむイクボン」』では、妊娠初期~中期~後期~出産後と、時期ごとに「これがパパができること」として、具体的に記載しています。

 

【パパにできることの例】

妊娠初期…タバコをやめる、重い荷物を持つ、ママの身体をいたわる 妊娠中期…父親学級に参加する、お腹に話しかける、2人の時間を楽しむ 妊娠後期…ママの不安を聞く、マッサージ、家の中のモノの位置や家事を覚える

 

山口県の『お父さんの育児手帳』では

 

「つわりの時は吐き気だけでなく、疲労感や気持ちの落ち込みも伴うので、ママに無理をさせないことが基本です」 「赤ちゃんがよく泣くからといって、母乳が足りないのでは?という心配ごとを口に出すとママは深く傷つきます」

 

など、知っているようであたらめて言われなければ気付かないママの気持ちをきめ細かく伝えてくれています。

 

そのほか、

 

「会社に育児休業制度がない時はどうすればいい?」 「上司が育休を認めてくれそうにない時は…」

 

と、育児休業の申請方法や職場対応などパパ向けの育休情報が充実しているものもあります。

 

父子手帳はいつどこでもらえる?購入は可能?


妊婦さん全員に必ず交付される母子手帳とは違って、父子手帳を作成したり配布したりするかどうかの判断は各自治体に任されています。

 

父子手帳配布を実施している自治体では、母子手帳の交付と同時に手渡されることがほとんどですが、引っ越しなどで手元にない場合、役場の窓口で申し出ればもらうことができます。

 

また自治体配布用として出版されている「父子健康手帳」(1冊85円・税別)を、通販で一般の人が購入することも可能です。

 

しかし、居住地で父子手帳が用意されていなくても、厚生労働省の「イクメンプロジェクト」のウェブサイトを見れば、全国版の『さんきゅうパパ準備BOOK』をはじめ、全国各市町村の父子手帳の内容を見たり、ダウンロードしたりできるようになっています。

 

パパ自身がスマホやタブレットにダウンロードしてもいいですし、「夫にも出産育児について知ってほしい」「パパになる自覚を持ってもらえるきっかけがあれば」と考えるママが、ダウンロードして印刷し、手渡すのもいい方法ですね。

 

また自治体の中には父子手帳に掲載するような内容をまとめたウェブサイトがあり、スマホなどから見る形式の自治体もあります。ママの妊婦検診時や広報誌などで案内があるはずですが、見逃すこともあるかもしれませんので、一度お住まいの自治体のホームページなどで確認してみましょう。

 

おわりに


妊娠期間を通じて否応なしに身体が変化していくママと比べると、パパは「自覚を持とう」と思っても具体的にどうすればいいのか分からないことも多いでしょう。

 

そんな時、コンパクトに必要なことがまとまり、楽しく読む工夫がこらされた「父子手帳」は思った以上に役立つかもしれませんね。

 

ママのサポートや育児情報などに関しては、居住地のものでなくても参考になる内容ばかり。

 

出産を控えた2人で、いちど各地の「父子手帳」をスマホで開いてみてはいかがでしょうか。

 

文/高谷みえこ

参照/内閣府「さんきゅうパパプロジェクト」
厚生労働省「イクメンプロジェクト|全国父子手帳コーナー」
東京法規出版「父子健康手帳」