実家は母の「夢の城」に変身していた(孝子さん/35歳/SE)

 

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私の実家は、いま住んでいるマンションとおなじ県内にあります。結婚後は忙しくてあまり帰れず、お正月にひさしぶりに顔を出しました。玄関にはかわいらしいお正月用のリースが飾ってあったのですが、ドアを開けてビックリ。 玄関ドアの内側にも大きな花飾りがあり、靴箱の上には花びらの手作りキャンドル、洋室やリビング、壁や天井にまで…あらゆるところに花が埋め尽くされていたんです。 「アートフラワーよ。すてきでしょ? ずっとお花に囲まれて生活したかったの」と、母は満面の笑顔。なかでも一番変わってしまったのは私のかつての勉強部屋でした。 ずっと自分の部屋がほしかったようで、私が結婚して家を出たあとすぐに部屋の模様変えをしていたようで。いまではすっかり母の作業部屋になっていました。 ちなみに私が勉強部屋でずっと使っていた本棚は捨てられ、その代わりに北欧風の飾り棚が壁に取りつけられていたんです。もうこの部屋は「母のお城」なのだと悟りましたね。 母の好きな飾りや小物は壊れやすいものが多いので、元気に走るまわる息子たちを連れてくるわけにもいかず、すっかり様変わりした実家には、もう落ち着いて帰ることができません。

 

実家の居心地がかつてほど心地よい場所でなくなるのは、ちょっぴり淋しい気もします。でもそれは自分や実家の両親たちの人生がまえに進んでいる証拠なのかもしれません。実家より自宅の方が居心地がいいというのも、いまが充実しているからこそ。立派に成長し、自立できたことを両親に感謝したいですね。

 

文:秋元一花