このところ社会問題になっている〝教育虐待〟という言葉。「子どものため」という名目の行き過ぎたしつけや教育で子どもは追い詰められ、親自身は気づいていないケースが闇を一層深くしています。特に父親の教育参加が高まっている近年、その弊害も生まれていて…「教育熱心なパパ」が子どもと家族を追い詰めてしまった体験談です。

 

 

iStock.com/recep-bg

教育パパたちが子供や家族を追い詰めてしまったケース

叱られることに怯える娘(かなさん/32/薬剤師)

旦那は育児や家事にかなり協力的で、娘の教育にはとても熱心。知育玩具を手当りしだいに買い与え、少しでも苦手なことがあると私よりも心配していたくらいです。やがて娘が年中になり「お受験」を考え始めたころから、旦那の様子に違和感を覚えました。 保育園から帰ってくるやいなや、毎日テキストを開いて勉強をさせるようになり、最初こそ丁寧に教えていましたが、娘がちょっとでも間違えると「この前もやっただろう!」と強い口調で怒鳴りつけるようになったんです。 完全におかしいと気づいたのは、娘がうっかりおねしょをしてしまった夜のこと。娘が大きな叫び声をあげ「ごめんなさい!」と大泣きしたんです。「怒ってないよ、大丈夫」と伝えても、嗚咽をもらしながら泣きやみません。 明らかに旦那に叱られることに怯えている様子でした。娘のためによかれと思ってやっていたことが、こんなに追い詰めることになるなんて…。結局、旦那とも話し合って「お受験」は取りやめになりました。

家での勉強が負担で学校で居眠り(まみさん/39/雑貨屋店員)

iStock.com/allensima

旦那はもともと自分の学歴にコンプレックスがあり、子どもへの教育には力を注いでいました。旦那が言うには、「学年×1時間」が理想の勉強時間なんだとか。小学校3年生の息子の勉強時間は、毎日3時間。 その甲斐あってか、息子の成績はいつもトップだったので、旦那の方針を疑うことなく認めていました。ところがある日、担任の先生に呼び出されて学校に行ったところ「息子さんが授業中ずっと寝ているんです」と言われたのです。 どうやら、旦那が息子にやらせていた課題が3時間では済まなくなり、寝る時間を削ってまでやっていたよう。そのため、学校で眠くなっていたみたいなんです。学校の先生に「家庭の教育方針に口を出すつもりはありませんが、さすがにやりすぎでは? 6年生になったら、毎日6時間勉強するんですか?」と言われて。 そこで初めて、旦那がやりすぎだったと気づきました。本当に息子には辛い思いをさせたと、申し訳ない気持ちでいっぱいです。

「教育虐待」の末に離婚を選んだ(ひろこさん/41/保険会社勤務)

iStock.com/itakayuki

去年、旦那による「教育虐待」を理由に離婚しました。両親ともに医者である旦那の家系は絵にかいたようなエリート一家で、親戚には弁護士や教授などがゴロゴロ。ところが旦那は受験に失敗し、自分では不本意な会社に就職しました。 親戚の中では唯一の「落ちこぼれ」だったという旦那が、夢を託したのは息子でした。息子は幼稚園からお受験をし、小学校では3つの塾をかけ持ちしながら必死に勉強していました。しかも目標の点数に届かなければ夕飯抜きになることも。 誕生日もクリスマスもありません。そんな生活を繰り返すうちに私の感覚もどんどん麻痺していきました。しばらくすると私の母が異変に気づき、笑顔のない私と息子をかくまってくれたんです。それでも最初は「勉強しないと」「帰らないと」とハラハラしていました。 でも温かい夕飯を食べて、ゆったりとお風呂に浸かり、布団に入っって過ごすうちに、私も息子も涙が止まりませんでした。最終的には協議離婚となりましたが、旦那からの謝罪はありません。あのまま過ごしていたら…どうなっていたのかと、恐ろしくなります。

 

iStock.com/recep-bg

力による支配がないか、立ち止まって問いかける意識を

特に自分の果たせなかった夢を子どもに託したり、自身の学歴にコンプレックスを持つ親が、陥りがちだとも言われています。子どもの幸せを願うあまり、逆に追い詰めてしまうという皮肉な結果…



しつけと虐待の判断に疑問を感じたら、常に「力による支配を強いてはいないか」を問いかけることが必要ではないでしょうか。

 

 

ライター:矢島 みさえ