新幹線は子どものあこがれであると同時に日本の最高技術が詰まった乗り物です。私たちの見えないところで、新幹線は日々進化しています。今回は最近のニュースから未来の新幹線を予想してみましょう。
時速360キロ…海外で最速の新幹線に出会う日も!?
突然ですが、現在の新幹線の最高時速は時速何キロか知っていますか?答えは東北新幹線の時速320キロです。JR東海は東海道新幹線内で走行実験を行い、ついに5月下旬に時速360キロを達成しました。ちなみに、現在の東海道新幹線の最高速度は時速285キロです。
報道によると、走行実験に使われた車両は2020年にデビューするN700S。時速360キロを出した区間は京都駅~米原駅間の下り線です。通常、東海道新幹線では16両中14両にモーターを載せ、時速285キロをキープしています。今回の走行試験では16両すべてにモーターを載せ、さらにスピードが出せるようになりました。
これで実験が終わり、というわけではありません。今後、安定的に時速360キロが出せるか、周辺の騒音や乗り心地は本当に大丈夫なのか、スピードだけでなく様々な観点を調べるために東海道新幹線における走行実験は続きます。
ところで、ここまで読んでいると「来年あたり東海道新幹線の最高時速は360キロになるかも…」と思ったはず。残念ですが、現在のところ、最高速度を上げる予定はない、とのこと。東海道新幹線は列車本数が多く、ひとつだけ速度を上げた列車を設定すると、他の列車が遅くなるかもしれません。今回の走行実験はN700系の海外輸出を見越してのこと。もしかすると、近い将来、海外でハイスピードな新幹線に出会えるかもしれませんよ。
えっ?新幹線がバッテリーで動く?
通常、新幹線は一般的な電車と同じく屋根にあるパンタグラフを用いて、架線から電気をもらって走ります。つまり、架線に電気が流れなかったら、新幹線は自分で走ることができません。今までテレビを通じて停電で立ち往生している新幹線を見かけたことはありませんか?立ち往生すると、何時間にも渡って閉じ込められることも。走らないばかりか空調設備も使えず、トイレの水が流せないという事態に。そのため、鉄道業界では大きな問題となっていました。
そこで、JR東海はバッテリーで新幹線を動かす実験を行いました。まず、新幹線内で停電が発生したことを想定して、パンタグラフをすべて降ろしました。16両編成のうち4両にリチウムイオン電池を取り付け、そこから電力を得て走る仕組みです。実験では時速30キロながら自力走行に成功。バッテリーで高速電車を動かす試みは世界でも日本が初めてということです。ところで、リチウムイオン電池はどこから充電するのでしょうか?通常時は架線からの電力で充電します。
今回の実験成功により、自力走行はもちろん、立ち往生になった際もトイレや空調設備が使えるため、災害時における車内環境が大幅に向上することでしょう。今後の新幹線車両には自走システムが装備されるとのこと。災害発生時でも安心な新幹線に生まれ変わります。日本独自の自走システムも新幹線を海外に輸出する際に大きな武器になることでしょう。
そういえば、リニアはどうなっているの?
新幹線の将来を語る上で避けて通れないのがリニアの話題です。現在、リニアは東京~名古屋間での開業を目指しています。ルートは山梨県をはじめとする山岳地帯を直進します。リニアができると東京~名古屋間はわずか40分に。東京~大阪間は1時間で結ばれることになります。
問題は”いつ”開業するかです。予定では東京~名古屋間の開業は2027年となっています。しかし、中央・南アルプスにトンネルを掘ったり、地元との話し合いも残っていたりするなど問題は山積。もしかすると、2027年の開業は難しいかもしれません。
よく、リニアが完成すると東海道新幹線がなくなるのでは…といった声も聞かれますが、その可能性はないと思います。東京~名古屋間には横浜や静岡をはじめとする主要都市もありますし、いつでも気軽に乗れる新幹線の利便性は将来も求められることでしょう。
とは言っても、東海道新幹線も開業してから50年が経過しています。トンネルや橋は老朽化が進んでいるため、大規模な改修工事が行われています。このような見えないところでの日々の努力が新幹線の将来を支えているのかもしれませんね。
文・撮影/新田浩之