ラッシュ時間帯に列車に乗ると「当駅止まり」に当たったことはありませんか?思わず「なんで?」とつぶやきたくなるもの。今回は関西における何とも中途半端な行き先を紹介します。

御堂筋線中津行き

関西で最も有名な中途半端な行き先は天王寺駅方面からの中津行きではないでしょうか。中津駅は大阪キタの中心地、梅田駅の北隣にある駅。中津駅から先は東海道・山陽新幹線が乗り入れる新大阪駅があります。新幹線に乗るために乗ったら中津行きだった…という悲劇話はよく聞きます。

 

2019年6月現在、中津行きは朝ラッシュ時間帯と夕ラッシュ時間帯~深夜にかけて運行されます。中津駅には折り返しができるポイントがあり、主要駅である新大阪駅のヘルプ役を担っています。また、中津駅と西中島南方駅の間には淀川が流れています。一説によると、淀川の水位が高くなったときに備えて、手前の中津駅で折り返せるようになっているとか。いずれにせよ、中津駅は御堂筋線の運行上、なくてはならない駅です。

 

何かと恨まれることが多い中津行きですが、中津駅発天王寺方面行きの列車はとても便利。何せ梅田駅で確実に座れるのですから。

御堂筋線新金岡行き

国内で最も中途半端な行き先は大阪メトロ御堂筋線の新金岡行きかもしれません。なんせ、御堂筋線の終着駅である、なかもず駅の手前で折り返すのですから。「どうせなら、なかもず駅まで行けばいいのに…」と思うのは筆者だけでなないでしょう。

 

実は新金岡駅となかもず駅の間には車庫があります。新金岡駅に着いた列車はそのまま車庫に向かうわけですね。なかもず駅からダイレクトに車庫へ行くことはできず、一旦引込線に入り折り返すことになります。新金岡行きは朝ラッシュ時間帯~10時台、夕ラッシュ時~深夜帯にかけて運行されます。

JR宝塚線快速塚口行き

多くの中途半端な行き先は朝夕ラッシュ時に見られるものですが、JR東西線からのJR宝塚線快速塚口行きは日中にも運行されます。この列車のポイントは本来なら快速通過駅である塚口駅で折り返すこと。つまり、快速塚口駅始発・終着の列車に限り、快速列車が塚口駅に止まります。

 

快速塚口行きが設定された背景には隣駅の尼崎駅の事情があります。本来ならJR神戸線、JR東西線が乗り入れる尼崎駅で折り返すのが自然。しかし、JR東西線からの列車が尼崎駅で折り返すとなると、JR神戸線の運行に支障をきたします。そこで、隣駅の塚口駅で折り返すようになりました。

 

もし、塚口行きに乗り、塚口駅以遠(宝塚駅方面)に行く場合は尼崎駅で宝塚方面行きの快速列車に乗り換えます。ほとんどの乗客が尼崎駅で快速列車に乗り換えるので、塚口行きはガラガラの状態になります。

近鉄京都線:急行宮津行き

先ほどの快速塚口行きをさらに進化させたのが近鉄京都線(京都駅~大和西大寺駅)に設定されている京都駅発急行宮津行きです。宮津駅は急行停車駅ではありませんが、急行宮津行きのみ停車します。しかも、宮津駅の隣にある急行通過駅の興戸駅、三木山駅にも停車。まるで、区間急行みたいな列車ですね。

 

また、車両本数が少ないのも特徴。平日は2本、土日祝日は1本のみの設定です。このように急行宮津行きはレア度の高い列車でもあります。

阪神、山陽:特急須磨浦公園行き

反対に御堂筋線中津行きと並んで有名な中途半端な行き先は特急須磨浦公園行きでしょう。阪神、阪急、山陽、神戸電鉄を結びつけた神戸高速鉄道が開業した1968年から運行されています。

 

特急須磨浦公園行きの特徴は日中時間帯、手前の須磨駅で何と普通列車に抜かれること。山陽電鉄線内は各駅に止まるとはいえ、「特急」の方向幕を付けた列車が普通列車に抜かれるのは妙な光景です。当然、特急須磨浦公園行きの乗客はほぼ全員、向かい側の普通姫路行きに乗り換えます。それでも須磨駅には折り返し構造がないため、どうしても須磨浦公園駅まで行かないといけません。

 

なお、山陽電鉄線内は列車の方向幕が「特急」でも電光掲示板は「普通」となります。

番外編:車両取替

関西の一部の私鉄では定期列車で「車両取替」というイベントがあります。車両取替を実施している阪急京都線を例に説明しましょう。始発駅の梅田駅にある電光掲示板を見ると、途中の正雀駅で車両取替が行われることが書かれていました。ところが、入線した電車の方向幕は「普通 高槻市」になっています。正雀駅に着くと、乗客は向かい側に停車している代わりの列車に強制乗り換え。梅田駅から乗った列車はそのまま車庫へ向かいます。私が記憶する限り阪急神戸線でも車両取替が行われていましたが、現在は京都線に限られています。

 

文・撮影/新田浩之