私は6年前まで、関西某私鉄会社でアルバイトとして働いていました。アルバイトの内容は朝ラッシュ時間帯における駅の交通整理。俗な言い方をすると「押し屋」ですね。今回は押し屋での経験も踏まえつつ、少しでもみなさんの朝の通勤が楽になる方法をお伝えします。
まずは再混雑区間の混雑率を知ろう
朝の通勤時間を少しでも楽に過ごす第一歩は情報収集です。まずは、普段利用している最混雑区間の混雑率を確認しましょう。最混雑区間の混雑率は国土交通省が毎年発表しています。このデーターを知っていると、最も混雑しているときの状況が把握できます。また、住居探しの際に役立つことは言うまでもありません。
三大都市圏(東京圏、関西圏、中京圏)において最も混雑している区間は以下のとおりです。なお、混雑率100%は車内で座っている人もいれば、立っている人もいるという状態。150%は楽に新聞が読める状態ですが、200%になると新聞を読むことはできません。データーは2017年度の混雑率調査結果に基づきます。
東京圏
1.東京メトロ東西線:木場→門前仲町 199%
2.総武線各駅停車:錦糸町→両国 197%
3.横須賀線:武蔵小杉→西大井 196%
4.南武線:武蔵中原→武蔵小杉 189%
5.東海道線:川崎→品川 187%
関西圏
1.阪急神戸線:神崎川→十三 147%
2.Osaka Metro(大阪メトロ)御堂筋線:梅田→淀屋橋 146%
3.阪急宝塚線:三国→十三 144%
3.大阪メトロ中央線:森ノ宮→谷町四丁目 144%
5.近鉄奈良線:河内永和→布施 136%
中京圏
1.名鉄本線:神宮前→金山 143%
1.名鉄本線:栄生→名鉄名古屋 143%
1.名鉄犬山線:下小田井→枇杷島分岐点 143%
4.名鉄常滑線:豊田本町→神宮前 142%
5.名鉄瀬戸線:矢田→大曽根 140%
5.名鉄津島線:甚目寺→須ケ口 140%
5.名古屋市営地下鉄東山線:名古屋→伏見140%
朝ラッシュ時間帯に、上記の路線に乗車する際はそれなりの覚悟が必要ですね。それでも、昭和時代と比べればマシになりました。これからも少子高齢化や交通網の整備により、混雑率の低下が予想されます。
まずは中間駅始発の列車を狙うのがコツ
混雑を避ける最も有効な手段は中間駅を始発とする列車を狙うことです。阪急宝塚線(梅田駅~宝塚駅)を例にあげて説明しましょう。 阪急宝塚線は朝ラッシュ時間帯に限り、中間駅である豊中駅始発の普通電車を設定しています。
豊中駅周辺に住んでいる場合は豊中駅始発電車に乗ると着席できる確率が大幅にあがります。また、蛍池駅や石橋駅から豊中駅まで行き、豊中駅で始発電車に乗るのもアリですね。阪急電鉄のホームページにある豊中駅の時刻表を見ると「当駅始発」の表示が。これらの電車を狙いましょう。
ところで、同じ中間駅始発列車であっても、朝ラッシュ時にしか設定されていない列車がおすすめ。朝ラッシュ時に利用しない人は朝ラッシュ時限定列車の存在に気づかないものです。ちなみに、乗り慣れていない通勤・通学客が多い春は最混雑列車と中間駅始発列車の混雑率に差が他の季節よりも少し広がります。
問題は中間駅始発列車の探し方です。本屋で販売されている鉄道時刻表は都市圏のJR線は初電と終電のみの記載。大手私鉄の時刻も詳細には書かれていません。そこで、おすすめしたいのが交通新聞社運営の時刻表サイト「トレたび」。「トレたび」にある時刻表検索にて路線名を入力すると、路線別の時刻表が表示されます。それを見ると、朝ラッシュ時に運行される中間駅始発列車のダイヤがわかりますよ。
増結車両の先頭車はNG?
路線によっては中間駅で増結車両を連結することがあります。よく見られるのは先頭に2両~4両連結するパターン。着席乗車を狙って増結車両の入線前から列ができる光景を見かけます。ここで大切なことは先頭車両の1番前の扉には並ばないこと。できれば、中間車に並ぶことをおすすめします。
6年にわたって増結車両を見続けて気づいたことは、利用者は先頭車両に並びたがるということ。増結車両の真ん中あたりになると、混雑が緩和されます。終着駅の構造にもよりますが、先頭車両ばかり並んでいる人は一回、中間車も試してみましょう。
有料座席車両を利用する
「確実に朝ラッシュ時に座席に座りたい」という人は有料座席車両の利用をおすすめします。これは有料料金を払って座席を確保するもの。関東圏や関西圏を中心に広がりを見せています。有料座席車両は確かに便利ですが、列車本数の少なさが欠点。事前にダイヤを確認する必要があります。また、停車駅は少なくても先行列車に遠慮してスピードが出せない場合も。速達性を求めるのではなく、あくまでも快適性を求めるのがコツです。
傘の先にご用心
朝ラッシュ時の列車に乗車する際に気をつけたいのが傘の先端。よく、傘の先端がドアに挟まり発車できないというケースが見られました。ドアのゴムに挟まった傘を引っ張るのは至難の業。私は「押し屋」として、何回も傘の先端を手で押し込めましたが、簡単な作業ではありません。混雑した列車に乗る際は折りたたみ傘をおすすめします。
文・撮影/新田浩之