「ベイビーがほしい」という娘のために、5年間に及ぶ妊活をしていた神田うのさん(51)。しかし3度の流産を経験し、自分を責めた過去があります。「神さまを恨んだ」という当時を振り返り、不妊治療を断念し、娘さんひとりに向き合うことを決めた心境について、涙ながらに語ってくれました。
「ベイビーはいつ来るの?」娘の懇願で妊活
── 娘さんは現在14歳で、間もなく15歳の誕生日を迎えるそうですね。娘さんが生まれたあと、きょうだいを作ってあげたいと妊活していた時期があったと伺いました。
神田さん:娘が幼稚園の頃のことですね。娘から「うちにベイビーはいつ来るの?」とずっと言われ続けていました。

「男の子でも女の子でもいいから私もベイビーがほしい」って。周りのお友達に下の子が生まれ始めて、自分もお姉さんになってみたいという願望があったみたいです。私も弟がふたりいてよかったと思うことがたくさんありますし、娘にもきょうだいを作ってあげたいと思っていました。
3回の妊娠と3回の流産「神さまを恨んだ」
── 3回妊娠されたそうですが、3回とも流産してしまったそうで。
神田さん:そうなんです。1回目に流産したときはまだ初期の段階で、気付かないうちに自然に流れていました。ショックだったのですが、「流産ってやっぱりあるんだね」という感じで、「赤ちゃんに来てもらえるよう、また頑張ろう」と思っていました。
2回目は、妊娠がわかって病院に通い始め、心拍も確認して「よかったね」と家族で話していたころでした。娘も「やっとうちにベイビーが来てくれる!」とすごく喜んでいたんですけど、妊娠して2か月した頃に検診に行ったら、もう赤ちゃんが動いていなくて。病院で、小さいお産をするか、摘出手術をするか選ぶよう言われました。
小さいお産というのは自然排出のことなのですが、陣痛も出血もあるとのことでした。私は摘出手術をして取り出したのですが、病院には夫と娘と母が来てくれて、「赤ちゃん動かなくなっちゃった。ごめんね」と家族みんなに申し訳ない気持ちでいっぱいでした。
── 3回目の流産の際も、摘出手術をされたそうですね。
神田さん:「次こそは大丈夫」と思っていました。娘を妊娠していたときの経験からわかるんですけど、胸も張ってきて、「妊婦の体になってきた」という感覚もあったんです。でもある日、娘が突然「ベイビーがお空に帰っちゃった」と言い出しました。「なんだか不吉なこと言うなぁ」と思っていたのですが、次の日、病院に検診に行ったら本当に赤ちゃんが動かなくなっていて。
── 妊娠に関して、病院などでの検査前にきょうだいが気づくことがあるという話はよく聞きますが、娘さんの話が現実になったというのは鳥肌が立ちました。
神田さん:娘はわかっていたのが不思議ですよね。「3度目の正直」で、今度こそと思っていたのに3回も流産をするなんて「こんなことあるの」と神さまを恨みました。3回目の流産の際も摘出手術をすることになったのですが、当日は私とパパさんだけで病院に向かって。摘出手術は1度経験しているものの、やっぱり涙が出てきました。パパさんも隣で泣いていました。
つらすぎて、しばらく人に言えなかったのです。年数が経って、自分では「もう話しても大丈夫」と思っているのですが、あのときのことを思い出すとやっぱり今でも悲しいです。何度、流産を経験しても、絶対に慣れることはありませんね。
不妊治療中に「自分を責めて」
── つらい気持ちを抱えながら、その後、不妊治療をスタートされたそうですね。
神田さん:3回とも自然妊娠で流産してしまったので「やっぱりちゃんと病院に行かなきゃダメなのかな」と思い、不妊治療を始めました。採卵をして、受精卵を検査に回すんですけど、結果がよくなくて。子宮に戻すところまで進みませんでした。不妊治療中にうまくいかないと自分を責めてしまいがちで。採卵の前も、お酒を控えるなど、自分でできることはなるべくしていたんですけど、結果には結びつきません。何がいけないかわからないけど、うまくいかないのは、「きっと私のせいだ」と思ってしまっていました。
不妊治療は、当時の最新医療で2年間チャレンジしたのですが、受精卵はそんなに何個も作れるわけではないですし、「今回もダメ、また次もダメ…」とよくない結果が続くうちに「もう無理なのかもしれない」と思うようになりました。その頃は娘がいっさい、「ベイビーがほしい」と言わなくなったこともあって、治療を断念することにしたんです。
妊活を断念も「後悔はない」
── なぜ娘さんは「きょうだいがほしい」と言わなくなったと思いますか。
神田さん:不妊治療中に、家で私がお腹に自己注射をする姿も見ていたからですかね。最初は「ママが注射している」とびっくりしていました。あのとき、諦めずにずっと治療を続けていたら、もしかしたらいつか授かることができたのかもしれません。でも、流産の経験も含めて5年間妊活と向き合ってきた結果、私は「娘だけでいい」と思えたんです。その頃には、検査の結果も受け止められるようになっていました。
本当は、娘にきょうだいを作ってあげたかったけれど、流産の経験があるからこそ、娘が生まれたことが本当に奇跡だと思えるようになって。妊活への後悔はありませんし、娘が無事に生まれてきてくれたことに感謝の気持ちでいっぱいです。
── 娘さんにはどう伝えたのですか。
神田さん:娘には「あなたは4人分だよ」と伝えています。4回妊娠して、育ったのは結果ひとりだけだったけれど、そのぶんの愛情を娘に全部注ぎ込んで、大切に育てていこうと思っています。私の母が私たちきょうだい3人にくれた愛を、私はひとりにあげていこうって。娘はひとりっこなので、親の私たちがいなくなったらひとりになってしまいます。今は娘のためにも長生きして健康でいなきゃと思いますね。そのためにお酒を控えて、運動も頑張っているところです。
取材・文:内橋明日香 写真:神田うの