35歳の決断振り返り「今思えばまだ若い」

── 今は週2回、自身のお店をオープンされ、他の日は実家を手伝われているそうですね。
鈴木さん:自分の店でやりたいこともあったし、将来的には実家を継ぐつもりでいるので、自分の店と実家の手伝いを両立できるように週2回に決めました。今は父も元気ですし、私は私でやりたいこともあるので、しばらくこのスタイルで続ける予定です。実家の店だと、常連のお客さまもいるので、なかなか新しいことができないんですよね。ただ、いつかは実家を継ごうと思っていて、そのときにどんなスタイルにするかはこれから考えていけたらと思っています。
── 鈴木さんがお店を手伝うようになって、お父さんや常連の方の反応はいかがでしたか?
鈴木さん:手伝いを始めた頃は、父からも魚の捌き方などを教わっていました。「自分の技術を伝えたいのだろうな」と感じることはありましたが、父は私の前ではあまり口に出さず。でも、常連のお客さまから「お父さん、喜んでいるよ」と聞くことはありました(笑)。
お客さまは「まだ来れるね」とか「頑張って長生きするね」と言ってくださって、本当にありがたいです。「息子を連れてくるから」と若い方に引き継いでくださる方もいて、次の世代に広がっていくのも嬉しいですね。
── 12年間会社員を経験したうえでの35歳の決断。今振り返って、どう思われますか?
鈴木さん:当時は会社員生活にやりがいを感じていましたし、自営業になることを考えると収入やライフスタイルが大きく変わる不安もあって、3年間本当に悩みました。でも会社員として働くなかで、自分の性格ややりたいことがわかってきて、少しずつ気持ちが変わっていったんです。
いつか自分で商売をしてみたいという気持ちも、ずっとどこかにあったんだと思います。最悪失敗してももう一度就職できる年齢だと思えたことも、背中を押してくれました。もし会社員を辞めなかったら「あのとき、辞めていたらどうなっていたんだろう」と今もずっと気にしていたと思うんです。
── それだけ真剣に熟慮を重ねた結果だからこそ、たとえ失敗しても後悔しない、前向きな気持ちになれたのでしょうね。
鈴木さん:ありがたいことに前の会社ともまだつながりがあり、応援してくださっていて。今は送り出してくれた方々の応援に応えたい気持ちも強いです。
それに、今思えば35歳は若いですよね。今は、70歳まで働く方も少なくないじゃないですか。その間で2回、3回と大きくキャリアが変わっていくこともよくあることなのかなと。思い立ったら実際に動いてみることが大切だと思います。
取材・文:竹田りな 写真:鈴木裕子