「この先どうしたいかを選ぶのはあなた」
── 家族会議でどんなことを話したのですか。
ままるん:学校に行かないことで、これから先、どんなことが不便になるかという話をしました。あとは、学校に戻る以外にどんな選択肢があるかも具体的に伝えました。別の学校やフリースクールに行ってもいいし、家で勉強してもいいし、お仕事をしてもいい。お金はかかるけど、海外に住んでいる友人に頼んで海外に行くという選択もある。でも、必ず、学びは続けないとダメよと。たくさん道はあるけど、この先どうしたいかを選ぶのはあなたしかいないよって。
やっぱり親だから、子どものために何かしてあげたいと思う気持ちがあるし、特に小中学生の間は、「義務教育だし、なんとかして学ばせなきゃ」って思うよね。私のやり方が正しいかわからないけど、子どもも親も別の人間で、性格も人それぞれ。考え方だって違います。だから息子がどうしたいか、自分なりに答えを出すのを待ってみようと思いました。「これからどうする?」という話は日常的にしていたんですが、進路を決める時期になってきたころ、息子は、「高校に行きたい」と言い出したんです。
── ついに決めたんですね!そこからどうしたんですか。
ままるん:ちょうどそのころ、お姉ちゃんがひとり暮らしを始めることになりました。今まで家から仕事に通っていたんだけど、仕事が忙しくなってきたからって。このタイミングで、私も息子の環境を変えてみようと思い、思いきって引っ越しをすることにしました。元の中学に戻ることも別の中学に通うこともせず、これまで行かなかったぶんの勉強は塾でカバーして、高校受験をしました。高校では、まさかの皆勤賞ですよ。そのあと大学にも行きました。
弟の変化に感じた「いつでも人は変われる」
── 皆勤賞!中学時代とのギャップがすごいです。
ままるん:自分で「高校に行きたい」と言ったのを叶えたことが、息子のなかで成功体験になったようです。息子が学校に通えるようになって思ったのは「本来の姿に戻ったな」ということ。私も正直、息子が家にいた1年半はつらかったし、「どうしよう、何をしたらいいのかな」とすごく悩みましたが、家に引きこもっていても、こうやって人は変われるんだと思いましたね。
── 息子さんが家にいた1年半、どんなことを大事にしてきましたか。
ままるん:無理やり何かをさせるのではなく、息子を信じることに尽きると思います。うちは1年半でしたが、もしかしたらそれが10年続くかもしれないし、もっと長く続くかもしれない。でも、どんなことがあっても「いつも味方で、ママはあなたを信じてる」ってことは伝えていたと思います。それが愛ですよね。
娘からは大袈裟だって言われるんですが、私は子どもたちにも孫にも、わかりやすく愛情表現をしていると思います。私は若いときに海外でバッグパッカーで旅していたことをきっかけに、海外で仕事をして娘の子育てもしていました。今もひとりで海外に行くことが多いので、子どもたちに「ぎゅ〜」っとハグするのが日常。でも、うちの子たちはハグがすごく下手なんですよ。
海外の友人も「ニコルのはまだハグじゃないわ。日本人っぽい恥じらいがあるわね」って(笑)。私がこんなに自由奔放だからかもしれませんが、子どもたちふたりはすごく真面目で静か。でも、昔から「お子さんいい子だね」と言われることが多いのは、親としては本当に誇らしいことです。
子どもとの関係は「愛」に尽きる
── 息子さんが不登校だった当時は悩んでいたとおっしゃっていましたが、振り返ってみて思うことはなんですか。
ままるん:もし子どもに何か悩みがあって、親はそれに対して「何もできない」と思っても、一緒に寄り添ってそばにいて、話を聞いてあげるだけでも違うと思うんですね。子どももこれからどうしたらいいかわからないし不安だけど、だんだんと道筋が見えてきたら、そのうちひとりであるいて、さらには走り出していっちゃうんですよ。そうなったら親は「いってらっしゃい」と見守るだけ。
息子からよく「普通のお母さんはこうだよ」って言われるんですけど、私に「普通」って言葉を使うとケンカになります(笑)。「普通って何?それはあなたが思う普通でしょ?人に押し付けちゃいけないよ」と言ってきました。
私はかっこいい母親ではないし、恥ずかしい姿や感情的な姿も見せてきたと思います。悲しいときや悔しいときは泣いて、嬉しいときは笑って。喜怒哀楽が激しい母親なんじゃないかな。
私はなんでも愛で片づけちゃうんだけど、子どもとの関係は愛があればいい方向に向かうと信じています。子どもたちにいろんなことを教えていると思っていたけど、実は子どもから学ばされていることも多いですね。
── 現在は、お子さんはふたりとも社会人になられて、娘さんと一緒にお店の経営をしているそうですね。
ままるん:はい。娘と一緒にパーソナルジムとペット用アパレルの経営をしています。娘がずっとトレーニングをしていたご縁でジムを始めて、ペット用アパレルは大切な家族である愛犬たちのために立ち上げました。経営しながらも常に新しいことを学び続けたくて、好きな放送作家さんの授業が受けられると聞き、50歳を過ぎてから1年間、お笑いの養成所に通いました。自分で何かイベントを企画するときに役に立つかなと。実習で、実技とか漫才やコントがあったんですけど、本当にネタを考えるのって難しいんですよ。
養成所で出会って、今も仲良くしているメンバーで勉強会を開いています。こういう世の中だから、生成AIやSNSの知識も増やしていきたいなと思って。インフルエンサーや銀行員、いろんな経験や人脈があるメンバーで、私はイベンターとして勉強会を企画しているんですけど、いくつになっても、学び続けるって楽しいです。でも私が「学びは楽しい」と思えたきっかけは子育てなんです。子育てに正解はないし、悩むことももちろんあるんだけど、それを通じて、一生学んでいたいという気持ちが芽生えたことは大きな財産です。
取材・文:内橋明日香 写真:ままるん