なかなかモノを捨てたがらない母を説得して

羽田美智子
着物姿もしっくり来る羽田さん

── 実家の片づけでは、親が物を手放したがらず、なかなか進まないケースも多いです。お母さんとのせめぎ合いもありましたか。

 

羽田さん:ありましたよ。「それも捨てるの?やめて」と母が声を上げ、「いや、もう使わないでしょ?」と私がなだめる。その繰り返しでした。

 

祖母が残した着物や反物もたくさんあって、「おばあちゃんの形見だから」と母はずっと手放せずにいたんです。でも、このまま残しても、いずれ誰かが片づけなければなりません。「ごめん、もう手放すね」と言って古着店に持っていったら、結構いい着物もあったのに、60枚ほどで2000円にもなりませんでした。

 

古いタンスも「絶対捨てないで」と懇願され、結局、人に譲ったのですが、母には今でも「あれがあったらなあ。美智子が何でもかんでも人にあげちゃうから…」と文句を言われます(笑)。掛け軸は、母の抵抗があってまだ残っています。掛ける場所もないからいらないと私は思うのですが、母はどうしても手放したくない。まさに今もせめぎ合いです。

 

── なるほど。思い出の品は、判断が難しいですよね。

 

羽田さん:そうなんです。今、いちばん困っているのが写真です。家族や孫の写真が段ボール5箱ほどあって、どうしたらいいのか、まだ答えが出ていません。家の中のモノは何とか片づいたんですけど、もうひとつ、自分たちの代で何とかしておかなければと思っていることがあるんです。

 

── どんなことでしょう。

 

羽田さん:お墓です。うちには風化した古い墓石がいくつもあって、「ひとつにまとめようか」と、兄と話したこともあるのですが、今はまだそのままなんです。お花を供える場所も多く、維持するだけでも大変です。このまま甥たちの代に渡したら、きっと負担になりますよね。私自身、実家を片づけながら「どうしてそのときにやっておいてくれなかったの」と恨めしく感じたので、同じ思いはさせたくありません。お墓のことも、自分たちの代で何とかしておきたいと悩んでいるところです。

モノは循環させないと意味がないと痛感した

── 50年分の家財と向き合った経験は、ご自身の暮らしや物の持ち方にも影響しましたか。

 

羽田さん:ものすごく影響しました。30代、40代は本当に忙しかったので、モノがたまるいっぽうだったんです。東京の家を引っ越すときに処分したのですが、「この箱だけは手をつけずにおこう」と20年近く大事にしまっていた宝箱があったんです。それを開けてみたら、一度しか行っていない場所の記念品など、今の自分にはまったく価値を感じないものばかりで。「これを20年も大事に取っておいたの?」と、自分でも驚いてしまったほど。思いきって処分したら、すごく解放感がありました。

 

洋服や靴も同じです。昔は気に入ったものほど「よそ行き」として取っておいたものでしたが、いざ取り出してみたら、古びた匂いがしたり、靴の底が剥がれていたりして。結局、気に入っている時期にガンガン使って、摩耗したり、劣化したりしたら卒業する。モノは循環させないと意味がないんだと痛感しました。

 

── 古いものを溜め込まず、循環させることが大切だと。

 

羽田さん:モノを大切にすることは素敵なことですが、今の私にとっては、古い匂いのするモノをいつまでも抱えているより、本当に気に入った少数精鋭のモノだけに囲まれたシンプルな暮らしのほうが合っている。持ち物も把握しやすくなって、暮らしそのものが心地よくなりました。

 

取材・文:西尾英子 写真:羽田美智子