私にはもう座る場所がないのかな──。40代の転換期。俳優・羽田美智子さんは途方に暮れるような感覚に襲われたそうです。キャリアへの焦り、離婚、そして流産。さまざまな経験を経て人生を見つめ直したという羽田さんが、50代で踏み出したのは「商売」という俳優とはまったく違う世界でした。

「私にはもう座る場所はないのかな」と途方に暮れ

羽田美智子
40代になってから心身の変化を感じたと語る羽田さん。山口県にロケに行ったとき

── 現在57歳になる羽田さん。40代は心身の変化に加え、仕事や家庭でそれまで担ってきた役割も少しずつ変わり、「自分はどこに向かうのだろう」と迷う人も少なくありません。俳優として長年活躍されてきた羽田さんも、自身のYouTubeチャンネルで「40代半ばは途方に暮れていた」と語られていたのが印象的でした。

 

羽田さん:今振り返ると、40代の半ばはホルモンバランスが劇的に変わる時期で、メンタルも落ちやすくなるだけでなく、体にもいろんな変化が起きていました。今までなかったところにシワができたり、目が霞んだり、疲れが抜けにくくなったり。気づけば白髪もちらほら出てきて、経験したことのない変化の一つひとつに戸惑っていたんです。

 

そのいっぽうで、社会的にはまだ30代の延長として見られ、ひと回りほど若い世代と同じ土俵で競わなくてはなりません。椅子取りゲームにたとえるなら、必死に座ろうとしても、体力もメンタルも落ちていて、弾かれることが増えていく。「そこはもう別の人が座る席ですよ」とはしごを外されて、「私にはもう座る場所はないのかな」と途方に暮れるような感覚がありました。

 

ただ、後になって思えば、席から外されたのではなく、「これまでとは違うやり方や生き方を選ぶ時期に入った」というだけのことなんですよね。人生には、そういう局面が何度かある。だから必要以上に不安や焦りに飲み込まれず、「今のこういうフェーズにいるんだな」と受け止められたらよかったなと思います。

 

── 自分に起きている変化に心が追いつかないなか、居場所を失っていく不安。当時、どうやってその時期をやり過ごしていたのでしょう。

 

羽田さん:何もやることがないと、漠然とした不安が膨らむんですよね。だから、ひたすら目の前に与えられたことに一生懸命取り組んでいました。集中している間は、悩みから離れられる気がしたんです。やることがあるって、ある意味、幸せなんです。

 

私には子どもがいないので実感としてはわかりませんが、同世代の友人から「子育てが終わった途端、人生がどこに向かうのかわからなくなった」とよく聞きます。長く自分を支えてきた役割がなくなったとき、不安が一気に押し寄せることがあるのでしょうね。