「日本一かっこいいトイレ清掃員」を目指し東京都奥多摩町の観光用公衆トイレなどの清掃をしている株式会社オピトの大井朋幸さん。手作業で便器や床を磨きあげる仕事ぶりが話題を呼んでいますが、トイレがきれいになると別の使い方をする人が増えてしまうと頭を抱えているそう。「トイレに長くいることに慣れてはいけない」と語るわけを聞きました。

公衆トイレが綺麗になった弊害「ここで暮らしたのか?」

── 2017年から東京都奥多摩町の観光用公衆トイレの清掃を始め、「床に寝そべれるほど」ピカピカになったと話題になっています。ところが、その弊害もあるそうですね。

 

大井さん:今朝も清掃のためにトイレに行ったんですが、ずっと開かない個室がありました。中から音楽が聞こえてきて。「長いな」と思いながら、いったん離れて別の現場に行ったんですが、戻ってきてもドアは閉まったまま。

 

奥多摩ピカピカトイレット、「オピト」のメンバー
プロトイレ清掃員、奥多摩ピカピカトイレット、「オピト」のメンバー

さすがに心配になったので、ノックして「大丈夫ですか」と声をかけたのですが、出てこないんですよ。別の現場に行こうとそっと離れたら中から若者が出てきました。トイレを見てみると、「ここで1日暮らしてたのかな」と思うくらい、食べ物のゴミが散乱していて。髪の毛も、抜けたとかのレベルじゃなく、この場で散髪したような感じで束で落ちていました。

 

── 綺麗になったゆえに、思いもよらない使い方をする人が出てきてしまったんですね。

 

大井さん:奥多摩は終電も早いし、泊まるところもあんまりないから、夜を明かして過ごす人も出てきています。特に多目的トイレをそのように使う人が多いのですが、そもそもオストメイトの方や車椅子の方など、必要としている方が使うために設けているトイレなので、理解してほしいですね。この仕事を始めてまもなく10年になりますが、僕はトイレのなかに居続けるのは、慣れちゃいけないって思ってるんです。

トイレに長くいることに「慣れてはいけない」

── どういうことでしょう。

 

大井さん:トイレって、家のもそうですけど、生活空間のなかで最も汚い場所ですよね。僕たちはプロでやらせてもらってますけど、作業以外の時間に、トイレに長くいようとは思いません。いくら見た目がきれいになっても、ウイルスや菌が存在する場所で、ずっとその場にいることに慣れちゃダメだよなって。「慣れないこと」を前提に、日々どうやってきれいにするか、研究して作業していかなきゃならないと思っています。見た目はきれいだとしても、トイレ以外の利用方法は衛生的によくないですよ。

 

それに、男性で手を洗わない人が結構多いというのも言っておきたいです。小さい子ほどちゃんと石鹸で洗うんですけど、洗わないのは成人男性ですね。用を足して、そのままトイレから出て、平気でカップルで手を繋いでいます。「その手、汚いですよ!」って彼女に伝えてあげたいですね(笑)。

 

── ひとりで食べるのが嫌で、学校や職場のトイレでお昼ごはんを食べる方がいるというのも話題になりましたし、用途外で多目的トイレを利用する人もニュースになりますね。

 

大井さん:ちょっとジレンマです。日本の独特の治安のよさからきているものだろうと思いますが、本来の用途以外の使い方が増えているのは悩ましいです。以前、フランスの取材を受けたのですが、「トイレがきれいになって、薬物を使用するような人はいないのか」という質問をされたことがあります。フランスの公衆トイレは長居ができないようにきれいじゃないし、盗難防止で便座がないトイレも多いらしいですよ。