ドラマ『弱虫ペダル』の撮影中、自転車事故で脊髄を損傷し、首から下の自由を失った俳優・滝川英治さん。「死なせて」と医師に乞うた彼が、再び生きることを決めたのは、病室ですすり泣く母の姿でした。とはいえ、身体が思うようにいかない現実が立ちふさがります。「リハビリですか?最初は身体を起こすところから」と滝川さんは言いながら、今を生きている実感を言葉にのせます。
事故直後に馳せたのは「親に感謝と愛犬にエサを」
── 人気ドラマに出演していた滝川さんは収録時に起きた自転車事故により、首の部分の脊髄を損傷。事故当時のことは覚えていますか?
滝川さん:はっきりと覚えています。事故直後、体がまったく動かなくて、「自分はもう死ぬんだ」と覚悟しました。とっさに頭に浮かんだのは両親のことです。駆け寄ってきた共演者やスタッフに「両親にありがとうと伝えてください」とお願いした記憶があります。愛犬パールのことも気がかりでした。ひとり暮らしなので、僕に何かあればパールがお腹を空かせてしまう。意識がもうろうとするなか、「誰かパールにエサをあげてください!」と、何度も口にしていました。
次に気がついたときには、ドクターヘリの中にいました。応急処置のため、着ていた衣装のサイクルジャージをハサミで切られているところでした。強豪チームのエースという役どころを象徴する衣装が切り刻まれたことで、「大事な衣装に何をしてんだよ!」と、パニック状態に。もう自分はダメだという絶望のあまり、手術前には医師に「もうこのまま死なせてください」と、お願いしてしまうほどでした。

── どのような状況で事故が起きたのでしょうか。
滝川さん:ロードバイク(レース用自転車)で坂道を下り、原付を抜くシーンの撮影でした。猛スピードでカーブにさしかかったところでハンドルから手がすっぽ抜け、宙に投げ出されてしまって。地面が目の前に迫り「やばい」と思った瞬間、頭から地面にたたきつけられ、気がついたら青空を見上げている状態でした。
ロードバイクの撮影は危険を伴うので、半年以上トレーニングを重ねていました。ただ、事故が起きたシーンのリハーサルは数回。撮影を重ねクランクアップ直前となるなかで、自分にどこか慣れというか、おごりのようなものがあり、何度かのリハーサルで「大丈夫です」と言ってしまったのかもしれません。あのとき、「もっと何度もリハーサルをしたい」と言っていれば、違う結果だったのかもしれない…と考えることはあります。