詐欺相手は心のスキをついてくる怖さ
── そこでようやくすべてが嘘だと発覚した。詐欺だとわかった瞬間はどんな感情でしたか。
北山さん:もう、あぜんとしちゃって。でも同時に「やっぱり…」と、思わず口から出たんです。3か月のやりとりの中で、違和感を持つ瞬間は何度かあったんですよ。でも「大先輩が嘘をつくはずがない」「ギニアに学校を作るんだ」と自分でその声を打ち消していたんですね。 警察にはすべてのやりとりを証拠として提出しましたが、お金を振り込んでいないので被害届としては受理されませんでした。
じつはそれ以降、海外の電話番号から怪しげな電話がいっぱいかかってくるようになって。きっと登録時に入力した個人情報が「騙しやすい人リスト」として流されたんでしょうね。3か月間、心を許してやりとりしていた相手が偽物だったというのは、本当にショックでした。
これまで、ニュースなど報道を見るたびに「なぜお年寄りはあっさり詐欺に騙されるんだろう?」と思っていたんです。でも今回、自分の急所に入り込まれる怖さが痛いほどわかりました。お年寄りは孤独な時間も多いですよね。そこに「おばあちゃん、大丈夫? 今日も話そうよ」と、毎日、優しくフレンドリーな言葉をかけられたら、相手に依存して、心を持っていかれてしまうかもしれない。だから「自分は絶対にダマされない」と、過信してはいけないと痛感しました。

── 違和感を覚えたタイミングで、まずは電話をかけて話していれば…。ためらいがあったのでしょうか。
北山さん:おっしゃる通りです。初期対応として、違和感を覚えた時点で直接、電話をかけていれば済んだ話なんです。でも、「相手は大先輩だから既読スルーするわけにはいかない」「多忙な方だからこんなことで電話したら迷惑かも」という遠慮が邪魔をしてしまいました。SNSが普及して文字だけでやりとりが完結してしまう時代だからこそ、アナログに立ち返って「本人の声(話)を聞いて確認する」ことの大切さをあらためて感じましたね。
取材・文:西尾英子 写真:北山みつき