逃げて、行き詰まっても、道は必ずある
── アメリカ生活で、価値観も大きく変わりましたか?
英月さん:それがあまり変わらないんですよ(笑)。銃声が聞こえるような下町にも住んんでいたので、いろんな刺激も受けましたが、価値観は変わらなかったです。
アメリカに住み始めて数か月後、ある友人に「君はすごいジャッジメンタル(自分の価値観で物事を判断していく人間)だ」って言われたことがありました。みんなそれぞれ事情があるし、いろんな背景があるのだから、自分の価値観でその人を判断しちゃいけないと。そんなつもりはなく、当時、私は「清く正しく、一生懸命生きているつもりだったのに」とショックを受けました。
それは私にとってショックな出来事ではあったものの、だからといって今は自分の価値観で他人をジャッジしていないかといえば、違います。残念ながら、その根性はなくなりません。ただ、そんな自分を改めて知れたことには、大きな意味があったと思います。
── アメリカでの生活が長くなるにつれ、「アメリカに逃げた」という後ろめたさは払しょくされましたか。
英月さん:最初から後ろめたさはなかったですね。渡米するときは自分にとって都合の悪いことから逃げることしか考えていませんでしたし、アメリカでの生活が始まってからは生きていくことに必死でしたから。
とはいえ、お見合いが嫌で家出したなんて恥ずかしいことです。それだけじゃなく耳が聞こえなくなったなど、つらく、苦しいこともありました。それらは、思い出したくもない黒歴史と言えるかも知れません。
けれども振り返ってみると、アメリカに逃げ出した事実がなければ、今の私は存在しません、いないのです。そう思うと、人生において無駄なことなど何もないのだなと思います。
別の言い方をすると、人生がたとえ行き詰まったとしても、もうアカンと思ったとしても、行き詰まっているのは私の思いだけなんです。自分が計画したことや都合、そして思いは行き詰まりますが、道は必ずあります。アメリカまで逃げて、逃げた先でも行き詰まって、だからこそ知らされたことです。
取材:文 岡﨑優子 写真:英月