祖父母の介護をきっかけに32歳で定時制高校に通い、大学にも進学したプロレスラーの大原はじめさん(41)。中学時代「プロレスラーになりたい」と大きな志を貫きながらも、授業をサボっていたことへの後悔を胸に、子どもたちに伝えたいことがあるそう。「プロレスラーと教育と福祉」の新しい世界を切り開こうとしている大原さんが見据える未来とは。

「全部嘘じゃない」説得力ある言葉で子どもに伝えたい

── 大原さんは41歳の今も現役プロレスラーとして活動しながら大学にも通い、教員を目指しているそうですね。中学生でプロレスラーを目指し、19歳で夢を叶えたのに、なぜ教員の道へ?

 

大原さん:僕は中学1年生の冬にプロレスラーを目指して以来、学校の授業を放棄し、自主トレに精を出すような問題児でした。19歳でプロレスラーとしてデビューし、プロレス一本で頑張っていましたが、祖父母の介護がきっかけで、地元で高齢者のための転倒・介護防止の筋力トレーニング教室を開催するように。そのときに介護や福祉の専門資格を取得するには「高卒以上」の学歴が必要だと知り、定時制高校に通う道を選んだんです。

 

今も、大学生をしながら、非常勤職員として自分の体験談を子どもたちに伝えて、プロレスも頑張っています。すべて作り話じゃなく、本当のことです。世の中にはいろんな子どもがいますが、「先生なんかね、中学校にまともに行ってないよ」と言えるってけっこう強みだと思ったんですよ。「だけどね、30歳すぎて高校や大学に行くハメになったよ。これって結構しんどいから、今のうちにやれることをやっておいたほうがいいよ」って。しくじり先生になって、「夢を叶えることも、勉強することも大事だよ」と子どもたちに伝えたいんです。

 

大原はじめ
小学校の特別授業にて。子どもたちをひとつにまとめる大原さん(中央上)、さすが!

それって、プロレスラーとして横浜アリーナや武道館、海外の舞台でも戦った経験がある自分にしかできないかもしれない。そう考えたら、教員という仕事は自分にも向いていると思いました。すでに高校地理歴史科の教員免許の単位は取得していて、今はそれに加えて高校公民、中学社会の教員免許の単位取得も目指して勉強しています。

 

── では、教員免許取得に欠かせない、教育実習にも行くのですね?

 

大原さん:そうなんですよ。おもしろいのが、僕が母校の中学校に通っていたとき、創設50周年だったんですが、創設70周年のときに特別授業の講師として呼ばれて、子どもたちに自分の人生経験を話したんですね。

 

そのとき、高卒以上の学歴の必要性を感じて、大検を取ろうとしていた自分に、校長先生が「プロレスラーとして他の人と違う挑戦をしたほうがいい。定時制高校に行きなさい」と言ってもらったことが高校に通うきっかけになりました。それが、創設80周年の2027年、今度は教育実習生としてまた母校の中学校に帰るんです。すごくないですか? 

 

── それはすごいです!まるで運命みたいですね。

 

大原さん:中学生のとき、授業に出ないで体育館に勝手にマットを敷いてトレーニングしていた僕が、先生になって帰ってくるなんて。まるで漫画の『GTO』みたいですよね。

 

今は、非常勤職員として、毎週火曜日に「星槎国際高等学校 横浜」の教壇に立たせてもらっています。学校からは「プロレスの試合に出るときは休んでかまわないから」と配慮してもらえて。今度の試合でも、他の先生が代わりをしてくれるんです。本当にありがたいです。