前総理にも進言。感じる「確かな変化」
── 山本さんは、内閣官房地域働き方・職場改革等推進会議メンバーや自治体の男女共同参画推進委員としても活動中です。これは大きな前進ではないでしょうか?
山本さん:2025年3月に、石破茂総理(当時)側から声をかけていただき、直接、意見交換しました。石破さんは地方創生に力を入れ、女性の権利問題に鋭い感覚を持っていらっしゃったので、当事者の声に驚きながらも真摯な態度で聞いてくださいました。会議メンバーや委員としては、若者が抱える悩みを当事者の立場でお話ししています。
最近は自治体の男女共同参画推進計画に「地域における男女共同参画」がアジェンダ(議題)に含まれていたり、地方創生のなかで「若者・女性に選ばれる地方」と表現されたりするようになったのも進歩です。若年女性の流出や少子化に苦しむ自治体でも、以前は婚活パーティなどの企画が多かったのですが、キャリアの機会拡大や賃金格差の解消に向けて、地元企業の意識改革に乗り出す自治体も増えました。
また、この課題への関心が高まり、地方の女性流出について、これまでのデータと考察のみの記事や報道だけでなく、私自身が取材を受ける機会が増えるなど、当事者へのインタビューを交えた報道が増えた気がします。
── たしかな変化を感じます。「地方女子プロジェクト」が立ち上がって2年が過ぎましたが、活動の様子は?
山本さん:現在、プロジェクトに主体的に関与するメンバーは、もともと社会課題への解消に携わりたいというモチベーションが高い人が多い背景があります。各メンバーは社会運動、ビジネス、メディアなどさまざまな得意分野で協力してくれています。なかには、「地方の課題のすべてに共感できるわけではないが部分もあるが、自分のような都会にいる人間が地方のために動かないといけないと考え、運営に携わった」という都市部在住のメンバーもいます。
活動開始時はボランティアでできる範囲のことをやろう、という雰囲気でしたが、最近はこの取り組みをボランティアで終わらせず、持続可能でインパクトのある取り組みにしようという共通認識を持つようになりました。現在は、法人化を目指そうという段階です。
──「地方女子プロジェクト」に関わるメンバー自身の心境やキャリアに変化は見られますか?
山本さん:運営メンバーのひとりはプロジェクト加入時は学生で、「絶対、地元に帰らない」と言っていましたが、「自分が地元を変える」という志を新たに持ち、地元に公務員として就職しました。
120人以上インタビューした中では、地元のジェンダーギャップを変えたいという志を持ち、市議会・県議会議員になった方や政治家を目指している方とも出会いました。さらに、起業家や起業検討中の女性もいます。このように「地方女子プロジェクト」は、同じ志を持った方とつながるきっかけにもなり、心強いです。
私がこの活動を始めたのは地方での女性の扱いに疑問を感じたからですが、その原点をたどると、叔父の死があります。叔父は若いころから周囲に「結婚しろ」、結婚後も「給料が低い。男なんだからもっと稼げ、しっかりしろ」と言われ続け、ずっとプレッシャーを感じていたようです。
結局、叔父は私が高校生のときに、40代で自死。ジェンダーを学ぶにつれ、「固定観念や社会的構造に追い詰められた末の死だったのでは?」、「どうすれば叔父が生き続けられた社会になるのか?」という疑問やるせなさが湧いてきました。私たちは地方女子の声を発信していますが、女性だけでなく男性も、男女に当てはまらない人も、固定観念や慣習に縛られず、多様な声や生き方が受け入れられやすい社会を目指したいと考えています。
取材・文:岡本聡子 写真:山本蓮、地方女子プロジェクト、ヤマモトクミコ