通算2539勝という偉大な記録を打ち立て、63歳で惜しまれながら現役を引退した元ボートレーサー日高逸子さん。「レースに没頭するあまり、現役中は季節の移ろいすら感じられなかった」という競技人生を終えた今の目標は「普通のおばあちゃんになること」だそうで── 。

子育ての時間は短かったけど後悔はない

日高逸子
63歳で引退するまで第一線で活躍し続けた

── ボートレーサーとして第一線で活躍し続けた日高さん。63歳で引退するまで結婚をして2人の娘にも恵まれました。妻として母として振り返って、どんなことを思いますか?

 

日高さん:ボートレーサーとしては全力でやりきれたと思っているので後悔はないですね。ただ、母親としては娘たちの授業参観や運動会などの学校行事に、ほぼ参加できませんでした。そこに申し訳なさはありますが、レーサーの生き方としてはそれで「正解だった」とも思っています。子育てを優先にしていたら、今の私は絶対にいなかったわけですから。2人の娘たちにも「自分のやりたいように生きてほしい」と思っています。

 

でもそんな生き方ができたのは、やっぱり夫が支えてくれたおかげ。私がレースで不在の間も夫がしっかり家のことをしながら娘たちを見てくれたので、私は何の心配もなくレースに集中できました。本当に感謝しています。

 

── 厳しい勝負の世界から身を引いたことで、何か気づいたことはありますか。

 

日高さん:引退してあらためて思うのは、レースという勝負の世界に没頭するあまり、季節の移ろいのようなことは自分の目にはまったく入っていなかったんだな、と思いました。

 

現役時代、レース期間は宿舎にこもりきりなので、外の景色に目をやることがないんですよ。レースを終えて街に出たら、周囲の人たちと自分の服装の季節感がまったく違うことがありました。

 

娘たちの成長もそうでした。レース期間は外部との連絡が遮断され、携帯電話も取り上げられます。長いときは1週間ほど、家族とまったく連絡が取れなくなるんです。娘たちが小さいときはレースを終えて帰宅するたびに、「あれ、大きくなったね!?」と成長に驚かされるようなこともありました。