24歳で現役引退「まだ先の人生が続くから」

── 年齢的には「まだやれる」という声もあったかと思いますが、迷いはありませんでしたか。

 

絹川さん:24歳だと、一般的には競技を引退するには早いと思われるかもしれません。でも、私のなかでは、陸上を「人生という長い物語のなかのひとつの章」と捉えていました。もちろん選手時代はそれがすべてでしたが、競技を終えたあとの人生のほうがずっと長い。競技者としての終わりが人生の終わりではないからこそ、陸上に固執せずに次へ進む決断ができたのだと思います。

 

── オリンピック出場が目前にありながら、たび重なる病やアクシデントに翻弄され、望んでいた形とは違う幕引きとなりました。振り返って、当時の経験をどう捉えていますか。

 

絹川さん:当時は絶望しましたし、不運だとも思いました。でも今は、あの経験があったからこそ考えられたことがあり、成長につながったと思えます。長い人生の点で見れば失敗でも、線で見ればただの経験。

 

思い通りにいかない壁にぶつかったとき、アニメや漫画といったフィクションから多様な生き方を受け取っていたからこそ、「じゃあ別の視点でやってみよう」と切り替えられた。ひとつの道が絶たれても終わりではなく、泥臭く次を探していく。その過程も含めて「これが自分の生き方だ」と今は思えます。

 

取材・文:西尾英子 写真:絹川愛