仕事で心身が弱っていて現実が見えなかった

── 違和感などは感じなかったのですか?

 

木村さん:冷静に振り返ると、おかしなことばかりでした。結婚前に貯金額を聞かれたり。私はあまりお金を使わないタイプなのと、そもそも忙しくて使う時間がなかったので、お金をしっかり貯めていたんです。その金額を何度も聞かれました。

 

それから「仕事が忙しい」と言って、結婚前に私の友人にも家族にも誰とも会おうとしませんでした。両親とは一度だけ顔合わせをして。父も母もAの行動や話に違和感を覚えていたそうです。でも「郁美が選んだ人だから、疑うのをやめた」「相手のことを調べるのは、郁美への裏切り行為になるからしなかった」と言っていました。

 

── つらいですね。

 

木村さん:さらに、結婚式には乗り気じゃないのに、とにかく入籍を急かされて。でも、自分が弱っていたから、現実が見えなかったんだと思います。そして「結婚」という言葉に飛びついてしまった。

 

当時の私は、忙しい現状にも将来にも不安を感じていて。Aは経営者だったので、結婚すればAを支えることが私の役割になるし、そうすれば、もう少しゆるやかな働き方ができると考えていたんです。人生を変えたいけど、自分では変えられない。そんな当時の私には、「結婚」がすべてを好転させてくれる魔法のように映っていました。

 

だからこそ、どこかおかしいという違和感に目をつぶり、誰にも相談しなかったのです。