仕事を辞めた直後に、ステージ4の乳がんが発覚──。治療費は総額700万円にのぼり、離婚や失業も重なって、人生が大きく変わったという井出久日子さん(49)。「仕事は努力すれば取り戻せる」と信じていたものの、思うようにいかない現実。それでも、2025年に寛解を迎えるまでのなかで、「今を生きること」の大切さに気づいたといいます。
乳がん治療にかかった総額は700万円
── 2015年にステージ4の乳がんと診断されたそう。2025年に寛解するまで、さまざまな苦労があったと思います。
井出さん:10年間でかかった治療費は約700万円。莫大なお金がかかることを痛感し、がんになったことでキャリアも中断しました。「助からないかもしれない」という精神的な負荷も大きかったです。実際に治療を受けてみたからこそ、初めて知ることばかりでした。
抗がん剤治療を始めた当初は思うように働けなかったため、当時、結婚していた夫が治療費を工面してくれて。高額療養費制度によって自己負担額は抑えられるものの、世帯収入によって上限が変わります。当時は夫の収入が基準だったので、月の自己負担は約9万円。終わりの見えない治療のなかで、夫にも大きなプレッシャーがかかっていたはずです。

その後、私自身は自立するためにあえて働く時間を増やしました。それまでは夫の扶養に入っていたのですが、自ら社会保険に加入し「被保険者」となることで、高額療養費制度の自己負担額を軽減させるという、自立のための戦略的な決断でした。夫の収入が基準だった当時は月額約9万円の負担でしたが、約2.5万円まで軽減され、経済的にはかなり助けられました。
さらに幸運なことに、2年に一度100万円が受け取れるがん保険にも加入していたんです。10年間の治療中、これまでに6回受給しています。ただ、保険金が得られるのは治療費を払ったあと。病院費用は自分で先に支払う必要があり、当時は大きな負担でした。みるみる残高が減っていく通帳を見るのが怖かったですし、思うように働けないことにもどかしさはずっと感じていました。